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教皇庁に禁書指定されたジャンヌ・ダルク伝  作者: しんの(C.Clarté)
上巻・第十六章 パテーの戦い/イタリアとドイツの神学者の考察/ジアンの軍勢

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16.7 外国の神学者のジャンヌ考(2)ドイツとイタリア

 ケルン大学の学長で神学教授のハインリヒ・フォン・ゴルクムは、1429年6月という早い時期に、乙女ジャンヌ・ラ・ピュセルに関する非公式な覚書を著した。


 ドイツでは、(1)その乙女の本質は人間なのか、それとも女性の姿をした天上の存在なのか、(2)彼女の行為は人間に由来するのか、超自然的な源から生じたのか、そして(3)後者(超自然的な力)の場合、その源は善か悪か、という点で意見が分かれていた。


 ハインリヒ・フォン・ゴルクムは、聖書から論証を提示しながら双方向の立場で論じたが、結論を導き出すことは控えた。[1313]


(⚠️ハインリヒ・フォン・ゴルクム(Heinrich von Gorcum):若い頃にパリ大学で学んでいたため、フランスの事情通だったとみられる)


(⚠️乙女に関する覚書:1429年6月に著した『かつてフランスで馬に乗ったある若い娘について(Sur une certaine jeune fille qui autrefois chevaucha en France)』のこと)



 イタリアでも、乙女がしたことについて同様の疑念と不確実性が広がっていた。それらは単なる作り話だと主張する者もいた。


 ミラノでは、フランスから届いた知らせが信用できるかどうかを論じていた。

 真相を探るために、町の有力者たちは、フランシスコ修道会のアントニオ・デ・ロー修道士を派遣することを決めた。彼は優れた人文主義者で、道徳的清廉さを熱心に説く説教者(演説家)だった。


 また、アレッツォ公国の元老院議員ジョヴァンニ・コルシーニも、同様の好奇心に駆られて、ミラノの学識ある書記官(聖職者)でクレモナ出身のコスマ・ライモンディに相談した。


(⚠️コスマ・ライモンディ(Cosma Raimondi):イタリアの人文学者。共和制ローマ末期の政治家マルクス・トゥッリウス・キケロの『弁論家(Orator )』を解読したことで知られる)



 以下は、キケロニアンの学識ある書記官による返答の要旨である。


「高貴なる君主よ、

 神が王国の王子に祖国を回復させるために

 羊飼いの娘を選んだことは、

 新しいことだと言われています。


 しかし、羊飼いのダビデが、

 王として油を注がれたことは誰もが知っています。


 乙女が、少数の部隊を率いて

 大軍に立ち向かったことが語られています。

 その勝利は、地理的な優位と予期せぬ攻撃によって

 説明できるかもしれません。


 しかし、敵が驚いて戦意を失ったとは言わないでおきます。

 それは決してあり得ないことではありません。


 仮に、奇跡があったと認めたとしましょう。

 それは、そんなに驚くべきことでしょうか?

 サムソンがロバの顎の骨で多くのペリシテ人を殺したことのほうが、

 もっと驚くべきことではありませんか?


 乙女は未来を予言する力を持っていると言われています。

 古代の巫女シビュラ、特にエリトリア人と

 クマエ人を思い出してください。

 彼女たちは異教徒でした。

 同じ力がキリスト教徒に授けられない理由がありますか?


 この乙女は、羊飼いの娘です。

 ヤコブは、ラバンの羊の番をしていたときに、

 神と親しく語り合いました。


 これらの前例と理由から、私は乙女の噂を信じるに至りました。

 さらに加えて、物理科学サイエンスから得た

 別の理由を挙げておきます。


 占星学に関する論文で、星の好ましい影響により、

 身分の低いある人が最高位の王子と同格になり、

 天の使命を帯びた聖人と見なされるようになった事例を

 私は何度も読んだことがあります。


 優れた天文学者であるグイド・ダ・フォルリは、

 そのような事例を多数引用しています。


 したがって、星々の影響によって

 乙女が伝えられたような行為を成し遂げたと信じたとしても、

 非難されることはないはずです」


 このように論じながらも、コスマ・ライモンディはこの書簡の結論として、「乙女に関する報告を完全に否定するわけではないが、十分に証明されているとは考えていない」と述べている。[1314]



(⚠️グイド・ダ・フォルリ(Guido da Forli):13世紀イタリアの軍事戦略家グイド・ダ・モンテフェルトロのこと。フォルリの隊長として大きな功績を挙げたためこう呼ばれる。なお、ダンテ・アリギエーリはグイドの策略を嫌い、叙事詩『神曲』で地獄に落としている)



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