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教皇庁に禁書指定されたジャンヌ・ダルク伝  作者: しんの(C.Clarté)
上巻・第十二章 オルレアンのラ・ピュセル

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12.15 最初の戦い(2)サン・ルー陥落

 ジル・ド・レ卿が率いるブルターニュ兵とル・マンの兵士たちは、1時間前から砦(堡塁)の前で小競り合いをしていた。慣例として、最後に到着した兵士が警戒をしていた。[1015]


 しかし、今朝に町に到着したばかりの彼らが、息つく暇もなく攻撃を仕掛けているということは、かなり苦戦していたに違いない。


 彼らは4月29日に行われたのと同じことを、同じ理由でおこなっていた。[1016]


 つまり、穀物を積んだ艀船(はしけ。重い貨物を積んで航行する平底の船)がロワール川を下って堀に到着するまでの間、イングランド軍の注意を逸らして敵兵を足止めしていたのだ。


 高い丘の頂上にある堅固な要塞で、イングランド軍は少数で立て篭りながら簡単に持ちこたえていた。


 フランス王の兵士たちは、ジャンヌとドーロンが野原に散らばった状態の兵士をすぐに見つけたことから、ほとんど対抗できていなかったと考えられる。


 ジャンヌは彼らを集め、攻撃に戻るよう導いた。


 彼らはみんな、ジャンヌの仲間だった。

 一緒に旅をし、一緒に賛美歌を歌い、一緒に野原でミサを聞いた。

 彼らは乙女が幸運をもたらすことを知っていたので、ジャンヌについて行った。


 先頭に立って進軍する際、ジャンヌの頭に浮かんだのは宗教的な考えだった。


 この砦(堡塁)は、サン・ルー修道女会の教会と修道院の上に築かれていた。

 ジャンヌはラッパの音とともに「教会から何も奪ってはならない」と宣言した。[1017]


 ジャンヌは、包囲軍の最初の司令官ソールズベリー伯がノートルダム・ド・クレリー教会を略奪したせいで悲惨な最期を迎えた話を思い出し、自分の仲間たちを悲惨な死から守りたいと願った。[1018]


 これは、ジャンヌが初めて見た戦闘だった。

 戦場に足を踏み入れた途端、ジャンヌはすぐに最高のリーダーになった。

 ジャンヌは他の誰よりも優れていたが、それは他人より多くのことを知っていたからではない。ジャンヌが知っていたことは他人より少なかったが、心は誰よりも高潔だった。


 みんなが自分だけのことを考えているとき、ジャンヌは他人のことを考えた。

 みんなが自分の身を守ることを考えているとき、ジャンヌは自分の身を捧げることを考えた。


 そして、この少女は、他人は自分と同じように苦しみと死を恐れていることを知っていた。声と予感によって、自分が傷つくことを知っていたにもかかわらず、まっすぐに進み、矢と砲弾の雨の中で、堀の端に立ち、軍旗を手に、兵士たちを鼓舞した。[1019]


 ジャンヌの行動によって、単なる陽動作戦だったものが本格的な攻撃へと変わっり、サン・ルー砦は陥落した。



 サン・ルー砦が攻撃されていると聞いたジョン・タルボットは、サン=ローラン=デ=オルジェリルの陣営から出撃した。おびやかされている砦に到達するには、戦線を下り、森の境界に沿ってある程度の距離を進む必要があった。


 タルボットは出発し、途中で西側の砦の守備隊から増援を受けた。

 町の見張り番が、タルボットの動きを感知して警報の鐘を鳴らした。


 ブサック元帥はパリシス門を通過し、北のフルーリー方面でタルボットを迎撃した。イングランド軍の隊長タルボットはフランスブサックを突破しようとしたが、サン・ルー砦の上に立ち上る濃い煙を見た。


 フランス軍が砦を占領して火をつけたことを理解し、悔しそうにサン=ローラン=デ=オルジェリルの陣営へ引き返した。[1020]


**


 攻撃は3時間続いた。

 砦が焼け落ちた後、イングランド軍の残党は教会の鐘楼にのぼった。

 フランス軍は彼らを追い出すのに苦労したが、危険にさらされることはなかった。

 捕虜は40人ほどで残りは殺害された。


 ジャンヌは敵兵が多数死んでいるのを見て、非常に悲しんだ。

 教会で告解もできずに死んだこれらの哀れな人々を憐れんだ。[1021]


 聖職者の衣服と装飾品を身につけたゴドン(イングランド人への蔑称)たちがジャンヌに会いに来た。ジャンヌは彼らが女子修道院の聖具室から奪ったストールとフードで変装した兵士だと気づいた。


 しかし、ジャンヌは、彼らが見せかけた通りの姿の人物(敵の残党は修道女に変装している)として受け入れ、彼らに危害が及ばないように自分の宿泊先まで連れて行った。ジャンヌは慈悲深い冗談を言った。


「司祭を疑って質問してはいけません」[1022]


 焼け落ちた砦を離れる前に、ジャンヌは従軍司祭のパスクレル修道士に告解した。そして、兵士たち全員に次の宣言をするよう命じた。


「罪を告白し、勝利を神に感謝しなさい。さもなければ、乙女は二度とあなたたちを助けず、あなたたちと一緒にいることもないでしょう」[1023]



 1500人のフランス軍に攻撃されたサン・ルー砦は、わずか300人のイングランド兵によって守られていた。彼らが積極的に防衛しなかったことは、フランス軍の戦死者が2〜3人しかいなかった事実からもわかる。[1024]


 フランス王の兵士たちがこの有利な状況を得たのは、厳しい精神的努力や深い計算によるものではなかった。


 この戦いは、フランス軍にほとんど犠牲を強いることなく、しかし途方もない成果をもたらした。


 それは、①包囲軍とジャルゴーの連絡を遮断したことと、②ロワール川上流が開放されたことを意味し、オルレアン包囲解除への第一歩となった。


 さらに良いことに、それは、これまで恐怖の対象だった悪魔たちが、ネズミのように罠にかけられ、巣の中のスズメバチのように煙で炙り出されるような哀れな生き物であるという確かな証拠となった。


 このような予期せぬ幸運は、乙女のおかげだった。


 ジャンヌはすべてを成し遂げた。

 ジャンヌがいなければ、何も成し遂げられなかっただろう。


 ジャンヌは、隊長や傭兵の知識よりも「賢明な無知」によって、無益な小競り合いを本格的な攻撃に変え、自信を鼓舞することで勝利をもぎ取ったのである。


 その日の夕方、オルレアンの行政官たちはサン・ルーに労働者を派遣し、占領した砦を解体させた。[1025]

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