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ヒロイン  作者: 十矢


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8/14

りーだーってとくするの

 なんでそんなに機嫌が悪そうなんだろう。

 やっぱりケンカだろうか。

 物壊してないといいけど。


「ヒロスターニャ!」


 騒がしくて聴こえていないかもしれない。

 でも、後からでてくるときに、こちらを向いたから、わかったようだ。

 出口近くにいると踏まれそうなため、三人で少し避けて荷物も寄せておく。

 しばらくは、こちらに来ないかもしれない。


「来ないですね」

「よくあるのよ」

「そうなんだ」

「機嫌悪いみたい」

「それってわかりますか?」

「うん、表情みればね」

「え〜、わたし怒ってるのって聴いて違うときとか、ふざけたのって聴いて違うときとかあります」

「表情もだけど、眼とかはっきりしてるわ」

「そうなのか。よく怖い顔してるから、そのときは話しかけないけどな」

「ヒロスターニャが変わっているのか、わからないけれど、ヒトのふざけた話しけっこういいって言ってた気がする」

「そ、そうなのか! 睨まれてるのかと想ってた」

「わたしも!」


 ヒト同士の誤解もよくあるけれど、ヒト対竜の誤解もかなりあるらしい。


「もしかしたら、わたしたちも勘違いされてるのかしらね」

「ヒトの勘違いはよくあるだろ」

「ヒト対ヒトってムズカシイですよね」


 この二人は、過去になにがあったのだろうか。

 わたしもさまざまに酷い目にあったけれど、この二人はなんだか、よく落ち込んでいる。

 聴いていいのかもわからない。

 竜に対して、というのであれば、わたしはよく話してるほうなのかもしれない。


「ひとまずこの流れが途切れたら、話しかけてみるわね」

「こっちのは見つからないな」

「う〜ん、わたしもまだいなさそう」


 この街の酒場兼集会所は、そこまで規模は大きくなかったけれど、それでも竜たちの群れとなると、姿を探すのも大変だ。

 低空で移動する竜もいるなか、ヒロスターニャは、少しずついろんな者にぶつかりながら歩いてくる。

 こちらに向かってくるため、わかったようだ。

 もう一度呼びかけてみる。


「ヒロスターニャ」

「少し待ってな」

「物壊してない?」

「あぁ壊してないぞ」


 待つらしい。

 隣をみると、ハッシュリシアスがびっくりしている。


「そんな事いっていいのか?」

「そんなって?」

「壊すとか」

「ええ、いつもよ」

「そんな話しとか、したことないな」


 ハッシュリシアスの竜は、物とか壊さないのだろうか。


「よく物壊したり、故障させたりするの」

「そうだけど、文句とか言わないぞ」

「言わないの? 言っていいと想うわよ」

「す、すごいな」

「すごいですね」


 ライラリックュスが少し引いている。

 竜だって壊すのは仕方ないにしても、わたしだって文句くらいは言うのだけど。


「なによ。あまり機嫌悪いときには、乱雑にするのよ。力加減はできなくても、タイセツくらいは覚えてほしいわ」

「なんだか、すごいな」

「え、ええ」

「二人とも何も言わないの?」

「いや知らないのか? 竜が街ひとつ廃墟にしたとか暴れて山が削れたとか」

「なによ。例えそれがホントの話しでも、一回いっかいしっかりと言えば、大抵はわかってくれてるわよ」

「いや……そうなのか」

「なんだか、そういうのよく言えますね」

「言わないと、理解してくれようとしないもの」

「竜とも意思疎通が、こちらもよりも遥かに立派だな」

「わたしも、そんなにはよく言えてないですね」


 どうやら、二人とも竜に対して強く言ったり注意したりしないらしい。

 それで、ときどき不思議に驚くのかもしれない。


「そりゃ、わたしも何度か睨まれたり、蹴飛ばされたりはしそうになったわ」

「よく死なないな」

「戦闘の前に、家のケンカでもう大怪我しそう」

「死なないわよ。向こうだって本気で壊したくてやってるんじゃないもの。でも、気をつけてほしいじゃない」

「ぼくも気をつけよう。そうか、よく睨まれるのは、そういうなんだ」

「わたし睨まれたら、泣きそうかも」


 二人とも竜との接しかたはまだ試行錯誤してるらしい。

 たしかに、なにがどこまでという範囲は、わたしたちヒトよりは広そうでも、いきなり怒りだされたら恐怖かもしれない。

 けれど、とも想う。


「わたしたち近いヒトが言わなくちゃ。直してくれないわよ」

「竜に注意か」

「わたし泣くかも」


 なんだか先にこの二人にさまざまに、教えてみたほうがいいのかもしれない。


 少し遠くで呼ばれた気がして振り向く。

 ヒロスターニャが、さきほどよりは機嫌よく、こちらを呼んでいる。

 どうやら移動したほうがいいらしい。


「わかった」


 遠くだけど返事をしてから二人に話して、出口付近から空いていそうな場所まで移動する。

 途中何度か邪魔にされてしまい、だいぶ出口から離れた位置まできた。

 この街のオブジェのあるところで立ち止まると、そこはあまり集まっていないため、なんとかスペースがある。


「ヒロスターニャ」

「なんだ」

「きゃぁ!」


 けっこう近くに来ていたらしい。

 急に近くで声がしてびびってしまった。


「悲鳴あげるな。やかましい」

「いついたの。びっくりするわ」

「いま来た」

「いまか」


 二人が距離をとるため、二人もびっくりしていたらしい。


「あ、もう平気よ」

「平気じゃなかったら、なんなんだ」

「……もう一回叫ぶとか」

「叫ぶな、やかましい」

「すぐ側にいるときは驚くでしょ」

「眼はいいからな」

「視力いくつだっけ」

「十三、十五。いやもっとか」

「計測するのも大変ね」

「なに。すぐに忘れる」

「忘れないでよ」

「なにか役に立つならな」

「あぁそれで、この二人は……」

「昨日もいたな。空だけどな」

「あ、覚えてくれてるんだ」

「嬉しいです」

「名前までは知らんな」

「せっかくだから覚えて」

「ライラリックュスとハッシュリシアス」

「そうか」

「ノートにも描いてね」

「描いて覚えるのはヒトくらいだな」

「あなただって、過去の見返すでしょ」

「決まりのノートは覚えるためというより、描いておくほうがいいと判断するからだ」

「ま、いいわ」

「あの、それで」

「そうそう! この娘が話してくれたんだけど、ウラナイのスキルなんだけど、竜たちの間でなにかあったの」

「用意がいいな」

「あ、荷物のこと?」

「また飛ぶことになるな」

「いつごろ」

「さぁ。だがさっきもケンカになってたから、早くにいくことになりそうだな」

「そうなんだ」

「お前たちのはどこにいるんだ」


 二人の竜のことらしい。


「いま探してるんです」

「なかにいるのかな」


 二人が離れてしまった集会所のほうを見ると、まだ竜たちは出口付近に大勢いて、姿がわからないみたいだ。


「喚ばないのか」

「いや、怒られないかな」

「そうですよ」

「契約はあるんだろう。喚んだからと怒るやつは、相当短気だぞ」

「そうなんですか」

「いえ、でもなんか睨まれるとか」

「ヒトはなぜそんなに、自信を持たないんだ。畏怖を抱くのかもしれないが、寂しいんじゃないか」

「え、ヒロスターニャ寂しいの? なんだ言ってよ」

「おれの事じゃないな」

「え、じゃ寂しくないんだね」

「そうは言っていないな」

「……どういうことなの?」

「そういうことだ」

「だから、どういう意味かわからないったら」

「察しがわるいのもヒトなのか」

「竜って寂しいんだね」

「そうは言っていないな」

「もう! なんか意地悪じゃない?」

「それで、いそうか」

「あの真ん中辺りだな」

「わたしのは、まだです」


 ヒロスターニャが、オブジェの横に座ってしまう。

 少しここにいるようだ。

 二人の竜が合流するまで待つのだろう。


「あの、聴いてもいいですか」

「なんだ」

「さっき怒ってましたよね」

「でてきたときか」

「そうです」

「そうかもな」

「でも、いまは機嫌いいほうですよね。そういうの聴いてもいいのかなって」

「気分を聴かれて、おかしくなるやつなんていないだろうな」

「わたし、よく睨まれるんです」

「こちらは眼つき悪いからな」

「いいえ、そんな」

「特になにかしたわけじゃなければ、睨んじゃいないだろうな」

「よく音もおおきい時あるし」

「こちらは、図体があるからな」

「いいえ、そんな」

「音量がヒトより違うんだろう。聴くのも話すのも」

「や、優しい」

「ヒロスターニャ、そんなにじゃないわ」

「いいえ! 竜の優しさに触れました」

「どれだけ怖がられてるんだ」

「あ、傷ついた?」

「余計だな」

「余計にしゃべるのは、ヒトの領分よ」

「毎度よくしゃべることだ」


 ヒロスターニャが少し飽きれて話すけれど、言うほどではないらしい。

 ライラリックュスとハッシュリシアスは、また驚いている。


「優しい」

「優しいやついるんだな」


 二人は、これで優しいらしい。

 普段どれだけ竜に怖い思いをしているのか。

 それか仕草が怖いだけで、普段は違うのだろうか。


「普段そんなに怖がってたら、話しできないよね」

「そうなんだよ」

「そうです」

「話ししてみたらいいのに。ヒロスターニャはおしゃべりだけど、ほかのだって、話しするのはいいと想うわ」

「そうなのか」

「が、がんばってみます」

「おしゃべりとはな……まぁ話しくらいは聴くさ」


 ヒロスターニャが首を伸ばしなにかを観ている。

 そして、また元に戻る。


「気づいたかな」

「そろそろ来るんじゃないか」


 ハッシュリシアスの竜が、なにか発見してこちらに近づく。

 姿がわかったのだろう。

 近くに来ると、横から他の竜も近よってくる。

 軽く当たっている。


「あれ、わたしのです」

「そうなのか」


 ヒロスターニャは、あまり興味なさそうにしている。


「見つけたです。よかった」

「どこにいったのかと思った」

「合流できてよかった」

「えぇ、集会長引いた」


 ライラリックュスとハッシュリシアスは、同時にあいさつしている。


「それで、こちらのかたは?」

「それで、こちらは」

「「リーダーです」」


 二人して揃えて言う。


「ちょっと! 違うからって言ったでしょ」

「いやリーダーで決まりでしょ」

「ですね」

「えぇぇ! なにそれ」

「いいな。またリーダーやってみな」

「ヒロスターニャ無責任じゃん」

「ま、ときにはな」

「そんな、リーダーになったからってなにもいいことないじゃない」

「そんなことない」

「いいことたくさんありますよ」

「二人してもう。じゃいいことなによ」

「そうですね……真ん中にいます」

「そうだね……呼びかけがひとつ増えるとか」

「もう! リーダーってなんなの」

「そう嘆くな」

「なんか理不尽なのよね」


 そう言ってみるものの、もう二人はこれで決定みたいな顔をしている。


「頑張るんだな」

「それでヒロスターニャは、なにか決まったの」

「ああ、また飛ぶな」

「わかった」

「泊まってたところはどうした?」

「さっき話して、すませてきたわ」

「素早いが、なにかあったのか」

「ライラリックュスが、そうしたほうがいいって」

「そうですね」

「ほう」

「どちらになりますか?」

「また厄介だな。ついてくるか」

「そうします」

「ああ!」

「ハッシュリシアスはいいの?」

「いいさ。また情報収集だな」

「いいえ、それもだけど、わたしとヒロスターニャは依頼場所ばかりよ。あなたたちは、それでいいの」

「一緒にいきます」

「いいさ。もしかしたらそのうち見つかれば、離れるかもな」

「いまでもいいんだけど」

「なに。そんなに心配するなよ」

「いや、なんでこうなったのかな」

「気にするな。飽きるだろう」

「ははっそうかもな」

「そういえば、ヒロスターニャはなんで機嫌いいのよ」

「お前の話しがおもしろいからな」

「なにもおもしろくないわ!」

「竜の接しかただろう」

「あぁ聴いていたのね」

「いいか。あまり気にしすぎないことだな」

「ヒロスターニャが、もっと気にしたほうがいいのかもよ」

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