61.リラックスタイム
「ちっ! 負けちまったか……」
試合終了後、師匠は悔しそうに、でも「サンキューな」と言いながら、リッキーをカードに戻した。
試合終了の合図が確認されたのをしっかり確認した後、私は変身を解除し、師匠の元へとココロちゃんと一緒に駆け寄った。
すると、師匠が言う。
「勝てる可能性は低いとは思っていたが、もう少し追い詰められると思っていたんだがな……まさか、新技を攻略されるとはな」
「いやぁ! 私もとっさに爆風クッションを思い付かなければ、負けていたかもだよ!」
「くそっ、この試合まで新技は使わないでおくんだったな……だが、仕方ない。ここまで来たなら優勝しろよ?」
「うん!」
☆
「というわけで! いよいよ後1時間で決勝戦!」
予想通り、デス抹茶さんはBブロックの準決勝を勝ち抜いて、決勝まで上がってきた。
虫使いのアバレンナーさんを一瞬で倒していた。
改めて、油断できない相手だね!
「お待たせしました! マロッキーノです!」
控室にソラちゃんが入って来た。
ちなみに今控室には、私とココロちゃんの他に、師匠もいる。
クランメンバー大集合だね!
で、それよりも今は訊いておきたいことがある。
「マロッキーノってなに?」
初めて聞いた単語だ。
匂いはチョコレートの匂いが強いんだけど、どことなくビター感があるチョコレートって感じがする。
一体マロッキーノって、なに?
「マロッキーノとは! エスプレッソに、チョコレートソースやカカオパウダー、牛乳などを加えたイタリア発祥の飲み物です! ブレンド方法はお店によって違いますが、今回はかなり甘くしてあります!」
「カフェオレの亜種的な感じ?」
「味的にはそんな感じかもしれません!」
なるほど!
私達は全員マロッキーノをソラちゃんから受け取り、それを飲む。
「甘くて美味しい!」
私は普段コーヒーを飲まないけど、これならいくらでも飲めそうだ!
「普通のコーヒーもいいが、こういうのもオシャレで悪くないな」
と、師匠。
「新感覚だな!」
と、ココロちゃん。
これは本当に元気が出るね!
どうやって作ったんだろう?
「ここってダンジョン内だけど、どうやって作ったの?」
「私は錬金術師ですよ?」
ソラちゃんは、得意げな顔で目をつむりながら腕を組んだ。
私達はマロッキーノを堪能しながら、リラックスをし、後15分で試合開始のところまできた。
「じゃあ、作戦会議しよっか!」
「えっ!?」
私がココロちゃんにそう言うと、作戦会議が始まった。
そして、2分でそれは終わる。
「っていう訳で、前と同じで私が色々臨機応変に戦うってことでいいかな?」
「申し訳ないが、他にないから頼むぞ。それにしても、決勝戦前はリラックスするのに時間を使うものだと思っていたから、急に作戦会議とかビビったぜ」
「15分前行動って奴だよ」
5分前行動、10分前行動、色々あるけど私はその先を行く。
☆
私とココロちゃんは、フィールドへと移動する。
ソラちゃんと師匠は応援席にいる。
「ではでは! 決勝戦! 試合前に2人の意気込みを聞いてみましょう!」
運営の人は、ココロちゃんにマイクを向ける。
「正直、私にはなにもできませんが、勝てる見込みは十分にあります!」
と、ココロちゃん。
次にデス抹茶さんにマイクを向けると、デス抹茶さんは言う。
「今年もまた、最強のテイマーということを証明する! 私は勝ち続ける! それだけだ!」
か、かっこいい! そこまでの自信があるなんて、流石はチャンピオンだ!
でも私もテイマーだったら、なんかかっこいいこと言ってたのになぁ……。
ちょっと残念!
私は変身し、指定の位置についた。
デス抹茶さんも、エラードラゴンをカードから召喚する。
「エラァァァァ!」
エラードラゴンが私に威嚇している!?
今までの試合だと、こんな風に威嚇していた試合は無かった気がする。
「エラードラゴンがここまで分かりやすく敵意を向けるとは……少しはマシな相手ということか」
そして、試合開始のカウントダウンがスタートする。
0になった瞬間、私は魔法を発動させる。
相手は強い!
一気に勝負を決める!
マジカル☆ファイア!
5連打!!
この勝負、悪いけど私の勝ちだよ!




