―――018―――
本日3話目です。
読み飛ばしにご注意ください。
「お待たせしました。透さんの認証魔法道具がおかしいと聞きましたが……おかしいですね。リングが浮いているだけ、ですか……」
「そうですよね? おかしいですよね?」
相談さんに連れられてきたのは肩まである緑の髪に青い目をした女性。
身長は160センチ程だろう。
相談さんの先輩の職員かな?
そう言えば、今夜はどこに泊まろう。
安宿は流石に不味いだろう。
こちらに滞在する期間が長いのならば家を借りるのもありなのかな。
「認証魔法道具を見せてもらってもいいでしょうか?」
「どうぞ」
首からネックレスを外し、先輩さんに手渡す。
「ありがとうございます……これは、透明なんですね。リングの中央の玉も透明ですか」
問題は期間か。
いや、とりあえずこの町に長居するのはどうだろうか。
丁度、町周辺の魔物は弱い。
それならば戦闘の練習にこのあたりで魔物を倒す日々もいいのかな?
道中は確かに余裕だったが戦闘に慣れている訳では無いのだ。
それに活動資金もグリーンドラゴンと少しのカマキリ以外には無い。
この町で少し稼ぐのもありだろう。
「どうした? 問題か?」
「ギルド長。丁度良かったです。この認証魔法道具を確認してもらえませんか? 私では正常かどうか判断をつけられないのです」
「見せてみろ」
「はい」
ギルド長。
肩まである銀色の髪に青い目をした青年だ。
あの年でギルド長ならば相当な手練れか、あるいはやり手なのかもしれない。
さて、お偉いさんだ。
どうにか町に起きている危険について聞けないだろうか?
「透明のチェーンに黒いリング、そして透明な玉か。ここまでの透明は初めて見るな。まあしっかり変化してるから大丈夫だ」
「ありがとうございます」
ギルド長から認証魔法道具を受け取った先輩さんがこちらへと歩いてくる。
「お騒がせしました。こちらは正常に認証魔法道具へと変化しています」
「手間を取らせてしまって申し訳ありません。ありがとうございます」
差し出される認証魔法道具を受け取り、首へと付ける。
そして手首に付けていたブレスレットを外しておく。
これ、どこに返せばいいのかな?
「そのブレスレットはこっちで回収しておく。その2人に渡しておけばいいぞ」
「ありがとうございます。それではお願いします」
「私の物もお願いします」
ギルド長の言葉に従い、先輩さんへとブレスレットを渡す。
真白も受付さんへとブレスレットを渡している。
それらを受け取った先輩さんと受付さんは一礼し、カウンターの奥へと戻っていった。
「ギルド長さん、ありがとうございました」
「いいってことよ。それにこちらの職員の失態だからな。こちらこそ時間を取らせてしまって申し訳ない」
その言葉と共に頭を下げるギルド長。
これは好感が持てる。
部下の失敗は自分の失敗。
多分そうなのだろう。
「いえいえ、無事解決して頂きましたので問題ありません。それでは失礼します」
ギルド長さんからも話を聞きたいが、まずは町から聞き込みを始めようか。
流石に今の状況で話してもらえるとは思えない。
それよりも、集めた情報を使って聞き出した方が可能性はある。
「ところで、昼食はもう食べたか?」
昼食。
今何時だろうか?
「まだです」
「それなら昼食を一緒にどうだ? 迷惑を掛けた詫びに奢りたい」
「真白、どうする?」
「任せる」
小声で真白へと問いかけたところ、任せてくれるようだ。
お金、無いからね。
ここは受けておこう。
それに少しでも親しくなれるのならばありがたい。
「お願いします」
「よし、決まりだな。俺の部屋で食べよう。用意させる」
ギルド長の雰囲気的に、外の店で定食かと思った。
いや、定食があるか知らないけど。
「すまない、俺の部屋に3人分何か頼む」
「分かりました。天丼でいいですか?」
「女の子に天丼はどうなの?」
「じゃあ天丼2個とスパゲティー1個で」
「頼む」
天丼とスパゲティーがあるのか!?
いや、こちらにあっても不思議はないか。
『一般的な食べ物よ。元の世界とあまり変わらないのではないかしら』
ここの気候で米ができるのかな。
いや、魔法がある以上それは考えないようにしよう。
あるものはある。
それでいい。
「それじゃあ部屋まで行くか。ついてきてくれ」
「分かりました」
階段がある方向へと歩いていくギルド長についていく。
どうやら上層階にあるようだ。
「ここだ」
4階の奥。
そこがギルド長の部屋だった。
それにしても、木造で4階とは凄いな。
木の性質が違うのかな。
扉を開け中へと入るギルド長に続いて、部屋へと入る。
大きめの机にソファー。
そして奥には上に色々と置いてある机と椅子がある。
奥の物が執務用で、手前の物が接客用だろうか。
「適当に座ってくれ」
「失礼します」
「失礼します」
ギルド長の言葉にソファーへと座る。
真白も隣のソファーへと座った。
「それじゃあ、飯が来るまでは話でもしてようか」
話しか。
何か聞けるかな。
「そういえば、南から来たのか。枯れ木は見たか?」
「枯れ木ですか? 見ましたが」
「そうか。少し前にあそこの森で何かあったみたいでな、調査隊を出したんだが森の一部の草木が枯れているのを確認したらしい」
「その先は森が吹き飛んでいましたか?」
「まだ報告は来ていないな。見たのか?」
「枯れ木の先は一部ですが森がありませんでしたね。そこからある程度行くと普段通りの森がありました」
「そうか。あの音、何があったんだか」
とりあえず、聞いてみようかな?
「そういえば門番さんからあの方向に強い魔物がいると聞いたのですが、それですかね?」
「そうだな。それだ」
「レベルが低い僕達には怖い話しですね」
「お前たちレベルが低いのか?」
失敗したかな。
「はい」
「よくあの森を通過できたな。低レベルだとカマキリも厳しいだろう?」
「カマキリは相性で」
「そうか、相性か」
コンコン。
「ギルド長、お昼ご飯持ってきましたよ」
「早いな」
その言葉にソファーから立ち、ドアを開けに行こうかと思ったら既に真白がドアを開けかけていた。
なので僕は座ったままで。
「開けて頂きありがとうございます」
持ってきてくれたのは赤髪赤目の青年。
それにしても、このギルド平均年齢が若いな。
配膳を手伝う真白を横目に、どう聞き出すか考える。
この人は知っているはず。
魔物ギルドの、支部だとはいえ長が知らないとは思えない。
少なくとも、この町で荒事に対応できる人物の1人だとは思うのだ。
「持って来て頂きありがとうございました。真白も配膳ありがとう」
「いえいえ、それではごゆっくりどうぞ」
「ありがとうございました」
青年は一礼し、部屋から出て行った。
とりあえず、食べるのかな。
「とりあえず、食うか。遠慮せず食ってくれ」
「ありがとうございます。頂きます」
「頂きます」
まさかの丼。
その蓋を開けると、サクサクしていそうな衣が顔を覗かせる。
これは、出来立てだろう。
箸を手に取り、まずは薄い楕円の天ぷらを口へと運ぶ。
これは……サツマイモか。
日本のものと同等か、それ以上においしい。
さらに掛かっているタレもあっさりとした甘さで好みだ。
次はこちらの薄く、緑色が顔を覗かせている天ぷらだ。
これは……知らない味だな。
少し苦みがあるが、それがタレの甘味を際立たせる。
「美味いか?」
「美味しいです。出来立てですね」
「出来立てだろうな。料理好きなのがいるんだよ」
「どうりで」
「そっちの嬢ちゃんはどうだ?」
「とても美味しいです。ここまで美味しく作れるのは羨ましいですね」
「そうか。あとであいつに言っておいてやろう。喜ぶだろう」
天丼、美味しかった。
さて、本題だろうか?
「食器をお返ししてきますね」
「うん、お願い」
「おお、すまんな。あのカウンターにでも持って行ってくれればいい」
「分かりました」
真白が食器をおぼんに乗せている間に扉まで移動し、扉を開けておく。
そして真白が出た後、扉を閉めてソファーへと座り直す。
「若いのにできた嬢ちゃんだな。彼女か?」
「違いますよ」
「そうかそうか。それで、さっきの続きだが」
「森の一部を吹き飛ばした魔物は倒しました。この町に迫っている危険を教えて頂けませんか?」
真白がいない今のうちに、聞き出しておきたい。
時間が惜しい。
「……嬢ちゃんに聞かせたくないんだな?」
「危険の方はそうです」
「なら、とりあえず魔物の方を聞かせてもらえるか?」
「グリーンドラゴンのブレスで森の一部が吹き飛びました。枯れた草木もその影響でしょう」
「証拠は出せるか? 流石に証拠無しでは情報として使えん」
「倒したグリーンドラゴンを持っています。広い場所があればお出しできますよ」
「それならいい。この後見せてくれ」
「これで危険についてお話しいただけますか?」
「そうだな。グリーンドラゴンを倒せる程の実力なら手伝ってもらいたい」
「手伝います」
「即決だな。おっと、残りは後にしようか」
おや?
どうしてだろうか?
「それにしても、あの嬢ちゃんは器用だな。部屋の外に何か置いていきやがったぞ。その上聴覚強化も使ってるみたいだな」
「え」
聴覚強化は予想してたけど、部屋の外に何か置いた?
『多分、妖精人形ね。人形と五感をリンクできるから便利よ』
それは便利だ。
僕も蜂人形とか出せないかな。
「あの程度なら部屋の中から情報は洩れない。安心しろ」
「そうなのですか?」
「ギルド長の部屋だからな。それくらいは当然だろう」
「当然なのですね。田舎出身なので常識に疎くて」
コンコン。
「入れ」
「戻りました」
「お帰り、真白」
「ただいま」
「それじゃあ、早速だがグリーンドラゴンを見せてもらってもいいか?」
「そうですね。場所はどこで?」
「ここの地下でいい。流石に他の場所では出せんな」
「分かりました」
地下まであったのか。
……毒が籠ったりしないよね?
まあ、大丈夫か。




