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麻布十番の居候  作者: そーた
17/52

一日目 エロ系はやっぱり稼ぎやすい

前話のアキちゃんは源氏名そのまま使いましたが、その後に出てくる女の子達は、あいにく名前を覚えていないので、仮名とさせていただきます。


つまり、源氏名の仮名ということです。



「初めまして~。カレンでーす」



 次にきた女の子はさきほどまでここにいたアキよりも比べて、“標準的”な女性だった。たぶん、可愛いのだろうと思う。彼女の特徴について、綺麗な黒髪をアップでまとめ上げているという点だけは認識できた。しかしそれ以外の特徴はとくに印象に残らなかった。



「よおしくよおしく」



 『よろしくよろしく』と言ったつもりだったが、うまく呂律が回らない。俺は“相手が誰かもわからない”まま、挨拶を返した。まずは自己紹介からだ。


「すーたって言うんだ。昔から人見知りをする癖が治らない。とくに可愛い女の子が相手だとさらにひどくなる」


 しかし彼女は可笑しそうにケラケラ笑いながら、意地悪な質問をしかけてきた。


「でも全然人見知りしてるようには見えないよ? それって、つまり私が可愛くないってこと?」


「それは参ったな。どうも今のはヘタクソだ。普段ならもっと上手に煽てられるんだけど……上手く口八丁が出来ないや。人見知りしてるのかな?」


「もう!」


 わかりやすくかぶりを振る俺に、カレンは可笑しく笑いながら俺の肩をポンッと叩いた。


 我ながらなかなかに上手い事を言ったもんだと満足した。俺は少しばかり良い気分になって焼酎を煽った。普段焼酎の美味さなんて毛ほども感じない俺だったが、この時ばかりは“味”を感じた。


「今のご時世にマッチ?」


 タバコに火を付けようとした俺を見て、彼女が物珍しげに俺のマッチを手に取った。


「ああ。なかなかオツなもんだろ?」


「マッチなんて売ってるところあるの?」


「コンビニに売ってるさ。二箱入りで60円。ちょっと入用になった時に便利なんだ」


「安ッ!たしかに便利だね……」



「それにさ――」


 俺は小さく灯るマッチ棒を目の前に見詰めながら、ボーっと暖まった目で呟いた。


「マッチの火を見てると、儚い夢を見てるみたいで、いいんだ」


 精一杯光を放つ小さな灯火は、わずかな風にも左右され、いつ消えてもおかしくないくらいに心許なかった。


「もしかして、暖かいストーブが見えてる?」


 隣に並ぶように、彼女もまた、その儚い灯火を眺めていた。



「目の前のあの子の、パンツが見えてる」



「こら!ちょっとミヤビ、あんたパンツ見られてるよ!」


 向かい側に位置するミヤビと呼ばれた女の子は、慌てて組んでいた足をもとに戻し、短いタイトスカートを手で押さえつけた。同時に、マッチの火は消えた。


 俺の手中に残ったマッチの燃えカスは、すっかり醜くくすんでいるのみだった。


「マッチ売りのあの少女も、こんな気持ちだったのかな?」


「うるさいよ!」


 ちょうど今の騒動で、周りの連中からはドン引きの声が上がっていた。そんな中で、居候の声がポッと飛び出てきた。


「こいつ小説家やからちょっと頭おかしいねん。だから許してあげて」


 俺をフォローしているのか貶しているのか、よく分からない口ぶりだ。


「え、ホントに⁉ 小説家なの⁉ だからマッチとか使ってるんだ!」


 合点がいったかのように手を打ったカレン。意味深なその言葉はどうもバカにされているように思えた。


「うるさいな。マッチは何の関係があるんだい?」


 ムッとしてつい俺は抗議の声を上げた。そんな俺に、彼女はまあまあとなだめすかしながら誤魔化す様に言った。


「あ、いや、別に悪い意味は無くて……ちょっと“変な所”とかが小説家っぽいなって……」



 その言い方はもはや悪口だと思った。



「この野郎!チューしてやるぞ!ほら、チューしてやるぞ!」


 お返しとばかりに、俺は口をタコみたいにしてカレンに迫って見せる。ほら嫌がれ、ほらほら嫌がれ、と俺は唇を突き出して見せた。



「してくださいまし。してくださいまし」



 しかし彼女の反応は全く予想に反していた。彼女は逆に目を瞑って唇を尖らせ、俺を迎え入れようとして来る。不覚にも俺は、赤面した。


「きみ、いったい何を考えているんだね」


「チューするぞって言ったのはすーちゃんじゃん。なに? 恥ずかしがってるの?」


 一同から笑いがどっと巻き起こった。ひどく、してやられた気分になった。


「俺のお嫁さんになってくれたらやってやるよ。あいにく俺は愛情が無いと“感じ”ないタチでね」


 なるべく澄ました口調でグラスを煽る。グラスの淵には口を付けただけで酒は全然呑み込まなかった。しかし彼女は引き下がらない。俺をとことんまで苛めてやろうという腹づもりらしい。



「別にいいじゃん。ABCでも“エッチ”してから“愛”するわけなんだし」



「なんだね、それは。全く、訳が分からん……」



 しかし、そう言いかけた所で、俺はようやく彼女の言った言葉の意味が分かった。


「なるほど……!これは上手いな……」


 目を見開いてカレンを見遣ると、彼女はニヒヒと笑ってみせる。


「それよりさ。すーちゃん、小説書いてるの?」


「まだまだ駆け出しさ」


「それって何、出版社に投稿したりするの?」


「ああ。短編小説と長編小説を一作ずつ、投稿したよ」


「どうだった?」


「そりゃあ、受かってたらこんなところにはいないだろう。今ごろ『ヒルズ』に住んでいるだろうさ。そんな簡単にはいかない事なんてとっくに分かっているんだ」


 するとそこで、居候が話に割り込んできた。


「こいつ今小説で金稼いでるからな」


「ウソ!」


 カレンだけでなく、他の女の子までもが口に手を当てて驚いていた。すこし気持ちがよかった。カレンが『どうやって? どうやって?』と興味津々に聞いてくる。待ってましたと張り切る感情をなるべく表情に出ないように押し殺しながら、俺は出来るだけクールな様子を装ってポツポツと答えた。


「『サブスク』って、分かるかな?」


「サブスクリプションでしょ? 月額でお金支払って、みたいなやつ……。え、それで稼いでるってこと?」


「そうだね」


「え!じゃあ、毎月権利収入でお金が入ってくるってことだよね⁉」


「そうだね」


「めっちゃ良いじゃん!」


「でもこれは俺の力じゃないよ」


「どういう事?」


「実はね、もし俺の書いた小説だけだったら、お金なんて月一万円も稼げてなかっただろうね」


「誰かが協力してくれたってこと?」


「ええ。小説を書きはじめた当初、俺の作品をひどく気に入ってくれた人がいたんだ。台湾人なんだけど……。彼はね、俺の小説をマンガにすることを申し出てくれたんだよ。ちなみにその人は漫画家じゃない。自分でお金を出して他の漫画家に依頼して、俺の小説を原作にした漫画を作ってくれたんだ」


 少しばかりややこしい説明に、カレンは中空を見上げ、右上、左上、真上と、見えない点と点を線で結んで繋げていくように、俺の話を理解しようと努めていた。


「ええ……つまり、その人の実費で、すーちゃんの小説をマンガ化してくれた……ってこと?」


「ああ。しかもそれだけじゃない。その人はそれとは別に、お客さんとしても俺にお金を支払ってくれているんだよ……」


 正直、俺も怖いくらいだ。この人はなんでこんなに俺に支援してくれるのか……どうしても裏がありそうで怖かった。それでも、俺はもはや、騙されていたとしてもいいと思えた。


「そして毎月、その人が送ってくれたマンガを有料で公開している。やっぱり小説よりもマンガの方が皆読んでくれるみたいだ。おかげで売り上げは大幅に跳ね上がったよ」


 そこまで言うと、俺はカレンの様子を窺ってみる。彼女はやはりすこし心配げな表情をしている。まあ、気持ちはわかる。そして彼女はおずおずと尋ねてきた。


「でも、その人って、どうしてそこまでしてくれるの?」


「それは俺が聞きたいくらいだ。本人いわく、『自分は自分が良いと思ったものにお金を払っている。だから全然お金がもったいないとは思わない』と言っていたね」



「それって何語でしゃべってんの?」


 居候がいきなり横入りをしてきた。


「台湾人だからね。もちろん中国語さ」


「すーたの小説読んでんねんやろ? 日本語分かるんじゃないん?」


「いや、どうも日本語は話せないみたいだね。たぶん俺の小説は翻訳機を使ってなんとか読んでいるのだろう。ちなみに俺の小説を中国語翻訳してくれたりもしたよ。ま、さすがに中国語版は彼に権利を譲ってるけどね。それでも彼は無料でそれを公開している。あくまで金儲けには興味が無いみたいだ」



 そこまで話すと、カレンが初めて、納得した様に頷いた。と、言うよりも、何も根拠はないが、無理矢理納得させたように見えた。



「たぶん、その人は、本当にすーちゃんの小説が好きなんだと思うよ」



 俺も、そう思いたい。



「すーちゃんの実力が無かったら、その人の心をそこまで掴むことも出来なかった。だからこれは、すーちゃんの実力あってのものだよ」


 そう元気づけてくれる彼女。俺は遠くを見るように前を見つめながら、静かに微笑んだ。


「俺はね、この小さな成功を掴む事で、成功する瞬間というものを体感したんだよ。分かったんだ。成功と言うのは、今回の事のように、やはり運が必要だ」



 求めよ さらば与えられんーーふと、頭の中にそんな言葉が浮かんだ。



「居候くんとは、どうやって知り合ったの?」


「大学の時さ。俺の家に居候してたんだ」


「ずっと?」


 居候がフッと笑った。なぜなら、彼はもちろん、このあと俺達がどういった結末を辿ったのかを知っている。

 彼が代わりに答えた。


「いや、最終的に管理会社に追い出された。すーたの所に電話かかってきて、『そちらに人相の悪いヒゲのオジサンが住んでますよね?』って言われたらしい」


「なにそれ」


 カレンは面白そうに笑った。


「実はね、アレはもしかしたら、俺のせいかもしれないんだ」


「どうして? 何かやらかしちゃった?」


 俺の一言に、カレンと居候を含む何人かが俺の方を注目した。


「居候が追い出される前日の晩、突然さ、居候が言ってきたんだよ。『すーた、今から旅に出やんか?』ってね。まるでいたずらを思いついた子供の様な笑顔で……」


「そんなんあったっけ?」


 居候は覚えていないようだ。


「あったさ。そして二人で原付に乗って、ただ当ても無く走ったよ。夜の大通りを走ってると、何だか心地よくって……たぶん、冬では無かったと思う。いい感じに涼しかった記憶があるからね。俺は『スーパーマンのモノマネ』とか言ってバイクの上でうつ伏せになりながら走ったりしたんだ」


「どんな状況⁉」


「まあ、お前ならやりかねんわな」


 カレンが驚き、居候が妙に納得していた。


「俺の少し右斜め前に、居候が走っていた気がする。キラキラと光る四条通を背景にして、表情は見えないまでもたしかに楽しげに原付を走らせる居候の姿が今でも目によく焼き付いているんだ。そして俺は、なぜだかよく分からないが……ふと、“こんな事”を考えたんだ――」



 俺の声は、自ずと沈み込んだ。



「この楽しい日々は、いつまで続くんだろう? ――ってね」


 カレンが不思議そうに首を傾げる。


「でも、それがどうしてすーちゃんのせいなの?」


「だって、物語だったらよく、こんなことを考えた矢先に悪い事が起こるもんだろ? 俺は“フラグ”を立てちまったのさ」


 俺の言っている事があまりに馬鹿馬鹿しかったのか、彼らは呆れたように笑うばかりだ。


「まあでも――」


 すると、いったん話が収まりかけたタイミングで、居候がいきなり変な事を言い出した。



「こういう感受性ある奴が、小説家に向いてんねんやろな」



 どうして彼がこんなことを言い出したのかは分からない。俺達二人の関係というのは、そんなウェットな事を言い合う間柄ではなかったはずだ。


 ひょっとして、自分には本当に才能があるのではないか――と、俺は信じ込んだ。しかし、冷静になって考え、やはり俺は思い直した。俺には小説の才能なんてものは、無い。


「小説を書くのって、楽しいの?」


 カレンの言葉に、俺はギョッとした。俺は言葉に詰まった。



「いや……」



 と言ったっきり、俺はフリーズした様にそこで言葉を止めた。俺には元来、甚だどうでもいいような場面でやけに正直になってしまう癖がある。本当にどうでもいい――それこそ適当に話を合わせればいいようなところで、だ。

 俺がこうしている間にも、彼女は俺の返答をずっと待ち構えていた。


「楽しくないの?」


 つい待ちきれなかったのか、カレンが心配そうな声音で恐る恐るそう聞いた。


 俺は、考えた。どうして自分が小説を書いているのか。そんな事を、“他人に質問されてから”考えている自分自身が、滑稽に思えた。そして苦し紛れに答えた。


「何かが……俺を急き立てるんだよ。物語を作れって……。たぶん、物語を作るのが好きなのかもしれない」


 冷静に考えると、なにもこの場に居る人間にたいして、“申し開き”をする必要なんてものは全然ないはずだ。しかし、俺の中のヘンテコな自己顕示欲が、この俺に対して説明責任を突き付けていた。



『だったら、小説じゃなくてもいいんじゃないの?』



 とカレンの声が聞こえてき“そう”だった。しかしもちろん彼女はこんな事一切言っていない。現実にいる目の前の彼女は、『へぇ~』と適当な相槌を打って感心している素振りを演じている。――しかしこの子は実際のところ、本心ではどう思っているのだろうか? 


『漫画を描く技術もない。他に何もできない。だから消去法的に小説を選んだのでは?』


 俺は半ば被害妄想に似たような思考で、彼女は内心そんな事を思っているんじゃないかと疑った。



 ――なぜなら実際、図星だからだ。



 正直、俺に絵を書く技術があれば、たぶん俺はマンガを描くだろう。実際、少なくとも藤岡に関してはそうだ。彼はもう開き直っている。『正直小説なんか絵を描く才能が無いから書いてるだけじゃないですか~』と彼は常々こう口にしている。だが、俺は違う。俺は彼のように、そんな潔くは割り切れない。


 だから今ここでそれを――消去法的選択で小説の道を選んでいる――という事を口にしてしまうのはあまりにも格好悪く思えた。だから、俺は誤魔化すことにした。――もっとも、実際には誰一人として、そんな事を聞いてなどいないのに。



「俺はさ。小説を書くことで、着実に成長しているんだ、人間としてね……」



 会話の相手からしてみれば、俺がまた別の話を切り出した様に見えるのだろう。しかし、俺にとっては、話はずっと続いていた。俺の中で、続いていた。そして自分自身にウソを吐いていた。しかし、あながちウソという訳でもなかったのも事実だ。


「今となっては、俺にお金を出してくれる人がいる。だから、俺は書き続けるんだよ。支援者たちに恩返しをする方法を、いろいろと考えた。その結果、やはり新しいのを書き続けるしかないって思ったんだ」


 俺は心なしか右手と左手をちぐはぐにウロウロさせて話をしていた。その手振りはジェスチャーとしての意味をまったく成していなかった。


「ネット上でさ。あるイラストレーターがいたんだけど……彼は俺と同じように、サブスクリプションで支援を受けながら、創作活動をしていたんだ。でも、彼はある日、それを止めた。サブスクリプションで支援を受ける事を、止めたんだよ」


「どうして?」


 カレンが続きを促した。


「創作意欲を無くしたらしい。彼はもう、絵を描かなくなった。……良くある話だ。やはり一度は、立ち止まりたい時もあるのだろう」


「え、やっぱり、絵を描かなくなったらさ、支援者からお金を受け取ったりしたらダメなの? なんかこう……最低でも一か月何枚作品を作らなきゃならないとか、そういうのって……」


「いや、無いね。べつに、権利収入と同じなんだからそのまま何もせずにただお金だけを受け取ってもいい」


「なるほどね。でもその人はそれが申し訳ないと思って、自分のサイト自体を停止しちゃったんだ……」


 カレンが納得した様に何度か頷いた。


「その話を聞いたとき、俺はそいつの事を、バカだと思ったね。別に騙してお金を奪っている訳では無い。支援者は自分の意志で、お金を支払っているんだ。だからそれに対して罪悪感を感じて、貰えるものを拒むなど、愚の骨頂だと思った。でも――」



「でも?」



「でも今は、その人の気持ちが凄く分かる」


 カレンは共感したように頷いていたが、横から話を盗み聞いていた居候は納得がいかない様子で首を傾げていた。俺は居候にも聞かせるようにして、カレンへと言葉を続けた。


「実際にこの立場になってみれば分かるよ。だから俺は支援者の為に書き続けるんだよ。この考え方は、もしかしたら間違っているのかもしれないが……」


「でも、やっぱり自分の書きたいものを書いた方が良いと思うけどな……」


「もちろん、それはそうさ。だから、俺は決してお客さんには媚びたりしない――」


 そう言葉を放った次の瞬間、俺の口は堰を切ったように言葉を立て続けに流していた。“俺”が喋っているという感覚がいっさい感じられなかった。もう一人の自分が、“俺”という人間に対して、言い聞かせているような感覚を覚えた。


「出来るだけ……無心にならなきゃいけないんだ。余計な事を考えちゃいけない……そうだ!」


 俺はもう、自分自身を啓発せんがために言葉を紡いでいる。


「俺は自分の表現したい事を表現している時が、一番楽しいんだ。そして、それによって共感を得られた瞬間が、一番楽しい。心が、生き生きしているんだ。金勘定なんて雑念は取り払い、自分の好きなものを、自分の思想を、相手に“見てもらう”。独りよがりなんかではダメだ。見てもらわなくちゃいけない。だけど――自分を曲げる事はいけない」



 雑念を払い、まっさらな、澄みきった心にならなければ完璧な(げい)をお見せする事は出来ない。ですから、お客様を神様とみて、歌を唄うのです――



 『お客様は神様』――ちまたでクソみたいな意味に書き換えられたこの言葉が本当に意味する所も、今の俺にはちゃんと分かる。この言葉は、決して“お客様第一”だなんて、クソッタレな意味なんかじゃない。――これも小説を通して学んだことだ。俺は、皆の為に、自分の好きな事をし続けるんだ。こんな自由な生き方が、この世にあるんだぞって……



「すーちゃんなら……きっと立派な小説家になれるよ」



 カレンがそう言って、俺に優しい笑顔を向けてきた。気が付けば、居候も、ゴーちゃんも、みーちゃんも、他の女の子たちも、ある種の尊敬の眼差しで俺を見つめていた。


 彼女の言葉に、俺はまた心を痛めた。――『小説家』というワードが、ちくりと胸に突き刺さった。なんだか、他人を偽って生きているかのような気分だった。『俺は小説家』――と自称するたび、いつも罪悪感に苛まれる。


 しかし、少なくとも俺の言葉は、その場に居るみんなを大いに感心させたらしい。いつのまにかゴーちゃんやみーちゃん、それに他の女の子だって、俺の言葉に頷いていた。中でも、カレンは、その目をキラキラさせて俺を熱く見つめている。俺はなんだか照れくさくなった。酔いのせいか――まあ、たまにはこういうのも良いか、と今だけはそう思えた。


 そしてカレンは、うっとりとした瞳のまま、俺にこう尋ねた。



「私、すーちゃんが、どんな小説を書いているのか……知りたい」



 俺の事をもっと深くまで、知りたがっているのだろう。俺はもう彼女にすっかり心を許していたらしい。だから教えてやる事にした。俺は答えた。



「エロ小説」





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