12.12 市民の疑心暗鬼(1)ふくらむ妄想
この待機の期間中(次の輸送隊が来るまで)、ジャンヌは一瞬も休まなかった。
5月2日の月曜日、ジャンヌは馬に乗り、イングランド軍の要塞を視察するために町の郊外へ向かった。人々は群衆となってジャンヌの後を追った。彼らは恐れを抱くことなく、聖女の近くにいられることを喜んだ。
見たいものをすべて見終わると、ジャンヌは街の大聖堂に戻り、そこで夕べの祈りを聞いた。[989]
翌日の5月3日は「聖十字架の発見の日」で、つまり大聖堂の祭典の日だった。
ジャンヌは行政官や町の人々とともに行列に加わった。
その時、大聖堂の先唱者を務めるジャン・ド・マコン師が[990]、ジャンヌに挨拶して次のように尋ねた。
「お嬢さんは、包囲を解くために来たのですか?」
ジャンヌは「はい、神の名において」と答えた。[991]
オルレアンの人々は皆、街を包囲しているイングランド軍は空の星のように無数にいると信じていた。公証人ギヨーム・ジローは、「奇跡が起こる以外に助かる道はない」と予想していた。[992] 毛織物商のジャン・ルイリエは[993]、市民がこれほど圧倒的に優勢な敵に対して、これ以上持ちこたえることは不可能だと考えていた。[994]
ジャン・ド・マコン師も、ゴドン(イングランド人に対する蔑称)の勢力と敵の数に危機感を抱いていた。
彼は引き続き、「お嬢さん」とジャンヌに呼びかけた。
「彼らの勢力は大きく、強固な陣地を構えています。追い出すのは難しいでしょう」[995]
もし、公証人ギヨーム・ジロー、毛織物商ジャン・ルイリエ、そして大聖堂の先唱者ジャン・ド・マコンが、暗い妄想をふくらませる代わりに、包囲された者と包囲する者の数を数えていたなら、自分たちのほうがはるかに優位な立場だと気づいただろう。
スケールズ、サフォーク、タルボットが率いるイングランド軍は、ヘンリー五世の時代の大規模な包囲軍と比べると、取るに足らない弱々しいものに見えたはずだ。
もう少し注意深く見ていれば、ロンドンやパリという大袈裟な名前をつけた砦(堡塁)は、豊富な兵站(穀物、家畜、豚、兵士など)が数日おきにオルレアンに運び込まれるのを防ぐ力さえないことに気づいただろう。
これらの巨大なハリボテは、その前を毎日通り過ぎる行商人たちに嘲笑されていたのだから。
ようするに、オルレアンの人々は、少なくともこの時点ではイングランド軍よりも恵まれていた。冷静に現実を見つめればわかることなのに、彼らは自力では何も調べようとしなかった。
彼らは、公正でも正確でもない世論を鵜呑みにして、堅く信じていた。
ジャンヌは、ジャン・ド・マコンの妄想を共有しなかった。
彼と同じくらいイングランド軍について何も知らなかったが、ジャンヌは聖人らしく、静かに答えた。
「神は、どんなことでも可能です」[996]
そして、ジャン・ド・マコンは、ジャンヌがそう考えるのはよいことだと思った。




