2 夜は全裸でおやすみ
その後姉ちゃんは、沢凪荘の人達と改めて自己紹介をし合った。
姉ちゃんと沙穂さんは、何か心の奥で通じ合うものがあったのか、
二言三言言葉を交わしただけで、深い友情が芽生えたように見えた。
矢代先輩も、誰とでも仲良くなれる気立てのよさを発揮し、姉ちゃんとすぐに打ち解けた。
ちなみに姉ちゃんは矢代先輩のあどけなく無邪気な容姿に一瞬で心を奪われ、ガバッと抱きついた挙句
「この子、イギリスに連れて帰ってもいいかな⁉」
と口走り遊ばした。
が、その後俺が丁重にお断りつかまつりました。
そして美鈴だが、俺の姉ちゃんだという事で気を遣っているのか、
それともただの人見知りかは知らないが、随分緊張した様子で、
うまく姉ちゃんと打ち解けられないようだった。
姉ちゃんは姉ちゃんでそんな美鈴に何か思う所があるのか、
他の二人のようにざっくばらんに打ち解けたりはせず、控え目にニコッと笑って
「よろしくね」
と言っただけだった。
まあそんな感じで沢凪荘の一日は終わり、俺は自分の部屋に戻り、さっさと布団にもぐった。
明日は学校だし、さっさと寝よう。
と、思っていたその時、
「聖吾、入るわよ」
という声と共に、姉ちゃんが部屋に入って来た。
「んん?何だよ?」
俺は上半身を起こし、部屋の電気をつけた。
すると、そこに
パンツ一丁で枕を抱えた姉ちゃんが居た。
ほああああああっ⁉
俺は思わず叫び声を上げそうになったが、反射的に両手を口をふさぎ、なんとかそれを防いだ。
こんな所を他の人間に見られたら何て思われるか分かったもんじゃねぇっ!
俺はとっさに自分の布団を姉ちゃんに渡し、極力声を抑えて訴える。
「何でパンツ一丁なんだよ⁉パジャマ持って来てねぇのかよ⁉」
それに対して姉ちゃんは、頭をかきながらこう返す。
「いやぁ、最近裸で眠る心地よさに目覚めちゃって、これが一番よく眠れるのよ」
「だからって全裸で弟の部屋に入って来るやつがあるかよ!」
「いやいや、ちゃんとパンツ穿いてるし」
「それ四捨五入したら全裸だし!」
「聖吾、久し振りに会ったんだし、一緒に寝ようよ」
「人の話を聞けよ!」
「私、時差ボケで疲れてるのよ。もう寝るわね。お休み・・・・・・」
姉ちゃんはそう言うと、俺の許可を得る事なく、俺の布団でスヤスヤと眠りについた。
俺はとても大きなため息をつき、姉ちゃんにそっと布団をかけ、冬用のハンテンをはおり、布団の外で眠る事にした。
「まったく、昔と全然かわらねぇなぁ・・・・・・」
そう一人ごちて俺も静かに目をつむる。
姉ちゃんと一緒に寝るなんていつ以来だろう?
なんだかとてつもなく遠い昔のように感じるけど、
何とも言えず懐かしい、ホッとするような感じもする。
ゲシッ。そう、こうやって蹴られるところとかね。
バシッ。そう、こうやって裏拳をくらうところとかね。
パチィン!大人しく寝ろよ!




