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CORRECTORS ~生きた異物~  作者: 新楽岡高
第七章 アメリカン・ロビン=フッド㊤
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第二話 散弾銃バンバン!⑦

◆◇◆



「……答えは無し、か。まあいいさ。俺らの街で、これ以上好き勝手出来ると思うなよ?」

「ほざけ、貴様がこの場に現れた程度で、こちらの優位は(いささ)かも揺らぎはしない。たかだか旧式の銃を持っただけの二人を倒したくらいで、図に乗るなガキ」

 殺意の乗った視線が、俺に注がれる。

 だけど、今更(いまさら)レーヴェからそんなものを向けられた所で慣れたものだ。気圧(けお)される事なんて微塵もなく、むしろ負けじと睨み返していた。

「こんなところで人一人を追い込んで……何をやろうってんだ?」

「お前らには関係の無い事だ。焼け焦げたくなかったらとっととそこを退け。そうでないと、そこにいる男を確保できないだろうが」

「お断りだ。こんな状況でお前らのいいなりになんざなれる訳ねえっての」

 レーヴェからの言葉を鼻で笑ってやりながら、俺は背後に庇っている男の方に一瞥をくれてやる。

 その男は既に何度か攻撃を受けて痛め付けられているらしく、軽度の火傷と被服の一部も焦げていて、消耗度合いも酷いものだ。

「……おいお前、話せるのか?」

「な、何とか、な……そういうアンタは……」

「俺のことは今どうでも良いだろ。それより、何でお前は追われてたんだ?」

「そんなのこっちが知りたいくらいだ。いきなりやって来たと思ったら一緒に来いって言われて、拒否ったらこのザマだぜ? 勘弁して欲しいもんだよ」

「ふーん、そうか。まあ十中八九、お前が能力者だからなんだろうけど」

「能力者って……俺のこの全く役に立たない透明化の話か? どれだけ姿を隠しても、皆は簡単に見抜きやがって」

 立っているのも限界なのか、男はどさりと尻餅を突きながら悪態も吐いている。

 その様子が見るからに自暴自棄を起こしている子供みたいで、年上を相手にしている筈なのに僅かばかり笑いがこみ上げた。

「そりゃ、魔力制御も気配の断ち方も甘いんだ。この前、ウチに忍び込んだ時に勘付かれるのも当然だ。つっても、あそこまで完全に見抜く毛利さん達は異常だけど」

「忍び込んだって……アンタ、俺が誰だか知ってんのか?」

「知ってるも何も、お前が忍び込もうとして失敗した家の住人だよ。つい数日前にも、留置所で似た会話をしたと思ったけど?」

 面白いので、直接明言はしないで示唆のみしてやれば、彼は即座に思い当たったらしい。

「って事は……あ、もしかしてアンタ、ひょっとこ(・・・・・)のふざけた仮面付けてた奴か!?」

「俺はふざけたくてあんな仮面を着けた訳じゃないんだがな。何にしろ、これだけ会話できる元気が残っているみたいで何よりだよ」

「元気って……俺もう割と意識朦朧としてフラフラなんだがね」

「もうひと踏ん張りだ。ここは俺が引き付ける、もし余裕があるなら姿を消して逃げろ。もしよければ、百鬼組(ウチ)に来てくれれば身柄の保護もしてやれるぞ」

「冗談止してくれ、どうせそんな事を言ってあの地獄みたいな場所(オカマバー)へ連れて行くつもりだろ? あれ、マジでトラウマになったんだからな?」

「別に、今回はそんな事しないって。それに、あの時はお前らが俺らの家に忍び込もうなんてするからだ。もしまた、その能力を悪用する事があれば、またあそこ送りにするからそのつもりで」

 背後の気配から察するに、彼は少し回復して立ち上がるだけの余力を取り戻したらしい。

「分かってるよ。取り敢えず、救ってくれて感謝する」

「感謝ついでに、是非とも百鬼組(うち)へ……」

「へいへい、気が向いたらな。その時はどうなっても良いようにワセリンだけは忘れず持って行くよ」

「……ドぎつい下ネタだな」

「誰のせいだと思ってんだ」

 唾でも吐きそうな調子で言い捨てた男は、そのまま自身の能力を発動させて姿を透明化させていく。

 チラリとそちらを目にして確認した俺は、視線を正面に引き戻せば、そこでは“レーヴェ”と“エーデルシュタイン”が攻撃まで秒読みに入っていた。

「クレトコは殺すなとの指示は出ているが……お前を殺すなとの指示は出ていない」

「そりゃ、全力でいって良いって事だよなあ?」

「……!」

 敵の属性は雷と炎。

 後者はともかく、前者は攻撃到達速度が尋常でないくらいに早い。今から迎撃をしようにも間に合わないだろう。

「何て面倒臭い奴……!」

 素早く盾を形成させた直後、間を置かずして雷撃が、少し遅れて炎撃が盾を直撃して俺の思考をほんの少しだけ揺さぶる。

 敵の攻撃を上手く防いで、普通なら反撃に転じるところだ……が、俺は(かえ)って盾の強度と範囲を増大させていた。

 するとどうだろう。

「――ッ!!」

 先程とは比べ物にならない威力を持った雷撃と炎撃が盾に直撃して俺の脳味噌を激しく揺らす。

 直接脳味噌をシェイクされているような不愉快な感覚を、歯を食い縛って堪えていた俺は、それでも己の判断が間違っていなかった事に安堵していた。

「防がれたか……」

「こっちの攻撃を防いで、調子乗って反撃に打って出るかと思ったんだがなあ?」

「そんな事だろうと思ったよ。アテが外れて残念でした」

 今度こそ防御を解き、二人の敵の下へと一直線に突撃する。対する彼らは、大掛かりな攻撃を行ったばかりで即応できる攻撃手段が限られていた。

「チンケな攻撃で、俺が止まると思わない事だ!」

「小賢しい糞餓鬼の分際でッ!」

 牽制として放たれる炎の弾丸は、しかし展開させた魔力の盾が簡単に弾く。実際に口に出した通り、その程度の威力では俺の足を緩める事すら出来やしなかったのである。

 あっという間に距離は縮まり、拳と脚が届く程の至近となった時点で、俺は勝利が迫っていると確信した。

「ここは、もう俺の間合いだぜ!」

「果たして、本当にそう思うのか?」

 俺の確信を覆す“レーヴェ”の冷ややかな言葉は、彼の生み出した青白い光を放つ電気の塊に裏打ちされていたのだろう。

 それを目にした瞬間、俺の背中を悪寒がなぞり、本能が格闘戦への移行に待ったをかけようとするが、果たして回避や防御が間に合うか……。

「う、お、おおおおおおっ!」

「おいちょっと待てレーヴェ、俺まで巻き添えにする気かよ!?」

「……“放電(エントラードング)”」

 その瞬間、幾条もの青白い亀裂が辺りに飛び散ったようだ。それというのも俺はその攻撃を間近で見ていたせいで、視界一面を青白い光で埋め尽くされ何も見えなくなっていたのである。

 が、それで俺が撃破されたかと言えば、違っていて。

「ぐ、おおおおおおおっ!」

「――かはっ!?」

「“レーヴェ”!?」

 防御も回避も捨てて、開き直って放った右ストレートが、無防備だった“レーヴェ”の頬を捉える。伴って、放電攻撃の直撃を喰らった俺の体を通じて、術者である“レーヴェ”にも電流が流れる事と相成(あいな)ったのであった。

「死なば諸共……まあ、この程度じゃ死なねえけどな!」

「何つーしぶとさだ糞が! ……“レーヴェ”、意識は!?」

「……問題ない。もとより放電攻撃は全方位の代わりに威力は低めだからな。それでも、並の人間なら感電死してもおかしくない筈だが」

「身体強化で魔力を纏ってんだ。耐電性だって多少は上がるってものなんだろうさ。俺も初めて知ったけど」

 パシン、と左掌に右拳をぶつけながら俺は“ノクス”の二人を睨み付ける。

「どうにか出来る見込みがあるからこそ、俺はこの場にたった一人で乗り込んだんだ。一人しかいないからって甘く見たら、ボコボコにしてやるぞ?」

「「……!」」

 好戦的な笑みと自信満々と言わんばかりに胸を張ってそう言ってやれば、僅かでも敵に動揺が走った様に見えた。

 実のところを言えば先程受けた電撃のせいで一部筋肉が痙攣したりしていたのだが、敵相手にそんな弱みを見せる道理はなかったのである。


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