―――022―――
本日2話目です。
読み飛ばしにご注意ください。
携帯食料を食べ、水を飲んで寝袋へと入ったのだが中々寝れないものである。
コンコン。
そこに突然にノック音。
どうしたのだろうか?
とりあえず寝袋から出て床へと座る。
「どうぞ」
「兄さん、話しがある」
ドアを開けるなり、真白がそう言った。
その表情は真剣そのものだ。
先程までブランと言い合っていた時とはまるで違う。
あちらとは別の真剣さ。
これは……。
ブラン、思考を読むのを朝まで止めて欲しい。
『分かったわ。朝、大体起きる時間まででいいかしら?』
それでいいよ。
ありがとう。
『こちらが勝手に読んでいるのよ? お礼はいらないわ』
「いいよ真白。ブランには言った。とりあえず座るといいよ」
「ありがとう」
僕の前に座る真白。
その目は真っ直ぐに僕の目を捉えている。
「朝まで時間はある。好きなだけ話すといいよ。ただ、話し終わったらきちんと寝て、疲れを取ってね」
「そのつもり」
さて、話の内容は何かな。
多分、あれかな。
「兄さん、天界を目指すの?」
……初の単語が出てきた。
「ごめん、天界とは何かな?」
「……天界から元の世界に戻れるらしい」
「初めて聞いたよ」
「最初に説明があった」
あれ~。
僕は説明を受けてないな。
まあ、ブランに聞かなかったからなんだろうけど。
ブランと他のサポート妖精、かなり差が無いかな。
気のせいかな。
「そうだったのか。教えてくれてありがとう」
「いい。どうする?」
「真白はどうしたい? ここには僕しかいない。大丈夫」
「……迷ってる。私は……」
暫く待っても、その言葉に続きは無い。
「いいよ。暫くこちらにいよう。僕もこちらの方がいいかもしれない」
「……兄さん、この世界がVRMMOで私達がデスゲームに巻き込まれていたのだったら?」
VRMMO。
近年の小説に出てきた言葉。
VRがまるでその世界に入り込んだかのような体験ができる事。
MMOは昔からあるゲーム形式で、複数のプレイヤーが1つの世界を共有して遊ぶこと。
仮想体験装置ならば確かに当てはまるだろう。
そしてデスゲームか。
これも小説に出てきた言葉だ。
簡単な話、クリアまでは現実に戻れず、ゲーム内で死ねば現実でも死ぬ。
クリア条件が無いものもあるが今の状況ではあるものと考えておこう。
問題はあちらに体があるかこちらに体があるかの差であろうか?
VRMMOでデスゲームではない場合、こちらの世界で死ぬかクリア条件を満たす、あるいは時間が経過すれば元の世界に戻れるだろう。
VRMMOでデスゲームの場合、いずれは何かの介入で解放されるか死ぬかだろう。
今回の場合は時間経過とそれによる死を回避できるクリア条件も設定されている。
では、異世界であった場合は?
時間経過で向こうの体が死ぬことは無い。
何せ向こうには体が無いのだから。
勿論、こちらの寿命では死ぬ。
それでは、現状はどの可能性が高いのか。
適性検査で一度この世界を体験し、さらにあちらに戻れている事からVRMMOの可能性は高い。
だが、ログアウト方法が無い事から、デスゲームである可能性も高い。
デスゲームであるか確認する方法は1つ思いつくが、それを真白が試していないとは思えない
そして真白が試していないのだとしたら僕が試す事はできない。
ただ、VRMMOで無い可能性も考えられてしまう。
この世界、この感覚。
現実と同等だ。
この世界を今の技術で生み出せるとはとても思えない。
そして、これは演出と言ってしまえばそれまでだが適性検査の最後、確かにあの声は言った。
一旦あちらの世界に帰還して頂きますね、と。
そう、一旦と言っているのだ。
これではどちらとも取れてしまう。
だが、違う。
僕にとっての問題はそこでは無い。
VRMMOでもデスゲームでも異世界であっても、それは問題にならない。
真白がどちらを望んでいるかだ。
真白がさらなる1歩を踏み出せるのであれば、どの状況であろうとそれが最善なのだ。
真白が問題としているのは何だろうか。
あんな世界、戻りたくないのだろうか。
それとも、こちらに全て揃っているのだろうか。
いや、これは極端か。
とりあえず真白はデスゲームの場合が不味いのだろう。
そして、それ以外であればこちらにいたいのだろう。
「真白、大丈夫」
真白の問いは僕に命についてだ。
「大丈夫?」
「VRMMOでも、デスゲームでも、異世界でも僕は真白のその手を掴んでいる」
これは僕の責任でもあり。
「……」
「真白は帰らなくてもいいし、帰ってもいい」
僕の望みでもある。
「……」
「だから、大丈夫」
僕の命程度、好きに使えばいい。
「……今日、一緒に寝てほしい。明日からは元通り……違う。一歩、そちらへ」
「うん、寝ようか」
僕と真白では見えているものが違う。
異次元倉庫から寝袋を取り出し、僕の寝袋の隣に置く。
僕は真白を利用し、真白は僕を利用している。
真白が隣の寝袋に入るのを確認し、僕も自分の寝袋へと入る。
「兄さん、おやすみ」
「うん、おやすみ」
差し出された手を握り、明日を目指す。
『透、いい度胸してるじゃない』
ブランさん、目覚めの言葉にしては少し怖くないですか?
『昨日何があったかは知らないわ。ただ、一緒の部屋で寝る程度にしないのかしら?』
横に並んで寝ただけなんだけど……。
もしかして、手を握っていたのが不味かったのだろうか?
『手を握る。確かに握っているわね。その程度問題無いとは思うわ』
なら問題無いね。
今日の朝食は外で食べるかな。
『気づいてないの? ……その子とはもう少し話し合う必要があるわね』
温かい。
もう少し寝ていたい気分だ。
『そうね。温かいでしょうね』
おやすみ。
『……』
2度寝はいいものだ。
でも、そろそろ起きようかな。
隣を見ても、寝袋は無い。
もう真白は起きているようだ。
広間へ行くと、既に真白とブランが椅子に座っていた。
何やら話しているようだ。
何かあったのだろうか?
「おはよう、真白、ブラン」
「おはよう、兄さん」
「おはよう、透。2度寝は心地よかったかしら?」
「良かった」
2度寝は心地よかった。
そこに否は無い。
「何か話していたの? 邪魔なようなら少し出てくるけど?」
「問題無い」
「こちらは後でいいわ」
「そうなの? それじゃあ、朝ご飯を食べに行こうか。待たせてしまってごめんね」
「大丈夫。行こう」
「行きましょう」
「ブラン、実体化したまま行くの?」
「町の中では問題無いわ。それに私も一緒に朝ご飯を食べたいの」
「そうか。昨日は気づかなくてごめんね」
「気にしないで、私が言わなかっただけなのだから。それに昨日は色々あったのよ。仕方ないわ」
「ありがとう。それでは朝ご飯を食べに行こう」
真白の案内で入った店は定食屋でした。
うどん、美味しいです。
うどん、美味しかったです。
機会があればまた来ようかな。
「兄さん、今日はどうする?」
「色々と必要な物を買い込もうか」
「うん」
「それじゃあ、まずは調理器具と食器、それに布団を買おう。その後は昼までは各自、自分が必要な物を買う為に別れようか。大きな荷物は昼から僕が付いていくのでその時にお願い」
「分かった」
「分かったわ」
異次元倉庫便利。
荷物持ちが楽だよ。
これが無ければ、荷物を置きに何度か家に戻らないといけなかった。
そして気になるグリーンドラゴンを入れていた影響だけど、ブランに聞いたところ一度解放して再作成すれば問題無いみたい。
結構魔力は消費してしまったけど、これで安心だ。
それにしても、グリーンドラゴンはかなり希少価値が高かったようだ。
これだけ購入しても、まだ余る。
半分しか受け取っていない状況でだ。
運が良かったとは言えないけれど、それでも資金に難が無い状況はありがたい。
もし、グリーンドラゴンを売れていなければ資金集めにかなり時間を取られていたはずだ。
「透はお皿、どうするの?」
「真白と同じのでお願い」
「分かった」
食器はすべてお任せです。
いや、調理器具も真白にお任せしました。
調理の多くは真白が行うだろうから、使いやすいものを選んでほしいと思ったのだ。
それに僕よりも真白の方が良い物を選べる。
任せない理由は無い。




