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教皇庁に禁書指定されたジャンヌ・ダルク伝  作者: しんの(C.Clarté)
上巻・第十二章 オルレアンのラ・ピュセル

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12.9 オルレアン到着2日目(3)和平の申し入れ

 4月30日の夕方、ジャンヌは、サン・ローラン・デ・オルジェリルの陣営に、アンブルヴィルという使者を派遣し、最初に送った使者ギュイエンヌを帰還させるように求めた。3月に手紙を託してブロワから派遣されて以来、いまだに戻っていなかった。


 2人目の使者アンブルヴィルは、ジョン・タルボット卿、サフォーク伯爵、スケールズ卿に、「神の名において、乙女はあなたがたにフランスから撤退し、イングランドに帰るよう要求する。さもなければ、大いなる災いを受けるだろう」と伝えるよう指示された。


 イングランド軍は、アンブルヴィルに悪意ある返答を持たせて送り返した。

 彼は、ジャンヌにこう伝えた。


「イングランド軍は、私の仲間(最初の使者ギュイエンヌ)を捕らえて火あぶりにしようとしています」


 ジャンヌは「神の名において、彼らがギュイエンヌに危害を加えることはあり得ない」と答えた。そして、アンブルヴィルに帰るよう命じた。[979]


 ジャンヌは憤慨し、大いに失望した。

 実際、ジャンヌは『聖カタリナと聖マルガリータと聖ミカエルから霊感を受けた手紙』を、タルボットと包囲軍の指導者たちがこのように《《歓迎》》するとは考えもしなかった。


 しかし、ジャンヌの慈悲心はとてつもなく広かった。

 この程度で諦める気はなく、さらなる和平を申し出るつもりだった。


 ジャンヌの無邪気な心は、神の代理人である自分の宣言が、イングランド軍に誤解されていると思ったのかもしれない。それに、何が起ころうとも、ジャンヌは最後まで自分の使命をやり遂げる決心をしていた。


 夜になると、ジャンヌは大橋に通じる門から出撃し、ラ・ベル・クロワ(オルレアンの城壁と対岸にかかる大橋に設置されている「美しい十字架」)がある堡塁まで赴いた。


 両陣営が、砦の境界線までやってきて、互いに呼びかけ合うのは珍しいことではない。


 ラ・ベル・クロワは、包囲戦の初期にイングランドに奪われたレ・トゥーレル要塞のすぐ近く、声が聞こえるほどの距離にあった。


 ジャンヌは壁によじ登り、イングランド軍に向かって叫んだ。


「神の名において降伏せよ。命だけは助けてあげるから」


 ところが、イングランド軍の守備隊ばかりか、指揮官のウィリアム・グラスデール隊長までもが、ジャンヌに下品な侮辱と恐ろしい脅迫を浴びせた。


「乳搾り女! 貴様を捕まえたら、生きたまま焼き殺してやる」[980]


 ジャンヌは「嘘だ。そんなことはありえない」と答えた。

 しかし、彼らは本気で真剣だった。この乙女が、自分たちに対抗するために大勢の悪魔を武装させていると固く信じていた。


(※)ときどき登場する下品な言葉をどんなふうに翻訳するか考えるのが結構楽しい。以前は「牛飼い女」だったのを「乳搾り女」にしたのは、我ながら名訳だと思う…w

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