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6.状況報告



 丸一日ということは、つまりは俺たちの足なら二、三時間くらいの移動で済むということで。長崎から福岡に行くくらいの感覚で、俺たちはタヴァリス城下町へと到着した。……こういうとき、地元の感覚で照らし合わせちゃうのは俺だけだろうか。


 無事入城できた俺とメアは、半日ほど宿屋に泊まることにする。ただしまだ腰を落ち着けることはしない。


「よ……っと」


 俺は一度天界側とコンタクトをとるために『タブレット』の魔法を起動した。

 ……まあコレ。俺が勝手に魔法タブレットと言ってるだけで、正式には違う名称の通信魔法なんだけどな。


 やり方はとてもカンタン。両手で中空に一つの四角を描き、あちら側とコンタクトを取りたいと念じるだけ。

 一般人だとそんなものでは発動できないらしいのだが、俺の魔力量と質ならば、割合カンタンにいくらしい。こういうところも、地味に便利なチート魔力の賜物である。


「あーあー、聞こえますかー、女神ルーリー様」


 タブレットに通話画面のようなものが表示される。

 ここらへんは、俺の知っている概念だけで構成できる魔法だから理解がしやすい。メアも最初は戸惑っていたが、次の日には画面の学習・復習を終えていた。……マジもんの天才はやっぱすげぇ。


「りょーちゃん! あらあら久しぶりねぇ~!」


 ふりっとした可愛らしい仕草で通信に応じるルーリー様。おお……、今日もお美しい。

 こんな爆乳美人な上司が居たら、毎日張り切って出社しちゃうね! 会社員だったこと無いから、出社ってどんな感覚かは分からないけど!


「うへへ、お久しぶりっすー」


 久々のおっぱいに、ついぞ鼻の下が伸びてしまう。自分でもわかるくらいのデレっぷりだ。

 しかし、分かってほしい。

 基本的に俺は、自分でも認めるくらいのエロ魔人だ。というかエロ魔王だったしな。

 そんな、エロいことを欲望のままにやってきた童貞魔王の俺が、だ。突如としてその権利を剥奪され、おっぱいの無い幼女と共に四六時中居なければならないというこの環境。これを地獄と言わずして何と言おうか!


 ……いや、仮にメアがロリ爆乳だったとしても、手は出さないけどな。……んー、た、たぶんだけどな!

 まぁそんな久々に見る暴れ乳から、俺は目が離せない。うーむ、今日も絶妙な加減の着エロ具合だ。


「『魔獣王国』を倒してから一週間ほど経過したけれどぉ、進捗はどう?」


 久々だと思っていたけれど、まだ前にこの乳を見てから一週間しか経っていなかったのか。どんだけ乳に飢えているんだ俺。いや、成人男性なら当たり前か? ……いかん、とりあえず乳のことを思うのはやめよう。さっきから爆乳のことしか考えてない。


「う、うっす。こちらは順調です。えーっと、今はバルパルト大陸にやってきてまして――――」


 そうして俺は、コトの経緯を説明する。

 後ろからメアがちょいちょい悪態をつくもんだから、何度か「えい♪」と遠隔オシオキを食らっていた。

 ……噛み付かずにはいられない、狂犬の性なのだろうか。


「――――と、まぁそんなところです。鍵となる聖剣はこちらで入手してます。そもそもこの剣は、選ばれし者にしか触れないっぽいので、盗まれたりはしないかと。

 なので、後はいつごろに邪神が現れるかだけでも分かればありがたいですかねぇ」

「なるほど~。順調なようで安心したわ~」


 頬の横で両手を合わせて微笑むルーリー様。うんうん、超可愛い。俺も釣られてニヤけてしまう。ほんわかお姉さまって、やっぱ良いものですね。


「そうねぇ……。明後日の早朝あたりに、何か良くないものが出るみたいね~。女神レーダーには、そんな反応があるわよ~」


 そんな風に、明日の天気を伝えるくらいのテンションで邪神のことを教えてくれるルーリー様。ちなみに女神レーダーとは、神がかり的な直観のことなのだとか。そりゃ神様だからね、うん。


「……二日後っすか。わりと時間あるなぁ」


 つまり丸一日はこの町でゆっくり出来るということだ。そういうことなら、そこまで急いでこの城下町に向かうことも無かったかな。

 俺ののんびりとした言葉に、少しだけ強めの口調でルーリー様は返してきた。


「あら、油断はだめよ~? 復活予定地がその城下町のすぐ近くってことはぁ、りょーちゃんたちだけじゃなくて、町の人たちも危険に晒されることになるんだからぁ」

「わ、分かってますって。肝に命じます!」


 まぁ正直なところ。他の人たちの命すべてを守ろうと考えるほど、お人よしだったり正義の味方というわけではない。けれども……、目の前で人が死んじゃうのも、目覚めが悪いというか何と言うか。それくらいのユルさである。うん。


 ただ、メアは。

 明らかに、人々のことをそこまで強く思ってはいない。

 勘定に入れていない。


 そういう教育を受けていないのか、分かった上で無視していいるのかは分からないけれど。……そもそも俺、メアの生い立ちとか知らないからな。

 一緒に行動してそろそろ一ヶ月に届こうとしているが、未だに行動原理が掴めないところがあるし。


 まぁその。だからというわけでもないんだけど。

 まともな人間的倫理観は、不思議なことに元魔王の俺が教えてやらなければならないわけで。うーん……、改めて考えると、(しつけ)って大変だ。

 ……何で童貞で子作り未経験の俺が、子供を持ったときのような悩みを抱えなければならないのか。世界って不思議。


「あー、とりあえず。街の人々はできる限り守りますので! そこはお任せください!」

「ウフフ、頼んだわよぉ、りょーちゃん♪」

「うっす!」


 そうして俺はルーリー様との通信を切る。いやぁ、おっぱいも堪能したし、有意義な時間であった。


「……お、終わったか、豚ぁ?」

「おー……、今日はだいぶ激しめのオシオキだったな。お前、大丈夫なの?」

「だい、ダイジョウブ……、だ。こんなことで、ワタシはあんな神などには屈しない! 絶対だぞ!」

「すんげえフラグ台詞だなオイ……」


 ダメージによってふらつくメアを支えながら、外出の準備をする。

 ううむ……、今日は電撃系かぁ。地味にエグい。


 何にせよ腹が減った。

 時間もまだあるのなら、夕食がてら、街でも見て回ろう。


 日がそろそろ落ち、城下町は夜の喧騒を見せ始める。頼むから、この間の酒場みたいなトラブルは起こしてくれるなよ、メア。

 そう祈りながら、俺とメアは連れ立つのだった。





【読者の皆様へ】

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