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第58話 使者達、領主と御対面

 地下の牢。

 そこは、人で溢れ返っていた。

 ただでさえ牢の数に制限があるのに。

 気に食わない者を次々と投獄すれば、当然の結果である。

 30程の牢の各部屋にひしめき合う人達。

 しかし、その奥に別の牢が特別に備えられていた。

 それは重罪人用の牢。

 特別頑丈で、しかも何か仕掛けが施されている。

 廊下から投獄された人達の呻き声が聞こえる中、その牢の前は静かだった。

 何せ、入れられているのはたった3人なのだから。

 ノウ、ヘン、そして……。




「大丈夫ですか?」


 ノウに揺すられ、漸く気が付くヘン。

 ハッとし、辺りを見回して落胆する。

 自分の行動を振り返り、それが失敗した事実を受け入れようとするが。

 騎士道のもと生きてきた当人にとっては難しい事。

 悔しさをにじませる。

 その顔をそっと撫でるノウ。

 何故か涙が込み上げ、ノウの胸で号泣するヘン。

 済まない、済まない……。

 守れなかった事をひたすら謝る。

 もう宜しいですよ、過ぎた事です。

 そう語りかけるノウの目は腫れ上がっていた。

 泣くだけ泣いたのですっきり。

『それより』と、ノウは牢内の奥を指差す。

 そこには、ぼろきれを纏った女性が座っていた。


「あわ、あわわわわ!」


 恥ずかしい所を見られた。

 顔を覆いたくなる。

 でも何処かで会った様な……。


「オースタン様まで入れられてしまったのですね……。」


「……お前は!」


 前領主の娘に仕えていた召使い。

 姿を見せなくなっていたと思ってたが……。


「【ユシ】ではないか!何故こんな所に……。」


「身代わりです。お気付きにならなかったのですか?近衛隊隊長とあろうお方が……。」


 そこで察するヘン。

 そう言えば、『前領主の家族の消息は不明』と言う事になっていた。

 自分もその行方を知らされていない。

 領主交代の事実のみ突き付けられ、その内幕は分からない。

 なのに、ユシは《身代わり》と言った。

 まさか……。


「『お嬢様の身代わり』と言う事か?」


「はい。同じ牢という事は、この先短いという事。話しても支障は無いでしょう。」


 ユシがヘンとノウに語る事。

 それはメインダリーの異変の核心に触れる。

 でもその前に。




「どっかに行ってるから、困ったら呼べよー。」


 そう言って、オズは何処かへ飛んで行ってしまった。

 使い魔は、本来主人の言う事しか聞かない。

 クライスが特別なのだ。

 どう特別かは置いといて。

 ロッシェを加えた5人は、先にノウが通った廊下を歩いていた。


「城にしては、部屋が多いわね。」


 ラヴィが不思議がる。


「そうですね。それに……。」


 セレナが壁に触れて言う。


「建物の壁と、部屋の壁が微妙に違う様な。」


「流石セレナ。正解だよ。」


「どう言う事です?」


 クライスの返事に疑問を持つセレナ。

 そこで気付く。

 クライスが答える。

 即ちこのたくさんの部屋は元々在ったのでは無く、後から錬金術で作られた物。


「クライス様やアン以外に、これだけの事が出来る者が居るのでしょうか……。」


 セレナの問いに、クライスとアンは目を伏せる。

 アンがポツリとこぼす。


「可能性は有るわ。《残念》だけど。」


『残念』と言う単語で、ある程度予想は着く。

 錬金術師の歴史の中でもタブーなのだろう。

 その話題は。

 クライス達の正体をまだ知らないロッシェは、何が何だか。

 ただ戦士としての感が、奥にヤバい者が居ると警告している。

 目がキッとなる。

 ロッシェには後、気になる事があった。


「そう言えば、あの連中は何処に行った?」


 同じ宿に泊まった、変な3人組。

 ラヴィが〔放っといて行きましょ〕とさっさと出て来た為、置いてきぼりになった連中。

 てっきり旅の仲間だと思っていたが。


「あいつ等は、群れるのを好まないんですよ。いずれ勝手に現れるでしょう。」


 クライスにそう言われると、『そうなんだろうな』と思わざるを得ない。


「それより、とうとう着いた様ですよ。」


 クライスが召使いに止められる。

 大きなドアの前に立って待つ5人。

 ギイイとドアが開いた。

 赤いカーペットが続く先には、豪華な椅子に座ってふんぞり返る男。

 その傍に立つ、いかにも怪しい男。

 ようやくご対面。

 その前に進む5人。


「そなた等か、儂に用と言うのは?」


 まずサーボが切り出す。

 主導権を握ろうとする。

『取り敢えず領主を立てておくか』と言った感じのクライス。


「はい。俺達は旅の行商人です。この度は、陳情書を預かって参りました。」


 一歩進み出て、膝間付いて頭を下げる。

 それに続くロッシェ。


「俺も、陳情書を届けに来ました。」


 偉い人と直接話すのに慣れていないせいか、敬語が何処か怪しい。

 でもそれはサーボにとって些細な事。

 構わず進める。


「陳情書とな?それも2通か?」


「はい。俺達はモッタに接する町イーソの代理です。」


「俺は、レンドに接する町ライの代表として来ました。」


 それぞれが陳情書を差し出す。

 それを横にいたヴェードが受け取り、サーボに渡す。


「うむ。陳情書、確かに領主サーボが受け取った。どれどれ……。」


 陳情書の内容は、町名以外はノウが携えて来た物と一緒だった。


「うぬう。サファイに続き、レンドとモッタまで……。どうしたものか。」


 それを聞いたラヴィは、心の中でガッツポーズ。

 サファイも約束を果たしてくれた。

 後はどうするか。

 クライスに一任しているが、ラヴィも行動が予想付かない。

 何かに気付いたのか、ヴェードがクライスに近付こうとする。


「おい、お前!何をしようと……。」


 クライスは懐から小さな笛を出し、『ピーーーッ!』と吹く。

 実際には音が聞こえなかったが。

 すると、辺りの風景がグニャァッとねじ曲がった。

 クライスはアンにヒソッと言った。


『アンは今の内に、みんなを連れて地下牢に向かってくれ。』


『兄様はどうするので?』


『こいつ等には用がある。大事な用がな。』


『分かりました。御無事で。』


 アンはそう言うと、鉄のトロッコのような物を床から生み出し。

 残りの3人を無理やり放り込んで『ガララーーーッ!』と走り去った。

 頭がクラクラして目を回しそうなサーボ。

 それより先に酔いから冷めるヴェード。


「貴様!何者だ!」


「それはこっちの台詞だ、錬金術師の面汚しめ。」


 完全に見下しモードのクライス。

 こんな人間に、ヴェードは今まで会った事が無かった。

 その目に宿った、冷酷な青い炎。

 こいつは危険だ。

 本能がそう言っている。

 どうする?

 どう切り抜ける?


「サーボ様、椅子に隠れて下さい!こいつを排除します!」


 ここは、出し惜しみする場面じゃ無い。

 判断が遅れれば、られる。

 ヴェードはそう考えた。

 サーボは慌てて椅子の陰に隠れる。

 ヴェードが懐から何かを取り出した。

 それをクライスに投げつけると、目の前に霧が広がった。

 霧の中から、ヴェードの分身が5体。

 クライスに襲い掛かる。

 しかし、クライスは避けようとしない。

 スカッ、スカッと分身の攻撃が空ぶる。

 霧が晴れると、クライスもヴェードも元の位置から動いていない。

 見ていたサーボは、訳が分からなく混乱。

 お互いニヤッとする両者。

 動きの探り合いで膠着状態。

 先に動いたのはヴェード。

 首にぶら下げている石を握り締め、何やら唱える。

 すると、床から石の人間が3体現れた。


「どうする?降参するなら今の内だぞ?」


 素早くクライスを取り囲む石人間。

 拳を一閃。

 やった!

 避けられまい!

 ヴェードがそう思ったのも一瞬。

 そこには無傷のクライス。

 石人間はパアアッと消滅。


「やるな!これならどうだ!」


 次々と攻撃を繰り出すヴェード。

 防戦一方のクライス。

 サーボには少なくともそう見えた。

 しかし実際には。

 実験の実践相手を見つけた様な顔をしたヴェードは、額に汗をかいていた。

 対照的にクライスは涼しい顔。

 余裕を感じさせる。

 その違いは?




 その頃、地下牢では。

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