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88.本気やーど

 2人までしか試験を受けられない。

 ということは、誰かがお留守番になるってことだ。


 下の層に行くと、魔法しか通じない敵がいるみたい。

 つまり、スキル【魔法少女】が必要になるらしいから、私は行くしかない。


 いや、行くしかないってよりも、行きたいんだけどね。


 でも、私1人確定で行けるなんて、なんか申し訳ないな。


 そう考えていると師匠は置いてある木製の椅子に座って、ストレージから缶紅茶を取り出す。

 そして、1口飲むと言う。


「下の層は、お前達で楽しんでこい。まぁ、大丈夫だとは思うが、なにかあったら連絡しろ」

「いいんですか!?」

「ああ。私はさっきの戦いで疲れたしな」


 師匠はソラちゃんに言った。

 ソラちゃんは「ありがとうございます」とお礼を言いながら頭を下げると、師匠は「気にするな」言う。


 私も師匠にお礼を言った。

 私の場合は、魔法少女に変身できるってこともあって、行くことが確定しちゃってたからね。


「おや? 合格どころか、まだ試験は始まってすらいませんが、随分と自信があるのですね」

「そうですね。私は子供たちを信じているので」


 師匠は缶に入った紅茶をわざわざティーカップに移し替えながら、メイドさんに向けて、クールに言い放った。


 信じてくれるのは、嬉しいね!


「じゃあソラちゃん、準備はいいかな?」

「はい! 勿論です! ところで……どの探索者と試合を行うのでしょうか?」


 メイドさんしか見当たらない。

 ってことは、メイドさんと戦うの!?


「少々お待ちください」


 メイドさんはそう言うと、階段を上ってお城に戻っていった。

 3分くらいすると、2人の探索者を連れて戻って来た。


「今回の相手は、子供達かいな!?」

「女の子たぁ、やりづれぇな」


 2人共男性だ。


 1人は、ピエロみたいな感じの見た目の大人の人だ。

 顔がメイクされているから分かりにくいけど、30歳前後くらいかな?


 赤いアフロヘアーが特徴的だね。


 もう1人は、学ランにボクサーが付けているようなグローブを装備した大人の人だ。

 この人は20代前半くらいだと思う。


 私とソラちゃんは自己紹介をすると、2人も自己紹介をしてくれた。


 ピエロみたいな人は、炎太エンタさん。

 学ランの人は、究魅キュウミさん、という名前らしい。


「まっ、女の子相手でも、試合形式での戦いだ。手加減は無しで行かせて貰うぜ。そもそも、俺達に勝てないようじゃぁ、下の層に行っても危ないだけだからな」

「一理あるど」


 キュウミさんの意見に対して、エンタさんは腕を組み、首を縦に振った。


「それに、俺達は探索者だ。探索者同士の戦いに、男も女もねぇ。本気で行かなきゃ、むしろ失礼ってもんよ」


 キュウミさんは、熱血漢って感じだ。

 それにあの装備から見ても、物理攻撃を多用してくる可能性が高そうだね。


 エンタさんは……腰に刀があるね。

 ってことは、ココロちゃんみたいな戦闘スタイルかな?



 私達はフィールドに立つ。

 私の横にはソラちゃん。


 そして少し遠く、私達の視線の先に、エンタさんとキュウミさんがいる。


「ルカさん……今回の試合ではアイテムの使用が許可されているようなので、私も戦います!」


 ソラちゃんは錬金術師だ。

 爆弾のようなアイテムも開発している。


 けど、戦闘は普段あまりしていない。

 探索活動も、アイテムを錬金術で作ることを楽しんでいるタイプだ。


「大丈夫? もし、駄目そうだったら後ろに隠れてても大丈夫だよ!」

「いえ、ご心配には及びません! 新技もありますし!」

「新技!?」


 どんなのだろう?


「とりあえず、なんとか頑張ってみます! 面白い人になる為の修行にもなりますしね!」


 そういえば、ソラちゃんって。


「どうしてそんなに面白い人になりたいの?」

「あ、それはですね……」


 ソラちゃんが言いづらそうに口を開こうとすると、メイドさんが言う。


「では、そろそろ試合をスタートさせていただきます」


 そうだったそうだった。

 今は試合前!


 試合に集中しないと!


「では、試合スタートです」


 メイドさんが試合開始を宣言した。


 その瞬間、私は大きく後ろにジャンプするように下がった。


「なにぃ!?」


 キュウミさんがこっちに急接近して、私がいたところに向けてパンチを放っていた。


 結果的には私が試合開始と同時に後ろに下がっていたおかげで、そのパンチはヒットしないで済んだ。


 良かった!

 計算通り!


 計算って程のことでもないけどね。


「マジカルチェンジ!」


 私はスキル【魔法少女】を発動させる。

 キュウミさんは危機を感じたのか、バックステップで大きく後ろに下がった。


 そして、私は魔法少女形態に姿を変えた。


「ちっ! ネットの情報じゃあ、対魔法少女相手の場合、変身前を狙えってあったのによ」


 そんな情報が!?

 いや、戦法的には間違ってないと思うんだけどね。


「ま、これから先のことも考えて、他にも色々対策しておくこったな」


 キュウミさんの言う通りだね。


「ぎゃっ!」


 しまった!

 ソラちゃんが、エンタさんからの攻撃を受けていた!


 ソラちゃんが大きく吹き飛んだ。


「んー! やるな!」


 けど、攻撃は回避していたみたい。


 ソラちゃんが吹き飛ばされたのは、自らの爆弾の爆風を利用して、回避したからみたいだ。

 それによって、ソラちゃんだけじゃなくて、エンタさんのHPゲージも少し減っていた。


「じゃあ、追加でいくど! 【フレイムソード】!」


 エンタさんは刀を構えると、刀身が炎で包まれた。

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