起こした責任
「でもよお、ほら、あの棺桶で、《前のリミザ》で目、覚ましたじゃねえか」
ガットはそこに希望を見出したい。
カレンがリミザをまた起こすにあたって、『古の魔法使い』の起こし方をすると言って、あの真っ黒な棺にいれられたのだ。内側には美しい光沢の布がはってあったが、その色味はあの《赤黒い炎》と似ており、ガットはなんだか嫌だった。
だが、その棺桶で起きたときに、リミザの『真の姿』がわかるといわれ、うなずいたのだ。
三人とも、いまでもリミザの『真の姿』は、《前のリミザ》だと思いたかった。
「 あの《リミザ》で起きたのを見届けたから、カレンだって《赤黒い火》のことをしばらく黙ってくれるってことになったんだしよ。このドラゴン退治がうまくいったら、土にうめたムシールを回収してトラス王国に届けて、カシール王にどうにかうまく頼めねえかな。ようは、おれたちがまだ《王様連盟》から依頼を受けたパーティーでいられりゃ、リミザの《リビングデッド》だって解かなくてよくなるだろ?」ラーラには『無理だ』と言ったが、ガットだって、できればこのままのリミザを維持したい。
「まあそれは・・・、《ドラゴン退治》だけじゃなく、ほかのことも『うまくいったら』、考えていいかもしれませんが・・・」
ラフィーが重いものをのみこむようにうつむいた。
「『ほかのこと』ってなんだよ?」
「・・・ドラゴンはきっと、《魔族寄りのリミザ》の力なら倒せるでしょう。ですが、もし、そのリミザがドラゴンを倒さずに、それをわざとトラス王国へおびきよせたらどうします?」
「おびきよせる!?・・・おまえ、いやなこと考えるな・・・」
「だってそうでしょう?ドラゴンは魔獣の一種ですよ。精霊が飼いならすという話もありますが、基本的には人とは仲良くなりません。 ―― ですが、魔族がその魔獣を利用して街や船を襲うというはなしは、むかしからどこにでもあります」
「ドラゴンは魔族のいうことだってきかねえさ。ただ悪賢いあいつらに利用されるってだけだろ。・・・・リミザが、それをするっていうのか?」
「ラーラの杖を奪ったリミザなら、そうしても不思議じゃない。わたしたちは、その可能性も考えておかなきゃならいんですよ。彼を『起こした』責任として」
いいきったラフィーから先に目をそらしたのはガットだった。
またゆっくり階段をおりはじめると、「心配すんな」とつぶやいた。
「 ―― もし、リミザが完全に『魔族』になって、ラーラがぶんなぐっても《前のリミザ》にもどらなかったら、 ―― そんときはおれが、リミザの首をはねる」
「 ・・・が・・ガット、無理だ。あなたにそんなこと、」
「おれがやらねえで、だれにやらせるっていうんだ?」
ふりかえったガットはうすくわらっていた。
「やるとしたら、おれだ。リミザを『起こす』って決めたときに腹はくくってる。 ―― ほかのやつには、やらせねえよ」
なにもかえせないラフィーに片手をあげて、ガットは階段をおりはじめる。
なかなかこない二人をよぶラーラとリミザの声が下の方から響いてくる。
ラフィーは壁に手をつき、しゃがみこんだ。




