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ラーカス王国、ヒロト達が住んでいるネフロレピス神殿に一番近い国である。
海を渡って王国の手の届いてないところを領地にした帝国、国内の反乱分子、そして度々出現しては死傷者を出している魔王系モンスターを名乗る正体不明のモンスター達。
そして何より、突然現れた闇の新興宗教団体ネフロレピスの存在を警戒しなくてはならない状態に陥っていた。
逃げ帰ってきた傭兵団長カキンとその仲間達は宮殿をまる一軒無償で貸すことを条件に存在を伏せている。
人類を守護する決戦存在として、勇者、英雄と並んで数々の強大なモンスターを葬ってきた聖女が2人も殺され、同行した傭兵も80人が消息不明だ、全くの無傷で帰ってきたカキン達は何か仕込まれているんじゃないかと監視しているが特に何もない。
王城の一室にいるカーマイン公爵は複数の信頼のおける部下を集めた部屋で話し込んでいた。
デップリと太った男で愚鈍そうな顔をしている。
「例の平民の女とその娘の死体は確認できたんだろうな?」
「シェル第2婦人とカタリーナ姫ですか、確かに馬車を崖から落として暗殺したはずですがまだ気になさっていたのですか?」
「死体を見るまでは安心できん」
「あの高さです、まず生きてませんよ」
「黙れ、もし生きていたらどうするんだ。陛下が美人の平民を気に入って自分のハーレムに入れたのはいいがこのままではその娘のカタリーナが次の女王になってしまうんだぞ。王座に座るのは純粋な貴族でなければならん、血筋が重要なんだ、あれは半分平民なんだぞ、陛下と平民がどうやって知り合ったのか調べに調べたらあの女は元娼婦で陛下が買ってそれで知り合ったんだ、公表するぞと脅したら好きにすればいいなどと言ってきた、陛下が握りつぶしてくれるとわかってるからだ、あの女狐め、死体は引き続き探せ」
「はい、ええ」
「まあいい……ああやって強い者に媚びへつらわねば生存することもできなかったのだろう、哀れなゴミだ、公式で死亡したことになっている以上は問題ない、生きてたら殺し屋が送られてくるとわかってるんだろう、なら殺される可能性の高いここに戻ってはこないはずだし、公式で死んだことになっていることを利用するはずだ」
「あ、はい」
「そんなこともわからずノコノコと戻ってくるような莫迦ならばもっと早く、足がつかないように殺せただろうしな……まあいい、それより重要なことができた例の邪教だ……そろそろ時間だな」
時間きっかりに男4人、女2人の6人が部屋に入ってきた。
「お久しぶりですカーマイン公爵」
黒色のローブを脱いだ男は本当に何処にでも居そうな普通の顔をしている人だった。
「邪教団の居住区への潜伏任務の成果を聞こうか」
「はい、まず死亡したと思われる傭兵80人は邪教に寝返っておりました……居住区に住んでおりました。次に亜人を集め軍隊を作っていることがわかりました、居住区での勧誘が何度かありましたが何度も断っていればそのうち勧誘されなくなりました、最後にもっとも重要な案件ですが……授与式と称して力を授けられました、その際には居住区の住人は入れない邪教の神殿へと入れ、といわれ……そこで教祖と思わしき禍々しい邪悪な男をこの目で見ました」
「傭兵はどうでもいいが、軍隊に授与式で力? とにかく話せ、内容次第じゃ同じ話を陛下や将軍の前でもしてもらうぞ」




