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第六十七話 「初戦」

 「やっぱり涸れてるな。」

 「そうなんですか?」


 新迷宮3階は迷路のような作りになっており、そのところどころに小部屋があるので、4階への階段が近い部屋で種族特性【ビジュアライズ】で地図を空間に可視化させながらサナと今後の方針について話し合っている。


 3階までくるとパーティーはグッと増えていた。

 ちゃんと数えていないが50組はいるだろう。

 もう地図に映っているモンスターの数より探索者の方が一桁多いくらいだ。

 前にあれだけしつこく襲ってきたデミオークですら涸れてる。


 可視化した地図に青い光が点いているのに気づいたのでタップしてみる。

 「ん?ロマさん来てるな。」

 「え?どこですか?」

 「ここ。ほら、あの隠し部屋前の通路のところだよ。」


 ロマは6人パーティーで来ているらしい。

 結局、あの部屋で死体を発見したことにするのかな?


 「本当はこの階でデミオークを相手にしようと思っていたんだがなぁ。しょうがない、もう一階上に登るか。」

 「はい!」


 4階への階段近くの部屋のドアを確保できただけ良しとしよう。

 次からは淫魔法【ラブホテル】でここにショートカットできる。

 そのまま階段を上り新迷宮4階へ来た。


 階段から離れ、人がいないことを確認し、先程のようにまた種族特性【ビジュアライズ】で4階の地図を広げる。


 この階にいるパーティーはざっと30組。

 3階ほどではないが、やっぱりモンスターは涸れている。


 「新迷宮4階はランク2の敵まででるんだっけ?」

 「たしかそうだったと思います。」

 地図とそれに表示される情報を見ながらサナとそんな話しをする。


 逆にいうとランク2までは狩り尽くせるくらいには探索者ギルドの層は厚いんだな。

 そういや公社の資料室にあった迷宮の地図も地上4階、地下5階までは完成していたか。


 「ちょっと危ないかもしれないけど、新迷宮5階へ向かおう。このルートを通れば、途中デミオークかデミミノタウロスと戦闘を試すこともできそうだし。」

 「わかりました。」

 サナが真剣な顔で頷く。


 地図を指でなぞりルートを決定してメニューのマップからナビを使い、淫スキル【マゾヒスト】のレーダーと併用しながら進んでいく。


 しばらく進むと、ようやくレーダーにデミオークが引っかかる。

 淫スキル【性病検査】でステータスチェックをするとレベル15の個体が2体だ。


 「サナ、止まって。」

 「迷宮獣ですか?」

 「そう。種類はデミオークでレベルは15の2体。ちょうどいいくらいかな。」


 サナのバックパックに付いている矢筒の矢をまとめて握り、種族スキル【男根のメタファー】を使い、矢に種族特性【ドレイン】を「体力吸収」で付与させる。

 

 種族スキル【男根のメタファー】は、刺突武器に対して任意のスキルを付与する。又は、棒状の武器の使用に対して淫魔ランクに応じてボーナスを得るスキルだが、種族特性の【ドレイン】もやはりスキル扱いで良かったらしい。


 実際、射撃武器で体力吸収ができるかどうかはわからないが、スタン効果が乗るだけでも相当有利だ。

 併せて自分の槍にも同様に付与させる。


 「サナの矢に魔法を付与させたわ。急所じゃなくても当たるだけで十分効果を発揮するから、落ち着いて狙って。」

 「はい。ご主人様。」

 お互いちょっと真面目モードだ。

 槍を抱えダッシュの用意をし、左手でサナに合図をする。


 サナはスキルを持っていないわりには弓の構え方が様になっており、真剣な横顔が凛々しくもある。

 相手はまだ気づいていないがデミオークとの距離は20m無いくらいだ。


 ブンという弓弦の音とともに矢が通路を飛んでいき、デミオークの背中の中心に吸い込まれるように刺さった。

 良い腕だ。

 よし!サナが回復してるかまではわからないが体力も3割吸ってるしスタンもちゃんと乗ってる。


 「サナ、落ち着いてもう1本。」

 「はい!」

 矢が刺さらなかった方のデミオークがこちらに気づき走ってくるが、サナの2本目の矢もそのデミオークの腹に刺さり、スタンしたデミオークがもんどり打って倒れる。


 「サナ、トドメもお願いね。」

 今度は私の出番だ。

 ダッシュして倒れているデミオークの元に向かい尻から貫通するように槍を差し【ドレイン】

 デミオークの7割くらい残っていた体力の更に9割を吸い取ると、いつものように気絶した。

 やっぱり気絶判定は総HPの5割くらいを一気に失う事っぽい。


 そのまま気絶したデミオークを放置して最初に矢が当たった方のデミオークに向かって突進する。

 背中に刺さったままの矢を気にしながら振り向くデミオークの股間に向かって槍を突き刺すが、それて太ももに刺さってしまった。


 悲鳴を上げるデミオークを無視して槍から手を離すと、そのまま左手でデミオークの額の魔素核から【ドレイン】して気絶させ、倒れ際に抜いた槍でトドメを刺す。



>デミオークを倒した

>50ポイントの経験値を得た


 実際のところ、倒した時の経験値よりドレイン【経験値】で吸う経験値の方が多いんだよな。

 今回も150ポイントが2体で300ポイントだ。

 下手すりゃもう一回の戦闘でレベルが上がる。



>サナはデミオークを倒した

>50ポイントの経験値を得た


 どうやらサナも後ろでトドメを刺したようだ。

 ログを見る限り、やはり矢だと自分が直接敵に触らないせいかドレインでの回復効果は無い様子だ。

 デミオークのドロップ品と背中から矢を回収してサナの所に戻る。


 「大活躍だったわね、サナ」

 「えへへー」

 サナが回収したドロップ品を受け取り、代わりに頭を撫でる。


 落ち着いて射れる1本目に比べ、軌跡が弓なりに飛ぶ矢を近づいてくる相手に当てるのは思ったより難しい。

 よく当てたものだ。と褒めちぎってみると、狩りではもっと遠い相手に風のある場所で当てなきゃならないので、それに比べれば楽です。と返された。

 わりとドヤ顔だ。

 カワイイ。


 弓に関してサナはスキルを持ってなかったので正直不安な部分もあったのだが、これなら安心だ。

 逆に自分の槍の方が問題かもしれない。

 9割ドレインを狙うなら狙いはもっと精密じゃなくては駄目だからだ。

 相手の懐に入ってしまったらもう攻撃方法は素手と割り切ろう。


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