うかつ
「『忘却の山』では魔法で人間の時間は止まっちゃうのよ。まさか、そんなこともしらないではいったの?」ラーラがじぶんのぶんのマシュマロをあぶりながらあきれた目をむける。
ガットがナイフにさしたハムをみせ、「はやいけど飯にしようぜ」と王子を焚火のほうへよんだ。
とぼとぼと寄ってきた王子は、どすりと腰をおとすと、「半年も・・・」とつぶやきうつむいた。
さすがに、半年も時間を無駄にしてしまったのを悔やんでいるのだろう。
ガットは焼きあがったハムをラフィーがきりわけたパンにのせてムシールへわたしてやった。
「まあ、とりあえず過ぎた時間のことは気にするなよ。あんたがとびだしてから、トラス王国は大変なことになっちまってる」
「そりゃ騒ぎになっているだろうが、コルックがいるかぎりどうにかなるだろ」
トラス王国があの大臣でどうにかもっているのを王子もみとめた。
「そういう問題じゃねえだろ。とりあえず、あんたが抜け出したあとからのことを聞かせてやる。先にいっておくが、おれたちはなにもコルックがあんたのために用意した《勇者一行》じゃあなくて、たまたま《白銀のドラゴン退治》の順番がまわってきただけなんだ」
「そうか。まあそうだろうな。《勇者》が《コドモ》であるパーティーなどをコルックがおくってくるわけないな。まあ、しかたがないのでそこは我慢しよう。そのぶんおまえが戦えばいい。なにしろ迷路のなかでわたしに襲い掛かったあの魔物も、おまえが退治したのだろう?」
その『襲い掛かった魔物』が、あんたが《コドモ》呼ばわりする《勇者》だともいえず、しかたなくガットは、ムシールが脱走してからのトラス王国のできごとを、はなしをはじめてやった。
「なに!?」「そんな!」「なんだと!?」の繰り返しでおどろきつづけたムシール王子も、双子の弟であるタルトンがどんな気持ちでが頑張っているかをきくあたりから、静かになっていった。
「 ―― まあ、そういうわけで、おれたちはコルックに脅されたっていうより、タルトンに頼まれてるんだよ。だから、まあ、しかたねえっていうか、とりあえずはあんたを連れて、《白銀のドラゴン退治》に」
「うかつだった」
「・・・まあ、うん。いまさらでも反省するのはいいと思うぜ」
地面をにらみ、こぶしをにぎりこむ王子は、ひきつったような怒りの顔をしている。
「うかつだったのは、わたしではない。父上だ」
「・・・・・あん?」




