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24.不思議な気持ち



 次の日。

 授業が終わり、サリエナさん、ルミエラ、ラチカと共にダンジョンへと潜る。

 攻略を進めるのも大事だけれど、黒化を正常に戻していくのも必要だとのことで。本日は再び一階層(厳密に言えばルミエラが綺麗にしてくれているので二階層)から開始である。


 ……その。

 開始、なのだが。


「で……、こうやって~。手に魔力を集中させて、針を抜き取るイメージ。簡単っしょ~?」

「お、おう……。そう、そうデスね……、うん」

「やってみてやってみて、リョーチン☆」

「おぉう、ふ……」


 ルミエラの。

 距離が近い。


 左腕、というか左半身に思いっきり抱き着かれていて、なんというか、ゼロ距離である。

 おっぱいがものすごい柔らかい。

 股のあたりもぐいぐい当たっている。

 長身だから、耳元に吐息がかかるし……、なんだかハニートラップをかけられているみたいである。


「ルミエラ……、そのな? 片手を取られてたら、やりにくいから……!」

「あ、そうだね~。ゴメンゴメン」


 言われたルミエラはぱっと手を離し……、今度は背中側に移動し、俺の両肩に手をかけた。そしてそのまま体を預けてくる。

 おっぱいがものすごい柔らかい。

 股のあたりも以下略。


「ルミッ……! ちょ、ちょっと……、」

「ん~? どうかしたのリョーチン」

「どうかしたのはこっちのセリフだ! お、お前……、何があったんだよ!」


 ぶっちゃけ変だ。

 確かに元々、距離は近いほうだったけども……。こんな露骨に、さ、誘うみたいな感じに……。もっと言えば、性的に刺激をしてくるような感じではなかったような……。


「ふぅ……。ルミエラ、攻めすぎです。

 いくら貴方がリョー君に惚れてしまったからと言っても、節度というものがあるでしょう。羞恥心はないのですか?」


 俺たちの後ろから歩いてくるサリエナさんが、いつものようにクールな声でそう言った。

 メガネを理知的に動かす姿はまるで常識人ポジのようにも見えるが……、いや、節度とか羞恥心とか、本来ならアンタがつっこんでいい単語じゃないだろ。


「って……、え? ほ、惚れてる……?」

「そ。イエイ☆」


 サリエナさんの言葉に疑問を浮かべた俺を他所に、近距離でピースをかますルミエラ。

 いつもの無邪気な笑顔の中に、どことなく妖艶さが見えた。


「昨日言ったジャン~? 童貞捨てたら、アタシも抱いてって。けどサ~、それもあんまり我慢できないかもしれないからネ、アタシが。だから手っ取り早く、モーションかけとこうかなって思ってさ」


 頭をなでなでされる。

 この姿になる前からルミエラの方が上背があったのだが、今の状況だと、ちょっとしたオネショタくらいの差があるからな……。


「だからと言って、あまり飛ばしすぎないように。ほとんど初対面のようなラチカもいるのですから」

「お姉さま! 心配してくれているのですね! 感激です!」

「あぁ、ちょっと相関図が混乱するので、黙っていてもらえますかラチカ」


 元気なツインテールを抑えつつ、サリエナさんは彼女を止める。

 向こうは向こうでゼロ距離のイチャイチャが始まっていた。


「うん……、カオス」


 秩序がよく分からないことになっている。

 頭を抱えていると、サリエナさんは「ふぅ」と息を吐き、仕切り直した。


「ルミエラ。今は、『黒化』を正常に戻すための任務中でしょう? あまりリョー君を困らせないように」

「えぇ~? 別に大丈夫でショ? こんなの油断してても大丈夫だってリョーチンなら」

「それで大変なヘンタイな目に遭ったのはどこの誰でしたっけ」

「こんだけ人数が居れば、ああいう(触手な)事態からは救出できるよ~。それに、リョーチンが触手に絡めとられるのは、それはそれで見てみたいしね☆」

「まぁそこは同感ですが……」


 そこは同感なのか……。

 相変わらずよく分からないセンスを持つ二人だ。


「だいたい貴方、いつリョー君に惚れたのです?この間までの話を聞く限り、つい最近までは普通でしたよね?」

「まぁ元々そんなに嫌いでもなかったケドね~。んー……、ホラ、そこはインスピレーションっていうか、ノリ的なやつで」

「……そうですか。まぁそこは、言及はしませんが」

「そ? アリガト」


 会話している二人の姿を見る。

 まぁ……、何だかんだ、ああやって話せていて良かった。

 サリエナさんが神ではなくなったということで、両者ともに、引きずっているような感じだったからな……。

 わだかまりのようなものはあまり持たずに話せていることに、ちょっとほっとした。


「さてと……。こっちはこっちで、作業を進めとくか……」


 魔力を通して、黒化を正常に戻す。

 うん……。どうやらそこまで難しい話でもなさそうだ。

 向こうで女性陣がわちゃわちゃやっている間に、このフロア(にかい)も正常に戻せたし。


「ふぅ……」


 よっこらせと、安全を確認して腰を下ろす。

 体力的にはまだ全然大丈夫なのだが、精神的に疲れた……。まだ本日のダンジョン攻略は始まったばっかりなんだけどね!


「惚れてる……、ねぇ……」


 嬉しいんだけども。

 何で俺?

 ルミエラも、サリエナさんも、シャルエールも、ラチカも、……メアも。

 なんだって俺を、悪しからず思ってくれているのだろうか。

 こんな冴えないオッサンだというのに(今は若返ってるけど)。


 そんな温かさに。

 少しだけ魔王時代(むかし)を思い出す。


「…………、」


 ……アイツらも。

 魔力しか取り柄のない俺を、なぜか慕ってくれていたっけ。


『はっはっは! 魔王様! 今日も邪悪でいらっしゃる!』

『さぁ行きましょう魔王様!』

『世界制覇は、すぐそこまで来ていますよ!』

『そして、今日こそは――――』


 陽気な馬鹿たちを思い出す。

 メアにやられ散り散りになった魔王軍。アイツら……、どこで何してんのかな……。

 野垂れ死んでなければいいけどなぁ。


「ちょっとリョーチ~ン? そんなところでサボってないでよ~?」

「安心しろー。もうとっくに、このフロアは終わってるからー」

「ありゃマジだ」


 さてさて。

 昔を懐かしむのは置いておいて、今は今の仲間たちと進むとするか。


 俺は腰を上げて、三人の元に戻る。


 不思議と。

 気持ちは安定した気がした。






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