13.9 オルレアン解放
翌日、5月8日の日曜日は、聖ミカエルの顕現祭の祝日だ。
朝、オルレアンでは、イングランド軍に残された最後の拠点である西側の砦(堡塁)から敵兵が出てきて、町の堀の前で陣形を整え、軍旗を掲げて戦闘態勢を整えているとの知らせが届いた。
オルレアンの人々、兵士も民兵も、敵の残党を攻撃したいと強く望んだ。
夜明けにブサック元帥と数人の隊長が出撃し、敵に対抗できる配置についた。[1106]
乙女は司祭たちとともに郊外へ出かけた。
肩の傷のせいで甲冑の胸当てを着ることができず、ジャンヌはジャセランと呼ばれる軽い鎖帷子を身につけていた。[1107]
兵士たちはジャンヌに尋ねた。
「今日は安息日ですが、戦うのは悪いことですか?」
「ミサを聞きなさい」[1108]
ジャンヌは敵を攻撃すべきではないと考えていた。
「聖なる安息日に戦いを挑んではならない。イングランド軍を攻撃してはならない。ただし、イングランド軍があなたたちを攻撃するならば、勇敢に、恐れずに身を守りなさい。そうすれば、必ず彼らに打ち勝つことができる」[1109]
郊外の、四つの道が交わる十字路のふもとに、司祭たちが旅に携行する「聖別された平らな正方形の石(旅行用の祭壇)」がテーブルの上に置かれた。
儀式を執り行う聖職者たちは、厳粛に賛美歌や応答句、そして祈りを唱えた。
この簡素な祭壇で、ジャンヌは司祭全員と兵士全員とともにミサを聞いた。[1110] 『感謝の賛歌(Deo gratias)』の後、ジャンヌは兵士たちにイングランド軍の動きを観察するよう勧めた。
「今、彼らの顔があなたたちに向いているか、それとも背中が向いているかを見てください」
彼らは、「背を向けて立ち去ろうとしている」とジャンヌに告げた。
これまでに、ジャンヌはイングランド軍に三度言った。
「オルレアンから立ち去れば、命は助ける」
今、ジャンヌは仲間達にそれ以上の要求をせずに立ち去ることを許可するよう求めた。
「今日、彼らと戦うことは神の御心にかなわない。また別の機会に会うでしょう。さあ、神に感謝を捧げましょう」[1111]
ゴドン(イングランド人に対する蔑称)はオルレアンから立ち去ろうとしていた。夜の間に軍議を開き、撤退を決意した。[1112]
撤退を悟られないように、わざと大胆な陣形を取ってみせ、旅立ちを阻止されるのを防いだ。彼らは1時間にわたってオルレアンの人々と対峙していたが、今や整然と行進していた。[1113]
ラ・イル隊長とロレ卿は、彼らがどのルートを進むのか、何か置き去りにするものがないかを知りたがり、100~120人の騎兵を率いて3~4マイルほど追跡した。イングランド軍はムン方面に撤退していた。[1114]
市民、農民、村人たちのが群れをなして放棄された砦に押し寄せた。
ゴドンは病人と捕虜を置き去りにしていた。弾薬や食料もあったが、豊富とは言いがたく、良いものでもなかった。
「しかし」とあるブルゴーニュ人は言う。
「彼らはそれで楽しく食事をした。費用がかからなかったからだ」[1115]
鹵獲した武器、大砲、臼砲が町に運び込まれた。
砦(堡塁)は取り壊され、今後は敵に利用されないようにした。[1116]
その日、盛大で荘厳な行列が行われ、善良な修道士[1117]が説教した。
聖職者、貴族、隊長、行政官、兵士、市民たちが敬虔に教会へ行き、人々は「ノエル!」と叫んだ。[1118]
こうして。5月8日の朝、オルレアンの町は解放された。
包囲戦が始まってから209日目、ジャンヌが来てから9日目のことだった。
(⚠️ノエル(Noël):フランス語で「クリスマス」を意味するが、国王の戴冠式や戦勝などの慶事でよく叫ばれる言葉なので、「万歳」あたりが適訳)
(※)『上巻・第十三章 レ・トゥーレル奪還/オルレアン解放』完結。




