―――019―――
本日4話目です。
読み飛ばしにご注意ください。
階段を降り、1階のカウンターの奥へと入る。
そこでさらに階段を降りると、3方向に扉がある小さな部屋へと到着した。
そしてその中の1つへとギルド長が入ったので付いていく。
中に入るとそこはとても大きな部屋だった。
50メートル四方、高さも20メートルはありそうだ。
部屋の隅には棚や机が並んでいる。
さらにいくつかの扉も確認できた。
「ここなら問題無いな?」
「問題ありません。中央に出せばいいでしょうか?」
「そうだな。中央で頼む」
「出す方法が下手なので、少し大きな衝撃があるかもしれませんが問題ありませんか?」
「ここなら問題無いだろう。上には届かんから安心しろ」
「分かりました」
中央へと移動し、魔物形態へと変化する。
グリーンドラゴンの高さよりも少し高い位置まで移動し、ドアを最大の大きさで斜めに出現させる。
そして元部屋と接続した。
その瞬間、大きな音を立て、グリーンドラゴンが転がりながら地面へと落ちる。
一応そのまま落とすよりはいいと思い、転がしながら移動させたがそれでも結構な衝撃があったようだ。
そのまま落とさなくて良かった。
「異次元倉庫か。便利なものを持っているな」
地面へと降り、人形態へ変化する。
「ありがとうございます」
「それにしても、外傷なしでグリーンドラゴンを倒したのか。蜂だから……毒か?」
「自信はありませんが、毒でしょうね」
「グリーンドラゴンを毒で倒す蜂か。今度から教育課程に蜂の脅威を入れておくかな」
「相性が良い毒だったのでしょう。運が良かったです」
「それはそうと確認した。これであの音の正体が分かって安心した。感謝する」
「いえいえ」
こちらも感謝します。
これで、情報が得られる。
それもギルド長が知っているレベルの貴重な情報が。
「それでだ、このグリーンドラゴンはどうするんだ?」
「どう、とは?」
「買い取らせてくれないか? ここまで無傷のグリーンドラゴンはかなり貴重だ。まだ出現した直後だったとしても、その利用価値は大きい」
「目に穴が開いていますよ? それに毒が回っている可能性が有ります」
「目の穴か。そっちは多分修復されているだろう。毒は……どうだろうな。まあどうにかするさ」
「私が解毒しましょうか?」
「嬢ちゃん、できるのか?」
「グリーンドラゴンの毒を消さないように、連れの毒だけを消せばいいのですよね?」
「そうだ。それができるのならかなり高く買い取れるな」
「やります」
真白優秀。
そして僕が真白に勝てる可能性が消えたよ!
やったね!
『ちなみにどの毒を使ったの?』
1毒と2毒を混ぜたものだよ。
『ハチの毒袋では混ぜられないわよね?』
異次元倉庫で加速して混ぜました。
『その手があったわね。それに2種類の毒の相性も良かったのかしら。機会があったら見せて頂戴』
いいよ。
丁度それぞれの毒の効果を知っておきたいからね。
蝶辺りで1種類ずつ試してみようか。
『ありがとう』
「精霊魔法か。便利な能力を持ってるな」
見ただけで分かるのか。
流石ギルド長?
『無詠唱で汎用系の効果を発揮できるのは精霊魔法の場合が多いわね』
そうなのか。
「これは……毒袋以外に毒を感知できません。力不足で申し訳ありません」
「毒袋以外に感知できない? 少し待っててくれ」
「分かりました」
何かを取りに行くのか、ギルド長は部屋の外へと出て行った。
どうやら真白でも感知できない毒だったようだ。
まあ、転生初日。
仕方が無いだろう。
「真白、仕方ないよ。まだ慣れていないんだ」
「違う。多分毒自体が無い」
毒が無い?
そうなると、グリーンドラゴンはどうして……。
不思議だ。
「そうなると、毒以外で倒していたのかな。目が弱点だった? まあギルド長が何か持ってきてくれるだろうから待っていようか」
「うん」
『目は弱点では無いと思うのだけど……。特殊な個体だったのかな?』
そうなの?
『一般的なドラゴンに当てはめるとね。少なくとも、君の針で目を突き刺した程度で倒せはしないわね』
謎は深まるばかりだ。
「待たせたな」
戻ってきたギルド長の隣には、桃色の髪に桃色の目をした女性が立っている。
そしてその背中には桃色の羽が広がっている。
どうやら物を取りに行ったのでは無く、人を呼びに行っていたようだ。
「これの毒を調べてくれ。解毒はするなよ? 少し気になるからな」
「分かりました~」
解析の魔法なのかな。
便利だな~。
僕の毒も真白に解析してもらおうかな。
『効果は分からないと思うわよ?』
流石にそこまで便利ではないか。
それにしても、詠唱で何を言っているか理解できない。
言葉にすら聞こえない。
これでは詠唱から相手の魔法を予測するのはかなり先になりそうだ。
まあ、頑張ろう。
「……ギルド長~、毒袋以外に毒は存在しませんよ~」
「やはりそうか。嬢ちゃん、疑うような真似をしてすまなかったな」
「いいえ。私が未熟な事に変わりはありません。確認をして頂いてありがとうございました」
「買い取りだが、これならかなり高く買い取れる。無傷で毒も無い。こんな辺境にこんな大物が来ることも珍しい」
「そうですか、それはありがたいです」
「そこで全部買い取りたいんだが、どこか要る部位はあるか?」
要る部位か。
何か、要るのかな?
……鱗が1枚欲しいかな。
「鱗を1枚、お願いします。場所はどこでも構いません」
「鱗? 大物を倒した記念か?」
「そんな感じです」
「そうか、それなら好きなところを取ってくれ。それ以外は買い取らせてもらってもいいか?」
「真白も何かいるかい?」
「いい」
「ではそれ以外は買取をお願いします。鱗も必要なのでしたら無理には要りませんが、どうされます?」
「いや、鱗1枚なら問題無い。一番欲しいのは他の部位だ」
「そうですか。それでは鱗を1枚、取らせて頂きますね。引っ張ったら取れますか?」
「取れんと思うが、まあ試してもいいぞ」
何となく、欲しかったんだ。
証、なんだろうか。
怖いからだろうか。
希望なんだろうか。
分からないな。
自分の事なのに。
……お守りにしよう。
さて、どれにしようかな。
どうせなら良い物を取る。
そうなると、やはり魔物形態へ変化だ。
こちらの方が色々と良い。
……あの鱗かな。
あの鱗が、一際力強く感じる。
その鱗へと近づく。
……逆鱗。
そうか、だからこちらを優先して襲ってきたのか。
まったく、お守りにふさわしい気がするよ。
慎重に、新たに傷をつけることが無いようにその鱗を掴み、引っ張る。
その鱗は抵抗なく、本当に何の抵抗も無くこちらへと引き寄せられた。
「取れたのか?」
「はい」
「お、逆鱗を選んだのか。良い目をしてるな」
「不味かったですか?」
「構わんさ。元々はお前のものだ」
「それではありがたく。残りはお願いしますね」
「任せろ。それで、値段はどうする?」
「私がお聞きします」
「うん、お願い」
交渉ごとは真白の方が向いているだろう。
僕、抜けが多いから。
それに真白のサポート妖精ならば、相場を知っているはず。
ブラン、せっかく聞いてもらったのにごめんね。
『別にいいわよ。気にしないで。それよりも、よく逆鱗が取れやすいって分かったわね』
そうだったの?
あの鱗が、一際力強く感じたから。
それにあの鱗が一番適していたよ。
『そうなのね。その鱗はアクセサリーに加工するの?』
どうしようかな。
正直、知らない人に加工してほしくは無いな。
そのまま持っていようかな。
『それがいいわね』
「兄さん、終わった」
「ありがとう、真白」
「うん」
流石真白。
もう終わったみたいだ。
「お金の引き渡しは半分が今から。もう半分は明日」
「うん、分かったよ。明日は何時でもいいかな?」
「問題無い」
「それじゃあ、暇な時に寄ろうか」
「うん」
「今日はいい素材が手に入った。ありがとうよ」
ついでにカマキリも売り、地下から1階のカウンター前へと移動した。
お金は先ほど受け取り、一部を真白に渡して残りは僕の異次元倉庫に入っている。
本当は半分ずつが良かったのだけど、持ちきれないのだから仕方が無い。
それに異次元倉庫であれば盗まれる心配は無い。
まあ真白が盗まれるとは思っていない。
盗まれるなら僕だろう。
「いえいえ、こちらこそありがとうございました」
「ありがとうございました。また明日、寄らせて頂きますね」
「時間は何時でもいいからな。来た時は俺を呼んでくれればいい。俺は何時でもいる」
暇では無く、ここに居なくてはならないんだろうな。
さて、危険についてはいつ聞くか。
「そうだ、透。ちょっと来てくれ」
「どうされました、ギルド長」
ありがたい。
こちらからでは理由を作り難かったんだ。
「一応、グリーンドラゴンをどんな方法で倒したか聞いておきたいんだが、聞いても問題無いか?」
「問題ありません」
「そうだな、俺の部屋に行こうか」
「分かりました」
「嬢ちゃんはどうする?」
「……真白はあまり戦闘を見ていないので、暇になりますね。真白、少しの間近くで時間を潰してもらえるかな? すぐ終わるとは思う」
「大丈夫」
「ここのギルドでも道具を売ってるから見ていくといいぞ」
「ありがとうございます。覗かせて頂きます」
「それじゃあ透、行こうか」
「はい」
う~ん。
これは失敗したかな。
まあ、知られたら知られたで問題は無い。
知られない方がいいだけだ。




