13.6 レ・トゥーレル奪還(1)軍旗のゆくえ
太陽が沈みかけていた。フランス軍は朝からずっと、びくともしない防壁の柵に向かって無駄な攻撃をし続け、疲労がピークに達していた。
「オルレアンの私生児」卿は、部下たちが疲れ果てていることと、夜が迫っているのを見て、また、サン・ローラン・デ・オルジェリル陣営のタルボットとイングランド軍の動向を恐れ、今夜は軍をオルレアンに引き上げることを決意した。
彼は、退却の合図を吹かせた。
ラッパはすでに戦闘員たちをル・ポルトローに呼び集めていた。[1079]
ジャンヌが彼のところに来て、少し待ってくれるように頼んだ。
「神の名において! あなたはもうすぐ突入できます。恐れないでください。イングランド軍はもうあなたたちを支配する力を持っていない」
ある人によれば、ジャンヌはこう付け加えた。
「だから、少し休んで、飲んで、食べてください」[1080]
(⚠️ル・ポルトロー(Le Portereau)ロワール川両岸のオーギュスタン砦(修道院)の西に広がる一帯を指す)
兵士たちが休憩している間、ジャンヌは馬を呼んでそれに乗った。
それから、自分の軍旗を仲間のひとりに預けると、ジャンヌは単独で丘を登り、ブドウ畑へ向かった。
今年4月までこのブドウ畑には行くことができなかった。
もう5月だというのに耕作できないまま、畑は手付かずだったが、そこには小さな春の葉がひらき始めていた。
夕暮れの静けさの中、束ねられたブドウの支柱や、大地の早い暖かさを吸い込むブドウの低木の列の間で、ジャンヌは祈り始め、天の声に耳を傾けた。[1081]
叫びと騒音のせいで、天使と聖人たちがジャンヌに語りかける「声」を聞き取れないことが多すぎた。
ジャンヌは一人でいるとき、または遠くで鐘が鳴り、夕暮れ特有の穏やかでリズミカルな音が野原や牧草地から立ち上ってくるときだけ、彼らの「声」をよく理解することができた。[1082]
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ジャンヌが不在の間、勝利を諦めきれない従騎士ジャン・ドーロンは、最後の手段を考案した。彼は、従軍する貴族の中では最も身分の低い者だったが、当時の戦闘では、誰もが自分のやり方で戦っていた。
ジャンヌの軍旗は、まだ防壁の前ではためいていた。
ジャンヌから軍旗をを預かっていた男は疲労困憊で横たわり、ヴィラール卿の部隊に所属するバスクという名の兵士に渡していた。[1083]
ジャン・ドーロンは、司祭によって祝福され、幸運をもたらすと信じられているこの軍旗を見ているうちに、もしそれを先頭に掲げれば、ジャンヌを心から愛する兵士たちは軍旗を追いかけ、失くさないように防壁をよじ登るだろうと考えついた。
そう考えた彼は、バスクのところに行き、「私がそこの溝に入って、防壁まで歩いて行ったら、私について来てくれますか?」と尋ねた。
バスクはそうすると約束した。
ジャン・ドーロンはすぐに溝に降り、大砲から発射された石から身を守るための盾で身を隠しながら、城壁に向かって前進した。[1084]




