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教皇庁に禁書指定されたジャンヌ・ダルク伝  作者: しんの(C.Clarté)
上巻・第十四章 トゥールとセルアンベリーのラ・ピュセル/ジャック・ジェリュとジャン・ジェルソンの意見書

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123/146

14.1 包囲戦の戦後処理

(⚠️訳者の覚書)第十四章のタイトルになっている「ジャック・ジェリュとジャン・ジェルソンの意見書」について。吉江(よしえ)孤雁(こがん)氏の旧日本語訳版では、


> 助言や教訓に満ちたものではあったが、ちぢめてしまえば、

> 「善良なれ。信心深く強くあれ。謙虚に慎み深くあれ」

> と言うだけのこと


……と、ひとまとめに要約されてます。

ですが、当時のフランス最高の碩学2人による意見書は、シャルル七世とその評議会が「乙女ジャンヌ・ラ・ピュセルの扱い方・付き合い方」の参考にしており、政治的・宗教的な時代背景を知る上で、きわめて重要な資料です。長文かつ難解ですが、できるだけ忠実に翻訳してみます。

意見書のパートは次回から。

————————————




 5月8日、日曜日の朝、イングランド軍はムンおよびボージャンシー方面に撤退した。


 同日の午後、シャトーダン総督のフロラン・ディリエ卿は兵士たちとともにオルレアンの町を発ち、自身が治めるシャトーダンの指揮所へと直行した。退却中のゴドン(イングランド人への蔑称)がマルシェノワに駐屯し、ル・デュノワを襲撃しようとしていたからである。


(⚠️ル・デュノワ(Le Dunois):オルレアン公爵領内にある地域のこと。のちに、オルレアンの私生児はデュノワ伯に叙勲されて領主になる)


 翌日、ラ・ボースおよびガティネなど、各地の隊長たちもそれぞれの故郷や城塞へ帰っていった。[1119]


 5月9日、ジル・ド・レ卿が連れてきた兵士たちは、報酬も接待もてなしもなかったため、各自の意向で勝手に立ち去った。


 乙女ジャンヌ・ラ・ピュセルも長くとどまることはなかった。[1120]


 町の人たちが神に感謝を捧げる行列に参加したあと、ジャンヌは苦難と悲嘆のときに助けを求めてやってきた人々、そして今や解放と歓喜のときに去っていった人々に別れを告げた。

 彼らは喜びの涙を流して感謝し、自分たちの財産を好きなように使って欲しいと申し出た。ジャンヌは彼らに優しく感謝を述べた。[1121]



 国王は、自身の支配下にある町、特にラ・ロシェルとナルボンヌの住民に向けて、オルレアンから戦況が届いた5月9日の夜から10日の朝にかけて、3回に分けてシノンから書簡を送った。


 国王はこの書簡で、サン・ルー、レ・オーギュスタン、レ・トゥーレルの砦を奪取したことを報告し、各地の住民に、神に感謝するよう促した。そして、オスレアンで成し遂げられた偉業、特に「これらの偉業が成し遂げられたとき、常にそこにいた」乙女を称えるよう呼びかけた。[1122]


 国王の権力(王権)は、オルレアン勝利におけるジャンヌの役割をこのように表現した。


 ここに記されているジャンヌの功績は、決して指揮官(隊長)のものではない。ジャンヌはいかなる指揮権も持っていなかった。

 だが、神によって遣わされたと、少なくともそう信じられるジャンヌの存在は、オルレアンに救いと慰めをもたらした。


**


 ジャンヌは数人の貴族とブロワに戻り、そこで2日ほど滞在し[1123]、それから王が到着する予定のトゥールへ向かった。[1124]


 聖霊降臨祭(イエス・キリストが復活した後、50日目に、集まっていた弟子たちの前に聖霊が降臨して教会が誕生したことを記念する祝祭日)前の金曜日にジャンヌはトゥールへ着いたが、シノンを発ったシャルル七世はまだ来ていなかった。


 ジャンヌは旗を手に持ち、王を出迎えるために馬で出かけた。

 王を見つけると帽子を取り、馬上でできるだけ深々と頭を下げた。

 国王はフードを上げ、ジャンヌに顔を上げるように命じ、キスをした。


 国王はジャンヌと再会して喜んだと言われているが、実際にどう感じたか、本心はわからない。[1125]


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