面倒なうえに腹が立つ
「『なぜ』かっていうと、おれたちは今日、迷路をあいてにして疲れたからだ」
「そうよ。ガットなんてずっと気絶したあんたをかついでたんだから」
「ほんとにあの状況で最後まで気絶してたんですか?とちゅうから、眉がすいぶん動いてましたから寝たふりしてたんでしょう」
《勇者一行》をみてその構成が、三人の《オトナ》と《コドモ》が一人だとみてとったムシールは、《コドモ》のほうのリミザをみて、そうだな、と顎をなでた。
「 まあ、こんな《コドモ》がいるなら、夜に無理をすることもないだろう。では、明日の朝から向かうことにして、きょうはもう休め」
さっきから休んでいる四人に指をむけていうと、じぶんの荷物をおろして、なにかをさぐりだすと、それをふった。
「 あ 」
リミザがもっていたマシュマロが刺さった木の枝に、ムシールが振り出した紐状のものが巻き付きさらいとった。
「くそ。あの《ワイヤー》だ。おれのことをひっぱりやがったのは」
ガットがいまいましそうにムシールが操ったワイヤーをにらむ。
「あれ、魔法道具だわ。ドウドさまがおもちゃ代わりにあげたのね」
ラーラがムシールの口に入ろうとしているマシュマロを一瞬で燃やした。
「あちっ!おい、魔法使い、なんてことをするんだ」
「そのマシュマロはうちの《勇者》のだから、あんたに食べる権利はない」
「《勇者》だと?その《コドモ》が?《勇者》はそっちの男だろう?だからわたしも助けてやろうとおもって、こっちに引っ張ったのだ」
ガットをゆびさすムシールに、ラフィーがおおきなため息をつく。
「 どうします? 面倒なうえに腹が立つんですけど」
「たしかにな。どうするよ?リミザ」
ガットに判断をまかされたリミザは、完全に《前のリミザ》だった。
ラーラにわたされた《マシュマロ三つ串刺し焼き》をうれしそうに前歯でかじりながら、王子をみることもなくこたえた。
「脅されたというか、たのまれちゃったし、連れてかえらないと、もっとめんどうになりそうだし、とりあえず、どういうことになってるか、説明してあげれば、すこしは落ち着くかもよ。 ―― なにしろあの魔法の迷路で半年もうろうろしてたんだから」
「半年だと!?ばかな!」
ムシールは目がとびださんばかりに驚いた。




