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閑話:あの人は今

☆☆☆


「ひっひぃィィィィィィィィ!」


 とあるダンジョンで、とある男性冒険者が2m程の骸骨に襲われている。


 強力なスキルなどを持った探索者達達の活躍を動画などで見ていると、ダンジョンでモンスターに殺されることはあまりないと思う者も多いが、実はそこまで珍しくもないことだ。


「くっ、くそっ!」


 男性冒険者はストレージから薬を取り出した。

 痛み止めである。


 これを使用することによって、ほとんど痛覚を感じなくなる。


 痛み止めは結構な値段だが、それを持つ冒険者も実は多い。


 なぜならこれがあれば、少なくとも痛みで精神的後遺症が残る可能性は限りなく低いからだ。

 とは言っても、その価格から一般冒険者が大量に持てるアイテムではない。


 男は1つだけ持っているそれを、ゴクリと飲み込んだ。


 そして、「せめて即死にしてくれ」と心の中で祈った。

 いくら痛覚がなくとも、精神的後遺症が残る可能性が高くなるからだ。


「ホネェェェェ!」


 骸骨が拳を振り下ろしてくる。


(あっ、これ即死じゃないな)


 最悪である。


 だが……。


「あれ?」


 いつの間にか、男の体と骸骨の位置は遠く離れていた。


「危なかったでござるな!」


 なんと!


「忍者!?」


 鋭い岩場に立っているのは、黒い装備で目だけ出ている、いかにも忍者な探索者であった。

 声は女性だが、くノ一といった男性が好きそうな衣装ではなく、まさに忍者な外見をしていた。


「いかにも! 探索者を、守り続けて1か月!」


(短っ!……ってそうじゃないな)


 男は心の中でツッコミを入れたが、すぐに頭を下げる。


「助けてくれて、ありがとうございました! さっ、逃げましょう!」


「そうでござるな! っと!」


 忍者は骸骨に殴られたが、それは丸太になった。

 変わり身の術!?


「煙玉!!」


 忍者がそう言って煙玉を使うと、緑色の煙幕で辺りは包まれた。


 その後、男は忍者にお姫様抱っこをされ、ダンジョンの出口まで連れられた。


「改めてありがとうございます! なんとお礼を言っていいか……」

「礼は不要! 拙者はただやりたいことをやっているだけでござるからな! 拙者には背負わなくてはいけぬ、カルマがあるゆえ!」


「えぇ!? それはちょっと……って、もしかして忍者さんって最近探索者界隈でそこそこ有名な、あの忍者さん!?」


 男は思い出した。

 滅茶苦茶有名という程でもないが、「無償で探索者を助けている忍者がいる」という意の書き込みがされているのを、ネットの掲示板で見たことがある。


 専用スレッドも存在しているが書き込みは少ない。

 そこそこ有名といった存在であった。


「では、失礼する!」

「あっ! 待ってください!」


☆☆☆



☆デス抹茶


 行ったか。


 私は助けた男がダンジョンから出ていくまで、岩影に隠れていた。


「忍者も楽じゃないでござるな」


 私は1か月くらい前、テイマーズグランプリでの不正がバレた女だ。


 あの一件の後、私は実にヒドイ目にあった。


 ダンジョン内の外見は髪型とか髪色とかを変えていたのもあり、リアルの特定はなんとか免れた。


 けど、当たり前に炎上はした。

 掲示板では「〇ね」など、生きるのを否定するような言葉を沢山書かれた。


 私のあることないこと色々書かれた。


 私はそれを毎日目にして、心が限界だった。


 食欲もあまりなかった。


 毎日気持ちを抑えるのに精いっぱいだった。


 毎日自分のことを否定され続けたら、どんな気持ちになるのか?


 そんなの……
















「ふざけるなああああああああああああああああああ!!」


 怒りだ!


 私はある日、パソコンに向かって思い切り叫んでいた。


 いくら私が悪いことをしたとはいえ、許せない!


 けどこれ以上炎上させない為、私は感情をネットに吐き出すのはやめておいた。


 でも、日々私のムカつきゲージは上昇していった。


 この前なんか、ダンジョン内にエラちゃん (表ではエラードラゴン呼び)と遊びに行っただけなのに、盗撮もされたし、まさに最悪だった。


 けど、私は決して表に感情を出さない。


 例えば、ここで私が怒り狂ってなにかをしようものなら、特定されて人生が終了するだろう。

 仮にそうじゃなくても、とにかくロクな目に合わない。


 私の友達がそう教えてくれていた気がした。

 ちなみに私の友達はエラちゃんと……ラノベだけだ。


 その友達のラノベがここは我慢した方がいいと、物語の悪役を通して教えてくれている気がする。

 私がラノベオタクじゃなかったら、復讐に走っていた可能性もあったかもしれない。


 ありがとう友よ。


 でも、このままムカつく日々を送るのもなんだか嫌だ。

 大体、私の心も無敵じゃない。


 壊れる可能性だってある。


 ということで、私は考えた。


 “良いことをして褒められよう”と。


 でも、堂々と“デス抹茶”として活動するのは危険だ。

 陰から守る必要がある。


 つまり……は。


「忍者だ!」


 あの日以来、私は謎の忍者として正体を隠して探索者を救出する日々を送ることになる。


 初心者探索者や、女性、男性、迷惑系探索者問わず、私が助けられる範囲の存在は全て助けていた。


 ちなみに忍者装備はゴールドで買った。

 優勝賞金のダンジョン内通貨、ゴールドは貯金しておいたからな。


 買う時は仮面をつけてバレないように購入した。


 そして活動を始めて少し経つと、ネットでも噂されるようになった。

 勿論、良い噂だ。


 私は人に感謝される快感を覚えてしまった。

 良いことだ。


 これからも探索者を沢山助けよう、そう思った。

デス抹茶の名前は一度決めたのですが、現在非公開にしました。

忍者ですので。


※実際は鏡と微妙に被るからです。

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