15.1 ゲクランの未亡人の孫、ギーとアンドレ兄弟
6月6日の月曜日、国王はセル・アン・ベリー(現在のセル・シュル・シェール)近郊のサン=テニャンに宿泊した。[1179]
随行する貴族たちの中に、未亡人となったラヴァル夫人息子二人がいた。彼女はかつて、土地を持たない貴族の末息子を愛するという愚行を犯した。
弟のアンドレ・ド・ラヴァルは二十歳で、当時ほとんどすべての貴族が経験した「不名誉の影」をかぶったばかりだった。彼の祖母(ジャンヌ・ド・ラヴァル夫人)の夫、ベルトラン・デュ・ゲクラン卿も、それを何度か経験している。
ジョン・タルボットによってラヴァル城に捕らえられたアンドレは、身代金として金貨1万6000クローネ(golden crowns)を用意するために多額の借金を負っていた。[1180]
(⚠️ラヴァル家について:賢明王シャルル五世に仕えた名将ベルトラン・デュ・ゲクランの2番目の妻がジャンヌ・ド・ラヴァル夫人。二人の間に子はなく、ジャンヌ夫人は再婚して娘アンヌをもうける。アンヌは秘密裏に結婚して、ギーとアンドレ兄弟がうまれる。詳細は「14.12 ジャンヌの崇拝者たち(2)ゲクランの妻」参照→https://kakuyomu.jp/works/16817330649585060746/episodes/16818792437424042200)
ようするに、ラヴァル兄弟は金目当てでシャルル七世に奉仕を申し出た。
王はラヴァル兄弟を快く迎えたが金貨は与えず、代わりに乙女を紹介すると言った。
王は彼らとともにサン=テニャンからセルへ向かう途中、聖女を呼んだ。[1181]
ジャンヌは頭以外の全身を甲冑で固め、槍を手に持ち、すぐに馬を乗り出して王のもとに駆けつけた。
ジャンヌは二人の若い貴族(ラヴァル兄弟)を心から歓迎し、彼らとともにセルへ戻った。
長男のギー・ド・ラヴァル卿を、ジャンヌは教会の向かいにある滞在先の宿で迎え、ワインを頼んだ。それが王侯貴族の習慣だった。ワインの入った杯が運ばれ、客はそれにソップと呼ばれるパンのスライスを浸した。[1182]
ジャンヌは、ギー・ド・ラヴァルに酒杯を差し出しながら「近いうちにパリで飲ませてあげましょう」と言った。
それから、三日前にジャンヌ・ド・ラヴァル夫人(兄弟の祖母)に金の指輪を贈ったことを伝えた。さらに、親切に付け加えた。
「それは小さなものでした。ラヴァル夫人の名声を考えれば、もっと価値のあるものを贈りたかったのですが」[1183]
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その夜のミサの時間に、ジャンヌはブサック元帥が指揮する多数の兵士および民兵とともに、セルからロモランタンに向けて出発した。托鉢修道士たちに囲まれ、彼女の兄弟のひとりも同行していた。
ジャンヌは白い鎧を身につけ、フードをかぶっていた。
大きな黒い軍馬が宿の戸口に連れてこられたが、ジャンヌが乗ることを頑なに拒んだ。ジャンヌは教会の向かいの道端にある十字架まで馬を引いていき、そこで鞍に飛び乗った。大きな軍馬がまるで縛りつけられたかのようにじっと動かないのを見て、ギー・ド・ラヴァルは驚愕した。
ジャンヌは馬の頭を教会の入り口に向けると、澄んだ女性の声で叫んだ。
「司祭と聖職者よ、神に祈りながら行列を組んで歩きなさい」
そして、大通りに出ると「進め、進め」と言った。
ジャンヌは手に小さな斧を持ち、巻いた軍旗を小姓が運んでいた。[1184]




