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草津温泉土産店の兄弟

作者:朝霧颯
最新エピソード掲載日:2026/08/04
草津温泉の湯畑近くにある老舗土産店「湯のしずく」。

ある夜、店主の榊原直人が店内で刺殺され、翌朝には弟・翼の遺体が湯畑の裏道で発見される。

警察は兄弟の争いによる事件と見立てるが、二人の死亡時刻、遺体に掛けられた赤い風呂敷、直人の袖口に残された湿った砂は、その推測と食い違っていた。

事件を追うのは、東京で事件記者として働いていた神谷しおり。

過去の取材で人を傷つけ、故郷の草津へ戻った彼女は、もう事件には関わらないと決めていた。しかし、隣のカフェ店員・小野寺玲奈が口にした、ある目撃証言をきっかけに、兄弟の死を調べ始める。

店の棚の奥から見つかった古い帳簿。

帳簿から切り取られた一枚。

兄弟の母が相続した土地。

そして、温泉街の観光利益を守るため、長年続けられてきた沈黙。

真実へ近づくほど、町の人々は同じ言葉を繰り返す。

「町を守るためだった」

兄は何を守ろうとしたのか。

弟は誰を救おうとしていたのか。

事件の夜、玲奈は店の裏口で何を見たのか。

湯煙に包まれた温泉街で、家族への愛情と善意が、やがて最も残酷な形へ変わっていく。

美しい観光地の裏側に隠された、二つの殺人と三十年の沈黙を描く、温泉地ミステリー。
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