女神
私には戦う力なんて無いし、勇者とか言われても役には立たないと思うんだけど。
(そうかもしれません。しかし、そうではないかもしれません)
……どういう意味?
(貴方は私の召喚によって喚ばれました。つまり、勇者の素質があるのは間違いありません)
あんたが勝手に呼んだんじゃないの?
(申し訳ないとは思っています。しかし、他に手段がありませんでした)
神様なのに?
(長き時の果てに、私は力の大半を失いました。魔王の封印も維持できないほどに)
ふうん。
で、魔王ってのは?
(この世界を破壊しようとする者です)
なぜ破壊しようとするの。
(魔王だからです)
なにそれ。
(神が世界を創ることに理由はなく、魔王が世界を破壊することに理由はありません)
どういうこと?
(世界の理が、そうなっているのです)
あなたは理そのものではないの?
(違います。世界を創ったのは私ですが、私は私を創っていません。そして、魔王も)
なるほどね。
いや、あまりよくわからなかったけど。
それで、私は何をすればいいの?
(魔王を倒して下さい)
……私を元の世界に戻して。
(できません)
できない?
(魔王を倒してもらうまでは、それはできません)
それってひどいんじゃない。
勝手に呼んでおいて、要求だけして、帰せないの?
(本当にすみません)
どうしても魔王を倒さなきゃならないのね。
(そうです)
私にはなにができる?
(貴方にできることならなんでもできます)
そうじゃなくて、魔法とか、剣とか。
(貴方にできることしかできません)
……つまり、魔法とかは使えない?
(これから学べばわかりませんが、今は無理でしょう)
わかった。
つまり、私はただの女子大生で、そのままの力でこれから戦争しなきゃならないのね。
(そうなります。ただし、魔物を倒せばレベルが上がります)
レベル?
RPGみたいに敵を倒せば強くなるの?
(はい。魂のレベルがあがれば、それだけ肉体の質も向上します。肉体を鍛えることでもレベルが上がりますが)
つまり、健全な精神には健全な肉体が宿る?
(そうとも限りませんが、おおまかに言えばそうです。生命を賭して戦えば、魂の質も上がりやすい)
ちなみに、死んだらどうなるの?
(……大地に吸収されるのではないでしょうか)
いや、そうじゃなくて、生き返るとかそういうのはないの?
勇者特典とか、神様の加護とかで。
(人間は死んだらそこで終わりです)
……そりゃそうよね。
そうなったら、神様はどうするの。
(次の勇者を召喚します)
その勇者、今呼んでもらう訳にはいかないの?
(勇者は一つの世界に1人です。貴方がいるうちは、呼べませんし、新しく生まれることもありません)
……つまり、私が死んだら次が呼べる。
使い捨て勇者ってわけね。
(貴方が魔王を倒してくれることを願います)
神様も願うのね。
(人が私に祈るように、私は人に祈ります)
そっか。
(そうです)
これから付き合い、長くなるのかな。
(そうなりますね)
名前、教えてよ。
(イルヴァ。女神イルヴァです)
よろしく、イルヴァ様。