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教皇庁に禁書指定されたジャンヌ・ダルク伝  作者: しんの(C.Clarté)
上巻・第十六章 パテーの戦い/イタリアとドイツの神学者の考察/ジアンの軍勢

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16.11 シャンパーニュ遠征計画(1)もうひとつの狙い

 戴冠式への行軍(シャンパーニュ遠征)は重大な欠点を伴い、深刻な障害に直面したが、それでもフランス陣営に大きな利益とある種の微妙な利点をもたらした。


 残念ながら、この間にイングランド軍は態勢を立て直し、海を越えて支援を得る時間を与えてしまった。彼らがこの機会をどのように活用したかは、すぐにわかるだろう。[1333]


 この遠征の利点については、多岐にわたっていくつかある。


 まず、ジャンヌが「王太子は聖別式されることで大きな利益を得る」という主張は、貧しい司祭や庶民の気持ちを代弁していたのは事実である。[1334]


 聖なるアンプル(聖油瓶)の油から、国王はフランス全土、いやキリスト教世界全体に感銘を与える輝きと威厳を得るだろう。


 当時、王権は霊的かつ世俗的なもので、多くの人々はジャンヌと同様に、「王は聖油を塗られて聖別されることによってのみ王になる」と信じていた。したがって、シャルル・ド・ヴァロワは、一万本の槍(槍兵1万騎)よりも一滴の油から大きな力を得ると言っても過言ではないだろう。


 このような考察(国民感情)は、王の顧問官たちが重視しなければならないものだった。


 彼らはまた、時間と場所も考慮しなければならない。


 儀式は、ランス以外の町で行うことはできないのか? いわゆる「秘儀(聖油を塗る儀式)」は、聖アニャンと聖ユーヴェルトのとりなしで解放されたオルレアンのことで行うことはできないのか? 例えば、ユーグ・カペーの子孫である二人の王、賢王ロベールと肥満王ルイがオルレアンで戴冠式をおこなった前例がある。[1335]


 しかし、これらの王の戴冠式の記憶は、古代の霧の中に消え去り、人々は「聖油が天の鳩によってクローヴィス王にもたらされたランスで、もっともキリスト教的な王が聖別され、長い行列を練り歩いた」伝説を覚えていた。[1336]


 その上、ランス大司教で公爵でもあるルニョー・ド・シャルトルは、自分の手で、自分の大聖堂で、王が聖油を塗られることを望み、それ以外は決して許さなかっただろう。


 したがって、どうしてもランスに行く必要があった。


 また、イングランド軍も、いずれは幼い王をフランスへ連れてきて、古来の儀式に従って聖別を受けさせようと決意していたため、彼らに先んじる必要もあった。[1337]


 とはいえ、もしフランス軍がいち早くノルマンディーを侵攻していたら、幼いヘンリー六世をパリとランスへ連れて行くルートを遮断できただろう。そのルートは、彼にとってすでに安全ではなかった。戴冠式をこれ以上延期することはできなかったと主張するのは子供じみている。


 ノルマンディー遠征を取りやめたのは、単に聖なるアンプル(聖油瓶)を手に入れるためだけではなかった。


 ランス大司教は、別の目的を心に抱いていた。


 (シャンパーニュ遠征によって)ブルゴーニュ公とイングランドの同盟の間に割り込むことで、ブルゴーニュ公に強い印象を与え、さらに、フランス王シャルル六世の息子シャルルが強力な軍隊を率いて進軍する姿を見せつけることで、ブルゴーニュ公の心に啓発的な教訓をもたらす。



(⚠️「ブルゴーニュ公とイングランドの同盟の間に割り込む」について補足:ランスを目的地とするシャンパーニュ遠征のルートは、パリに駐留するイングランド勢力と、フランス東部のブルゴーニュ地方を分断する経路になる。両者の同盟を引き裂きつつ、戴冠式を契機にブルゴーニュ公を取り込む算段があったと考えられる)


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