16.12 シャンパーニュ遠征計画(2)巧妙な根回し
祝福されたランスにたどり着くには、敵対地域を250マイル(約402キロ)も横断しなければならない。
だが、しばらくの間は、道中で敵に遭遇する危険はないだろう。
この頃のイングランド軍とブルゴーニュ軍は兵力に乏しく、新たな軍隊を編成するために、なりふり構わず、あらゆる手段を講じて兵士の徴募に奔走していた。
当面の間、フランス軍は敵を恐れる必要はない。
豊かなシャンパーニュ地方は、まばらに森林が生い茂り、耕作が行き届き、穀物とワインが豊かで、肥えた牛がたくさん放牧されていた。[1338]
シャンパーニュは、ノルマンディーのように荒廃していなかった。
期待通りに、善良な町々が食料を供給してくれさえすれば、遠征中に兵士たちが困窮する事態にはならないと考えられた。シャンパーニュ地方の人々は非常に裕福で、納屋には穀物があふれている。
ヘンリー六世に忠誠を誓っているものの、イングランド軍やブルゴーニュ軍に愛情の絆はなかった。
彼らは自治を守り、自分たちで町を統治していた。
裕福な商人たちは平和を望み、それを実現するために最善を尽くしていた。
オルレアン解放とロワール流域の掃討によって、シャンパーニュの人々は「アルマニャック派が勢力を盛り返しているのではないか」と思案し始めていた。そして、言葉で訴えかけることができる、つまり交渉可能な聖職者やブルジョワジーを多数抱えていた。
ようするに、大砲や地雷(mines)や塹壕を駆使して町を攻撃するのではなく、恩赦、商人への譲歩、聖職者の特権を尊重する約束などを仕込み、交渉によっていかにして彼らを丸め込むか、あるいは町を迂回するか、が問題だった。
シャンパーニュでは、行軍中に掘立て小屋(塹壕や堡塁)で朽ちたり、砦で焼かれたりする危険はない。
町の人々は、愛情または恐怖から門をひらき、主君である国王に金品を提供してくれる望みがあった。
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シャンパーニュ遠征の計画は事前に準備され、非常に巧妙に根回しされた。
トロワとシャロンとの通信はすでに始まっていた。
ランスの有力者たちから、手紙や使者を通じて「もしシャルル王が来れば喜んで町の門をひらく」旨を伝えられた。さらに、3〜4人の市民が歓迎の意を表明した。
「安心してランスへお越しください。もし、あなたが町に入れないとしたら、それは私たちの責任ではありません」[1339]
このような保証を得て、王室評議会は勇気づけられ、ついにシャンパーニュへの進軍が決議された。
(⚠️ランス市民の態度について補足:市民はシャルル七世の来訪を歓迎しており、町の門をひらくために最善を尽くすが、「私たちの責任ではない」と付け加えることで、敵に妨害される可能性があることを示唆している。ようするに、不測の事態が起きたときに、市民が責められないように予防線を張っている)




