82:覇王、七つの残誓を知る。
第七の『雨の道標』が灯らないまま、ゼフィロスは少しずつこちらへ近づいていた。
六つ目までの灯りは、あれほど綺麗に辿ってきた。
第一を見つければ第二へ進み、そこから第三、第四、第五、第六と、まるで百年以上前の道を身体が覚えているかのように、俺たちが示した光へ一つずつ進路を変えてくれた。
だからこそ、最後の第七だけが灯らないことが致命的だった。
『リンドウ!』
頭の中へ、アウラの声が響く。
『ゼフィロスが第六塔の周辺を旋回し始めた! このままだと長く留まるぞ!』
「分かってる!」
第七塔の最上部から空を見上げる。
黒々とした雷雲の中心に、山と見間違えそうなほど巨大なゼフィロスの身体が浮かんでいた。
直線距離なら、もうかなり近い。
しかも問題なのは、あいつ自身だけじゃない。
ゼフィロスが同じ場所へ留まれば、それだけ雨は降り続け、暴風も止まらない。第六塔の周辺に大きな集落こそないが、街道と宿があり、人の避難が終わっているからといって安心できるわけじゃない。
長時間そこに居座られれば、今度は地面が水を抱えきれなくなる。
さらに進路が北へ戻れば、その先にはエアリスがある。
「第六、再点灯!」
『いいのか!?』
「五十秒だけ! 出力二十八!」
『了解!』
遠方で、一度消えていた第六の『雨の道標』に再び青緑色の光が灯った。
ゼフィロスの巨大な頭部が、ゆっくりとそちらへ向く。
「……やっぱ反応するか」
予想通りではある。
ただ、これで稼げるのは時間だけだ。
第七を灯す条件が分からない以上、何度第六を見せたところで、ゼフィロスを同じ場所の周囲で回らせ続けるだけになる。
それじゃ解決したことにはならない。
「リンドウ様!」
塔の下から技師の声が飛んできた。
「旧風神殿より使者が到着しました!」
「エルナ?」
「はい!」
俺はすぐに階段を駆け下りる。
その途中。
再び、あの低い鳴き声が空を震わせた。
――ォォォォォォォォォォォン。
「……っ」
塔の石壁が微かに震える。
そして、その声が響いたのとほとんど同時に、第七塔の内部を走る魔力回路が一瞬だけ淡く光った。
足が止まった。
「……やっぱりだ」
偶然じゃない。
さっきも、今も。
ゼフィロスが鳴いた瞬間にだけ、第七の『雨の道標』が反応している。
けれど、それだけでは完全に起動しない。
「リンドウ様!」
一階まで下りると、息を切らしたエルナが、古びた楽譜と何枚もの資料を抱えて待っていた。
「持ってきてくれたか?!」
「はい。しかし……」
その顔を見た時点で、なんとなく察した。
たぶん、俺が欲しい答えは見つかっていない。
「終節は?」
「……見つかっておりません」
「だよな……」
「神殿に残されているすべての写本を確認しましたが、祈祷歌はどれも同じ位置で終わっています」
受け取った楽譜へ目を落とす。
最後に残っているのは。
『返り声』
その一文だけ。
「古い運用記録には、『風巫女、終節を捧ぐ』って書いてあるんだ」
「はい」
「なのに、歌にはその終節がない」
「……そのようです」
「何なんだよ、それ……!どうしろってんだ……!」
意味が分からない。
記録の通りなら、第七を灯す前に風巫女が終節を捧げ、そのあとで『返り声』を待つ。
だったら何かがある。
何もないはずがない。
『リンドウ!』
考え込んでいると、またアウラの声が響いた。
『第六の光を消すぞ! もう予定時間だ!』
時間がない!
「消せ!」
『分かった!』
遠くで第六の光が消える。
ゼフィロスはしばらくその場を漂ったあと、行き先を見失ったように、ゆっくりと別方向へ頭を向け始めた。
「……まずいな」
答えが出るまで、そこで待っててくれ。
なんて……当然、通じる相手じゃない。
「エルナ」
「はい」
「資料、ここに置いといてくれ」
「どうされるのですか?」
「行ってくる」
「……どちらへ?」
「ゼフィロスのところだ」
エルナが固まった。
「いや、その反応は分かるけど」
「しかし!」
「……殺しには行かない」
そこだけは、自分でも驚くくらい迷わず言えた。
「時間を稼げるだけ稼ぐ」
第六塔の周囲からゼフィロスを引き離し、第七が灯るまで、できるだけ人のいない空へ留める。
その間にこっちで答えを探す。
「アウラ!」
『おう!』
「第六から離れて、俺と合流!」
『戦うのか!?』
「ああ!」
『倒すのか!?』
「倒さねぇ!」
一瞬、通信の向こうが静かになった。
『……難しそうだな!』
「そうなんだよ!」
分かってんじゃん。
前回の戦いは、少なくとも俺にとっては簡単だった。
いや、普通の人間からしたら天災級の存在を相手にする時点で簡単なわけがない。
ただ俺には、攻略法があった。
弱点も知っていた。
攻撃の周期も。
接近経路も。
全部分かっていた。
だから、壊せばよかった。
四枚の『風鰭』を全部落とし。
頭部まで辿り着いて。
中枢へ一撃。
それで終わる。
でも今度は、それをやっちゃいけない。
「『風鰭』、壊しすぎるなよ!」
『壊さずにどう戦う!?』
「二枚までだ!」
『半分か!』
「そうだ!」
四枚全部を破壊すれば、ゼフィロスの風を制御する力は大きく落ちる。
俺たちは接近しやすくなる。
でも、それは同時に。
あいつ自身が進路を安定させる力まで奪うことになる。
今やりたいのは、殺すことじゃない。
危険な場所から動かすことだ。
「……面倒くせぇ!」
右手を伸ばし、『ドライ』を召喚する。
そして、塔の外へ飛び出した。
♢
「来たな!」
丘の上では、すでにアウラが待っていた。
身につけているのはアダマンタイトの重装。
手にはオリハルコンの大剣。
装備だけなら前回と同じだ。
でも、今回やることはまるで違う。
「先に確認!」
「おう!」
「『風鰭』は二枚まで!」
「分かった!」
「頭部へ行っても弱点は殴るな!」
「分かった!」
「あと、ゼフィロス本体を殺せそうな一撃は全部やめろ!」
「……私にできるか?」
「お前の大剣で頭ぶっ叩くなってことだ!」
「分かりやすい!」
「最初からそう言えばよかったわ!」
言いながら、二人で空を見上げる。
ゼフィロスは、さっきよりさらに近い。
まだ暴風域の外側だというのに、吹きつける風がもう肌へ痛い。
「来るぞ!」
横殴りの突風。
「『接地』!」
アウラの足元で術式が起動し、身体が地面へ固定される。
それでも、重装ごと僅かに横へ滑った。
「前より風強くないか!?」
「『風鰭』が完全に再生しきってねぇから、制御が乱れてる!」
「それは良いのか!?」
「良くねぇよ!」
前回、俺たちは『風鰭』を途中まで破壊した。
そこから再構成され。
そのうえ、今日は七つの『雨の道標』で何度も進路を変えさせている。
だからだろう……ゼフィロス周辺の気流が、いつも俺の知っているものと少しだけ違う。
でも、大枠はまだ読める!
「三!」
右から来る。
「二!」
流れが変わり、身体を引き込む吸い込み。
「一!」
「今!」
二人同時に走り出す。
飛ばされた岩を避け、途中で折れた木がこちらへ流れてくれば、アウラが大剣の腹で弾き飛ばす。
「リンドウ!」
「何だ?!」
「前回より楽しいぞ!」
「お前だけだよ!」
青白い雷が地表を横へ走る。
「跳べ!」
二人で地面を蹴った直後、足元を雷撃が通り過ぎた。
「次!」
「もう分かるのか!?」
「だいたいだ!」
完全じゃない。
でも、このくらいの誤差なら十分対応できる。
「上昇流!」
谷間から風が一気に吹き上がる。
「行くぞ!」
「おう!」
二人で地面を蹴り、そのまま風へ身体を預ける。
浮力に乗った身体が一気に上空へ持ち上げられた。
「左肩側へ!」
「こうだな!」
「そうだ!」
横から流れてきた風を使い。
さらに高く、ゼフィロスへ近づく。
「下降だ!」
「落ちるぞ!」
「落ちろ!」
「今回は覚えている!」
「偉いな!」
上昇流から身体を外し、そのまま一気に落下する。
雲を抜けると、目の前に巨大な青灰色のゼフィロスがいた。
「第一の『風鰭』!」
「壊すのか!?」
「壊す!」
『ドライ』を三節へ展開し、『風鰭』の根元へ巻きつける。
「アウラ!」
「おう!」
「一発でいけ!」
「一発で壊せということか!」
「お前ならできる!」
「任せろ!」
アウラが大剣を大きく振り上げた。
「せぇぇぇぇい!」
――轟音。
衝撃が空気を震わせ、一枚目の『風鰭』が砕けて光の粒へ散る。
「次!」
「二枚目だな!」
「ああ!」
一枚失ったことで風の流れが変わる。
でも、今回は全部消さない。
二枚だ……必ず残す!
「右前!」
二人でゼフィロスの身体の上を走る。
「七秒!」
「分かった!」
雷撃を避けながら距離を詰める。
「五!」
巨大な身体が、僅かに傾く。
「三!」
二枚目の『風鰭』。
「一!」
「今!」
『ドライ』を長棍へ戻し、根元へ鋭く突き込む。
表面に亀裂が走る。
「アウラ!」
「ふんっ!」
続けざまに大剣が横薙ぎに叩き込まれ、二枚目が砕け散った。
「止め!」
「あと二枚あるぞ!」
「残す!」
「分かった!」
ゼフィロスが鳴く。
――ォォォォォォォォォォォォン。
咆哮と同時に、一瞬だけ風の流れが緩んだ。
「背中!」
二人で飛び移る。
今『風鰭』は二枚残っている。
だから、前回みたいに風がほとんど消えるわけじゃない。
弱くなってはいる。
でも、まだゼフィロス自身が空を制御できるだけの風がある。
「前より走りにくいな!」
「殺さないからな!」
「殺す方が簡単なのか!?」
「圧倒的に!」
我ながら酷い話だと思う。
でも、本当だった。
敵なら殺す。
弱点へ一直線に向かい、邪魔なものは全部壊して終わらせる。
それなら何度もやった。
でも今は、壊さずに残す。
止めて、進路だけを変える。
それをやろうとしている。
「右の『風鰭』、触るな!」
「なぜだ!」
「そっち壊すと南へ流れすぎる!」
「左は!?」
「左も壊すな!」
「では何を殴る!」
「何も殴るな!」
「難しいな!」
「だろ!?」
ゼフィロスの背中に走る青白い紋様が、一斉に明滅する。
「雷!来るぞ!」
二人で左右へ飛び退いた。
直後。
背中を青白い電流が走り抜ける。
「次、頭部へ行く!」
「おう!」
雷の隙間を縫いながら、前へ進む。
「リンドウ!」
「何!」
「本当に殺さないのか!?」
「今はな!」
「今は?」
「全部分かるまで!」
リュネア。
『雨の道標』。
七つの灯り。
帰る場所。
『返り声』。
――そして。
百年以上続いている約束。
まだ全部が繋がったわけじゃない。
「知らないまま殺すのは、もうやめる!」
今は、それで十分だった。
「なら私も合わせる!」
「頼む!」
頭部が近づくにつれて、雷の密度が増す。
「アウラ!」
「おう!」
「ここから俺一人で行く!」
「前回と同じか!」
「違う!」
前回は殺すために一人で行った。
でも今回は違う。
「お前は残った『風鰭』の様子を見てろ! ゼフィロスが北へ向きすぎたら、左側へ衝撃だけ入れて姿勢を戻せ!」
「壊さずにか!?」
「峰打ちくらいできるだろうが!」
「この大剣に峰などあるか!?」
「平たい方で叩け!」
「分かった!」
「絶対刃入れんなよ!」
「努力はする!」
「そこ断言しろよ!」
アウラと別れ、俺は一人頭部へ向かう。
右から雷、身体を捻って避ける。
次は左。
青白い光が走った瞬間には、もう進路を変えていた。
最終フェーズ。
前回もここを抜けた。
今も基本は変わっていない。
「……百二十年経っても」
また雷を避ける。
「そこは変わんねぇな」
そして、前方に頭部中央。
あの場所が見えた。
俺がずっと、弱点だと思っていた場所。
ゲーム時代は、ここへ最大火力を叩き込めば終わった。
「……」
足を止める。
前回、ここで『ドライ』を振り上げた。
あと一撃。
その瞬間に塔が灯り、俺は攻撃を止めた。
でも、今回は、最初から振り上げない。
「壊さない」
自分へ言い聞かせる。
弱点ではある。
でも、弱点だから攻撃する。
もうそれだけでは決めない。
俺は頭部の周囲を流れる風と雷の魔力を見た。
「進路だけ……」
ゼフィロスの頭部が、少し北へ向く。
このままならエアリス側へ寄る。
「右側に圧を掛ければ……」
『ドライ』を三節へ展開し、その先端だけを頭部側面へ当てる。
致命傷なんて狙わない。
少し嫌がる程度。
「ほらよっ!!」
ゴンッ、と鈍い音が響いた。
ゼフィロスが僅かに頭を反対へ振る。
「そっちじゃねぇって」
もう一発。
今度はもっと浅く、向きだけを修正する。
「……いける」
攻略とは少し違う。
制御……いや、それも違う気がする。
無理やり従わせたいわけじゃない。
ただ、危ない方へ行きそうなら少しだけ押し返す。
それだけだ。
その瞬間。
頭部中央にある青白い紋様が、これまでとは明らかに違う光を放った。
「……ん?」
空気が変わった。
ほんの一瞬、視界が暗くなる。
「何だ……?」
ステータス画面じゃない。
けれど、青白い表示の上に浮かんだ名前を見た瞬間、ずっと記憶の隅へ引っかかっていた言葉が蘇った。
『レムナント・レコード』
「……これ」
聞き覚えがある。
この世界で目を覚ます直前、肉体の再構築と魂の定着を告げたあのアナウンスが、確かにこの名前を口にしていた。
『レムナント・レコードの安定を確認』
あのときは、自分が死んだはずなのに生きていて、そのうえ目を開ければアルセディアだったなんて状況を理解するだけで精一杯だった。
意味なんて考える余裕もなく、それから一度も目にすることがなかった名前が、今になって初めて一つのシステムとして目の前へ現れている。
「……お前、あのときのやつか?」
ステータス画面は普段、俺が意識しなければほとんど出てこない。
それが今、何の操作もしていないのに、勝手に視界へ浮かび上がった。
『特殊存在識別』
「……は?」
青白い文字が、ゼフィロスの頭上へ重なる。
『第五災位『嵐』』
『天渦鯨ゼフィロス』
そこまでは知っている。
今の世界での分類、名前。
どちらも分かる。
でも、次に表示された言葉は――知らなかった。
『分類――『七つの残誓』』
「……」
視線が止まる。
「七つの……残誓?」
何だ……それ。
ゲーム時代に七災と呼ばれていた七体は、全部知っている。
何度も戦った。
何度も殺した。
でも――『七つの残誓』
そんな分類は、一度も見たことがない。
そして、さらに表示が続く。
『中枢――『誓核』』
その文字が現れた瞬間。
ゼフィロスの頭部。
今までずっと、ただの弱点だと思っていた場所が薄く透けて見えた。
「……これ」
皮膚の奥。
さらに肉の奥。
そこに、巨大な青白い結晶がある。
いや……結晶じゃない。
核だ。
風、雷……ゼフィロスを構成する膨大な魔力。
そのすべてが、そこへ集まっている。
『誓核』
その名前を見た瞬間――理解した。
理屈じゃない。
システムそのものがそう教えてくる。
「ここを……壊せば」
――殺せる。
ゲーム時代、俺は何百回もこの場所を殴ってきた。
中枢を破壊し、討伐判定が出て、素材が落ちて、終わり。
ずっとそれだけだった。
でも……今。
初めて、その場所に名前がついた。
「誓いの……核?」
頭にリュネアの言葉が浮かぶ。
『毎年、この国へ雨を連れてきて』
『あなたが迷わないように、私たちが灯をともすから』
――約束。
そして。
百年以上。
ゼフィロスは、同じ季節に、同じ道を辿って。
もうない国へ帰り続けている。
「……まさか」
『七つの残誓』。
『誓核』。
分からない。
まだ何一つ分からない。
説明なんてない。
この『誓核』と、リュネアの約束が本当に繋がっているのかも分からない。
でも一つだけ、確実に分かることがある。
この核を壊せば、ゼフィロスは死ぬ。
俺は『ドライ』を握る手に、無意識に力を込めていた。
今なら――いける。
前回と同じように、一撃。
いや、今は『誓核』そのものの位置まで見えている。
前回よりずっと簡単に殺せる。
「……」
でも、『ドライ』は振り上げなかった。
『リンドウ!』
アウラの声が飛んでくる。
『どうした!?』
「……何でもない」
『止まっているぞ!』
「ああ」
『天鯨は!?』
「生きてるさ」
『それは見れば分かる!』
「……だよな」
少しだけ笑ってしまった。
「……アウラ」
『なんだ?』
「やっぱり」
俺はゼフィロスの頭部へ手を触れる。
青灰色の硬い皮膚。
その奥には、『誓核』。
「こいつぁ、まだ殺さない」
『何か分かったのか?』
「逆だ」
『逆?』
「分からんことが増えた」
『……そうか!』
「納得すんなよ」
『では、調べればいいのだろう?』
「……まあな」
本当に、こいつは簡単に言う。
でも今は、それくらいでいい。
「アウラ!」
『今度は何だ!?』
「そっちから南へ押せ!」
『分かった!』
「壊すなよ!」
『努力する!』
「またそれか!」
後方でアウラが大剣の腹を『風鰭』の近くへ叩き込む。
重い衝撃が響き、ゼフィロスの巨体が少し南へ傾いた。
「そう!」
俺も頭部の反対側へ『ドライ』を当て、致命傷にならない程度に軽く打ち込む。
少しずつ、少しずつ、進行方向だけを修正する。
「第七が点くまで」
吹きつける風が顔を叩く。
「付き合ってもらうぞ」
ゼフィロスが鳴いた。
――ォォォォォォォォォォォォン。
その声を。
俺は、ゲーム時代から何百回も聞いてきた。
ただのボスの咆哮。
攻撃前の予備動作。
それくらいにしか思っていなかった。
でも今は、少し違って聞こえる。
「……『返り声』」
頭へ、また言葉が浮かぶ。
『風巫女、終節を捧ぐ』
『終節の後、返り声を待つ』
そして、ゼフィロスが鳴いた瞬間に、第七の『雨の道標』は反応した。
「……」
繋がりそうになる。
でも……まだ分からない。
だから決めつけない。
今度こそ、最後まで見る。
「待ってろ」
誰に言ったのか自分でもよく分からなかった。
リュネアなのか。
ゼフィロスなのか。
それとも――また答えを急ぎそうになる自分自身なのか。
「ちゃんと最後まで調べてやる」
ゲーム時代に読み飛ばした物語。
敵の名前より、ドロップ率を見て。
会話より、最速手順を見ていた。
でも、今度はちゃんと読む。
ちゃんと知る。
「そのあとで決める」
殺すか。
殺さないか。
それさえも、知ってから決めればいい。
視界の端には、まだ青白い文字が残っている。
『分類――『七つの残誓』』
『中枢――『誓核』』
「……七つの、残誓」
七つ。
その数自体に驚いたわけじゃない。
七災が七体いたことなんて、俺は昔から知っている。
問題は、その七体が――『残誓』と。
そう呼ばれていることだった。
「……何を、残してんだよ」
答えはどこにも表示されない。
ゼフィロスだけが、何も知らない俺を置いていくように。
百年以上、変わらない声で。
もう一度。
空へ向かって鳴いた。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
第七の『雨の道標』が灯るまで、ゼフィロスを殺さずに食い止めることを選んだリンドウ。
そして、その最中に『レムナント・レコード』が示した新たな情報。
『七つの残誓』
『誓核』
今までただの弱点だと思い、何百回も破壊してきた場所には、別の意味がありました。
壊せば、ゼフィロスは殺せる。
それでも今回は、
「知らないまま殺すのは、もうやめる」
と決めたリンドウ。
七災とは何なのか。
『残誓』とは何を残した誓いなのか。
そして、第七の灯と『返り声』の意味とは。
次回――覇王、欠けた歌を追う。




