14.15 ジャンヌの信仰生活(3)予言と遺言
ジャンヌは、パスケレル修道士とよく信仰に関する敬虔な会話を交わした。
しばしば、自分が死んだ後、教会が彼女と戦争で亡くなったすべてのフランス人のために祈ってくれることを願っているとパスケレルに語った。
「もし私がこの世を去ったら」
ジャンヌはいつも言っていた。
「国王に礼拝堂を建ててもらいたい。そこで、戦争で亡くなった人や、王国を守って亡くなった人の魂の救済のために、神に祈りを捧げてほしい」
この願いは、信心深い人すべてに共通するものだ。当時のキリスト教徒で、死者のためにミサを捧げることを善であり有益であると考えなかった者がいただろうか?
敬虔さ(信仰心)において、ジャンヌとオルレアン公シャルル・ドルレアンは一致していた。オルレアン公は、幽閉中に著した『嘆きのうた』のひとつで、王国に奉仕して非業の死を遂げた人々の魂のためにミサを唱え、歌うことを推奨している。[1174]
*
ある日、ジャンヌは善良な修道士にこう言った。
「私には、もたらすべき救済がある」
パスケレルは、聖書を研究していたにもかかわらず、驚いて叫んだ。
「歴史上、あなたのような人はこれまで世界のどこにも存在しません。どんな書物にも、あなたに類するものはありません」
ジャンヌは、ポワティエで神学者たちに尋問されたときよりも、さらに大胆なことを言った。
「神は、どんなに学識が優れている聖職者でも、読んだことのない書物を持ってます」[1175]
ジャンヌは、神のみから使命を受け取り、教会の学者たちには封印されている書物を自分のみが読めると主張した。
**
托鉢修道士たちが聖水を振りかけたジャンヌの軍旗の裏側には、くちばしに巻物をくわえた鳩が描かれており、その巻物には「天の王の名において」という言葉が書かれていた。[1176]
これはジャンヌが、例の評議会から受け取った紋章だった。
ジャンヌは「神が私を遣わした」と宣言し、ポワティエで約束した印をオルレアンで示したことから「この紋章と標語は自分にふさわしい」と思っていた。
ところが、王は、2つのフルール・ド・リスの間で剣に支えられた王冠を描いた紋章に変更し、神の乙女がフランス王国にもたらしている援助が何であるかを明白に示した。
ジャンヌは、神の啓示によって伝えられた紋章を放棄しなければならなかったことを後悔したと言われている。[1177]
***
ジャンヌは予言を口にしたが、すべての預言者がそうであるように、必ずしも起こることを予言したわけではなかった。それは預言者ヨナと同じ運命だった。神学者たちは「本物の預言者であっても、予言がすべて成就するわけではない」と説明している。
(⚠️預言者ヨナ:旧約聖書『ヨナ書』に登場。イスラエルの敵国に悔い改めを促す預言をするように神から命じられたが、神が敵を憐れんでいることを不服とし、使命を果たさずに逃げた)
例えば、ジャンヌはこんな予言をしている。
「1429年の洗礼者ヨハネの日までに、どんなに強く勇敢なイングランド人であっても、フランス全土で、戦場でも野原でも、一人も見かけなくなるだろう」[1178]
洗礼者ヨハネの降誕祭は、6月24日に祝われる。
(⚠️補足:第十四章に書かれている内容は6月初旬の出来事で、ジャンヌの予言は実現しない可能性が高まっている。実際、後世の私たちから見てこの予言は外れている。また、シャルル七世に早く行動するよう執拗に要求しているのは、自身の予言に期限があり、自分がうそつきになることを恐れたからだと考えられる)
(※)『上巻・第十四章 トゥールとセルアンベリーのラ・ピュセル/ジャック・ジェリュとジャン・ジェルソンの意見書』完結。




