49.逸話通りの実力者
「ルカ、ソラ、師匠を連れて後ろに下がってろ」
「え……?」
ココロちゃんが前に出て、まっすぐ前を見ながら、後ろの私達にそう言った。
ど、どういうこと!?
「ココロちゃん、相手はやばいよ!!」
「心配サンキュー! でも、私の逸話、忘れた訳じゃないよな?」
そ、そうだ!
ココロちゃんは、ナイフを持った男10人を警察に突き出したことがあったんだった!
で、でも、ナイフとは訳が……。
「来い」
「ははははは!! こいつは傑作だ!! ここはダンジョンとは違うんだぜ? あん中でいくら強くても、ここじゃただのガキだろうが!!」
「来ないのか? 来ないのなら逃げた方がいい。もう少ししたら、警察もここに来るだろうしな」
私の横にいるソラちゃんを見ると、警察と連絡を取っていた。
「後ろのあいつ、通報してやがる! 野郎!! 食らえ!! ダーククロスボウアタック!!」
あの人、クロスボウをなんのためらいも無しに使ってきたよ!!
って、このままじゃ、クロスボウの矢がこっちに……!!
私は鞄を盾に、ソラちゃんを守る! ……って貫通したらやばいよね!?
「おい! やめろ! 狙うなら私を狙え」
「なっ!?」
無事だった……どうして?
って、ココロちゃんの手にクロスボウの矢が握られている!!
なるほど! 放たれた矢を見切って、素手で止めたってことか!
流石5教科合計480点の頭脳を持つココロちゃんだ!
「生意気なガキが!! 食らえ! ダークスタンガンクラッシュ!!」
スタンガンのバチバチ音が強くなった!!
出力最大ってこと!?
「最大出力にすることにより、失神確定の威力に変わる、改造スタンガンだあああああああああああ!!」
スタンガンを持った男がココロちゃんに襲い掛かる。
「逃げて!!」
私は叫んだけど、ココロちゃんは逃げない。
「効かないな」
「なにぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
ココロちゃんはなんと、スタンガンのバチバチしている部分を右手の平で、受け止めていた。
相手は怯んで、大きく離れる。
けど、相手の手から、スタンガンは消えていた。
同時に、ココロちゃんの手に握られていたクロスボウの矢も、消えていた。
そしてその矢が、スタンガンに突き刺さっていた。
ココロちゃんが、クロスボウの矢をダーツみたいに使って、スタンガンを射抜いたんだ!
刺さった衝撃でスタンガンは吹っ飛ばされてしまったようで、今は地面に転がっている。
「こ、このっ!! ガキが!! ダークブレイドインパクト!!」
今度は日本刀を持った男が、日本刀をブーメランみたいに投げてきた!?
けど、ココロちゃんは余裕そうだ。
「いいパスだ」
「嘘だろ!?」
ココロちゃんは、日本刀の持ち手をしっかりとキャッチしたみたいで、手には日本刀が握られていた。
「こうなったら、クロスボウ連射だ! はああああああああああああっ!!」
それらをココロちゃんは日本刀で撃ち落としていく。
「くそっ! もう矢がねぇ!!」
そして……。
「話を聞かせて貰いましょうか?」
警察の人達が到着した!
「に、逃げるぞっ!」
と、男の人たちが逃走しようとている。
ココロちゃんは日本刀を構えた。
「ココロちゃん! 流石に切り殺すのはマズいよ!」
ココロちゃんは構えた日本刀を、思い切り振り払った。
ただし、切り殺しに行ったのではなく、その場で振り払っただけだ。
一体何を……?
「「「むほおおおおおおおおおおおおおおっ!?」」」
なるほど! そういうことか!
凄い発想力だ……!
簡単に整理すると、振り払った勢いを利用して、怪我をしないレベルの衝撃派を飛ばしたみたい!
それによって、相手は転び、逃走に失敗。
警察の人達に連れて行かれた。
◇
「では、話は後日伺います」
「ありがとうございます!」
本当は被害者として話を聞かなくちゃならなかったんだけど、警察の人達に事情を話して、後日でも良いことになった。
ありがとうだね!
「師匠本当に大丈夫?」
「ああ。大丈夫だ」
スタンガンでの攻撃を受けた師匠だったけど、今は普通に歩けるみたい。
「スタンガンは基本的に衝撃と痛みで、相手を怯ませる為に用いられる。だから意識もしっかりしている。心配するな」
ただ、スタンガンを受けた所が、少し赤くなったくらいらしい。
ちなみにココロちゃんは、なぜか完全に無傷だ。
私が言うのも変だけど、若いって凄い!
「それにしてもすまなかった。私が一番しっかりしないといけないのに……」
「いやいや、師匠は守ってくれたじゃん! 相手があんなに凶器を持っていたら、ああなるのは普通だよ!」
なのに師匠は、怯えている私達を守ってくれた。
「そうですよ! 鏡さんは立派な大人です!」
それにソラちゃんも警察に通報した他、絡まれた瞬間から録音してくれていたらしい。
警察にも提出したらしい。
「そうっすよ! 本当は私がもっと早めに対処しておくべきだったっす!」
ココロちゃんも私達を守ってくれた。
そして、師匠は皆の言葉を受け、お礼を言うのだった。
「皆……ありがとな」




