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教皇庁に禁書指定されたジャンヌ・ダルク伝  作者: しんの(C.Clarté)
上巻・第十六章 パテーの戦い/イタリアとドイツの神学者の考察/ジアンの軍勢

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16.15 ブルゴーニュ公宛の手紙

 6月27日ごろ、乙女ジャンヌ・ラ・ピュセルはブルゴーニュ公に手紙を送り、国王の戴冠式に出席するよう招待した。しかし、返事はなかった。[1361]


 ブルゴーニュ善良公フィリップは、ジャンヌと連絡を取り合うような人物ではなかった。それでも、ジャンヌが彼に礼儀正しく手紙を書いたことは、彼女の心の優しさを示している。


 ジャンヌは故郷の村にいた子供の頃から、イングランドを敵視する以前にブルゴーニュを憎んでいた。それにもかかわらず、ジャンヌは王国の繁栄と、ブルゴーニュとフランスの和解を望んだのである。



 ブルゴーニュ公は、父(無怖公)がモントロー橋で奇襲された事件を簡単に許すことはできなかった。だが、フランスに対して和解が不可能なほどの憎しみを誓ったことは生涯一度もなかった。


 1425年以降、義理の兄弟であるフランス大元帥(リッシュモンのこと。フィリップの姉と結婚)が、父を殺害した犯人を王室評議会から排除したことで、和解の可能性がうまれた。


 王太子シャルルは、自分はこの犯罪とは無関係だと主張したが、ブルゴーニュ人の間では「王太子は愚か者」とみなされていた。[1362]


 ブルゴーニュ公フィリップは、心の底ではイングランドを嫌っていた。


 それは、ヘンリー五世の死後、フランスで「イングランド摂政」を務めることを拒否したことからも明らかだ。さらに、ジャクリーヌ女伯の事件によって、イングランドとブルゴーニュ間の同盟は「公然たる決裂」を招くほど悪化した。[1363]


 長年にわたり、ブルゴーニュ家は「低地諸国」の支配権を獲得しようと努めていた。


(⚠️ヨーロッパの低地諸国(Low Countries):ブラバント、エノー、ホラント、ゼーラントなど。現在のベルギー、オランダ、ルクセンブルク3カ国のこと)



 ついにフィリップ公は、いとこのブラバント公ジャンを、エノー、ホラント、ゼーラントの伯爵夫人(女伯)でフリースラント領主であるジャクリーヌ・ド・バヴィエールと結婚させることで、目的を達成した。


 ところが、ジャクリーヌは夫に我慢できずにイングランドに逃亡し、そこで対立教皇ベネディクトゥス13世によって結婚を無効にしてもらった。その上、摂政(ベッドフォード公)の弟であるグロスター公爵と結婚した。


 グロスター公が強情だったのに対し、ベッドフォード公は慎重だったので、ブルゴーニュ公をイングランドとの同盟にとどめようとあらゆる努力をした。


 しかし、彼(ベッドフォード公)がブルゴーニュに抱いていた秘かな憎しみは、ときどき、衝動的な怒りの行動として爆発した。


 ベッドフォード公が、ブルゴーニュ公の暗殺を計画し、そのことをブルゴーニュ公が知っていたかどうかは定かではない。


 少なくとも、ある日、《《礼儀正しい》》ベッドフォード公は我を忘れて「フィリップがイングランドに行って、体を壊すほどビールを飲むかもしれない」と口走った。[1364]


 つい最近、摂政は、オルレアンの町をブルゴーニュ公にゆだねることを拒否して、無神経にも彼を怒らせたばかりだった。[1365]


 オルレアン敗戦を経て、今や、ベッドフォード公は怒りで指を噛んでいた。

 ロワール川とフランスの中心部への鍵をブルゴーニュ公に与える提案を拒否したことを後悔し、彼は現在、フランス軍が征服しようとしているシャンパーニュ地方をブルゴーニュ公に提供しようかと熱心に考えていた。


 まさに今こそ、強力な同盟相手に豪華な贈り物をする絶好の機会だった。[1366]


**


 その間も、ブルゴーニュ公は低地諸国のことしか考えていなかった。

 教皇マルティヌス五世は、ジャクリーヌ女伯とグロスター公の結婚は無効であると宣言し、グロスター公は別の妻と結婚しようとしていた。


 今や、ディジョンのガルガンチュア(ブルゴーニュ公のこと)は、美しいジャクリーヌの広大な領土を再び手に入れることができる。


(⚠️ディジョン(Dijon):ブルゴーニュの首府)


(⚠️ガルガンチュア(Gargantua):フランソワ・ラブレー著『ガルガンチュア物語』に登場する美食家で大食漢の王様)



 ブルゴーニュ公はイングランドの同盟者であり続け、彼らを利用するつもりではあったが、手先になるつもりはなかった。

 そして、もし自分にとって有利だと判断すれば、フランスと和解する前に、フランスと戦う用意があった。彼はそのことに何の害も感じていなかった。


 低地諸国の次に、ブルゴーニュ公が最も気にかけたのは、女性たちと美しい絵画、例えばファン・エイク兄弟の作品のようなものだった。


 したがって、彼がアルマニャック派の乙女ジャンヌ・ラ・ピュセルからの手紙に注意を払う可能性は低かっただろう。[1367]



(※)『上巻・第十六章 パテーの戦い/イタリアとドイツの神学者の考察/ジアンの軍勢』完結。


(⚠️ベッドフォード公によるブルゴーニュ公暗殺計画について)

もう少し詳しく知りたい方は、『7番目のシャルル、聖女と亡霊の声』番外編コラムをご参照ください。


▼【資料】リッシュモン夫妻の偽造文書とブルゴーニュ公殺害計画について:

https://ncode.syosetu.com/n8607hg/218/

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