メイ・サイオウ
私が半人半鬼になる前はキョコウ村の港で入港管理を行う仕事をしていた。名前はメイ・サイオウだったが近いうちにファミリーネームが変わる予定だった。隣町のある男性と近々結婚する予定だったのだ。周りからは少し早すぎると言われたがそれでも私は構わなかった。愛する人と結ばれて幸せに暮らす、その幸せがもうすぐ来ると……無邪気にそう信じていた。信じるまでもなくそれがすぐそこまで待っていた。そのはずだった。
でも結局私の所には幸せが来なかった。結婚式まで一週間前、仕事から帰る途中、村に吸血鬼が入ってきたとの情報があった。もちろん私は帰りを急いだが運が悪かった……もしくは幸せすぎてバチが当たったのだろう、曲がり角で吸血鬼に出くわしてしまった。吸血鬼は私を見て驚いてしまったらしく反射的に私の左腕に噛み付いた。その瞬間、私の意識は消えたのだ。
目覚めた時、私は何故か村の外にある森の中にいた。そして私の姿は吸血鬼と人間のちょうど中間のような姿になっていたのである。私はあの時、本気で吸血鬼になったのかと思った。でも私にはまだ意識がある。だから私は村に帰った。
結論から言うと私は村に帰ったことを後悔した。最初っからメイなんて人間は存在しなかったと思えるくらいに素直に消えていればよかった。村にやってきた私を待っていたのは家族でも友人でもなく吸血鬼が襲来したという警報、私がどんなに叫んでも追いかけてくるハンターにとっては吸血鬼のうめき声でしかなく、故郷なのに命からがら脱出するしかなかった。
私は唯一の望みと考えて隣町の婚約者の元を訪れた。故郷での事があったので今度は誰にも悟られぬようにこっそりとだ。婚約者は私のことに気がついてくれた。受け入れると言ってくれた。だけど唇は震えているし目は私のことを見ていない、心の中では私を避けていた。だから私は彼と一緒にいることも諦めた。
彼から去るその帰り道、吸血鬼がこの町に入り込んだとの警報がなった。誰かに姿を見られてしまったのか?それとも彼がハンターを呼んだのか?なんて縁起でもない事を考えていたらそこには吸血鬼の行列だった。吸血鬼がウジャウジャ入り込んできている。
そう、私がフォンに初めて会ったのはこの時だった。全てを失って空虚になっていたこの私を埋めてくれたのは彼だった。私は彼についていった。この姿で暮らす方法を教えてくれた。いつしか私は昔の男のことを忘れて彼のことを思うようになってきた。




