写導戦隊カゲレンジャー16(後日談)
『写導戦隊カゲレンジャー』16
・後日談(カゲレンジャー達の旅立ち)
闇光師団と共同生活を送る事となった人間社会。ボン・ノワール、ブラック・ガイ、ダーク・ソウル、ジョンノ・ダルク、オドゥン・クリムジャは怪人のままの姿で暮らす事にした。最初の頃は怖がられたものの、カゲレンジャー達のお陰で次第に受け入れられていった。
ノワールの下で働く事となったカイトはホールで接客をしていた。ノワールが調理を担当し、料理を出していた。
「カイトさーん!八番卓のパエリア出来たわよー!」
「はいよー!」
「マザー!五番卓、海鮮丼ですー!」
「オーナーとお呼び!」
「ノワール!パエリアの注文サイズが大盛だったぞ!これは普通盛だ!」
「だからオーナーとお呼び!って、あっ!しまった!ごめんなさい!」
「俺から謝っておいた!」
「ありがとう!ごめんねー!」
「良いって事よー!」
ノワールの店は朝九時から二十二時までの営業だが、十六時から十八時までは休憩時間でまかないを出していた。
「カイトさん。まかないは何が良いかしら?」
「そうだなー……蛸の唐揚げかな」
「分かったわー。ちょっと待っててねー」
ノワールは調理に取り掛かった。カイトはその様子を後ろから見ていた。
「何?」
「いや、お前、蛸なのに躊躇い無く蛸を調理するんだなって思って」
「共食いくらいするわよー?っていうか、海鮮料理は魚介類の方が味を分かってるものよ」
「そういうもんか」
「そういうものよ」
暫くして蛸の唐揚げが出てきた。
「おぉ、美味そう」
「どうぞ召し上がれ」
「頂きます」
カイトは蛸の唐揚げを食べた。
「美味い!」
「良かったらこのスパイス使ってみてー?ちょっとした味変に」
「おう。ありがとな。うん、これは良い!美味いぞ!ノワール!」
「だからオーナーとお呼び……まぁ良いか。カイトさんなら」
「マザー。明日の豊洲市場は如何されますか?」
「そうねぇ……鮪と蟹が良いのがあればって感じかしら。ギリギリまで粘ってね?」
「畏まりました」
「蟹かぁ。今の冬のこの時期だと美味そうだな」
「…………」
「ん?どうした?ノワール」
「いや、蟹の戦士なのに蟹を食べるのねって思って」
「蟹だって共食いくらいするぞー?ってか俺、人間だし」
「そういうもの?」
「そういうもんだ」
カイトはノワール一派と仲良く暮らしたのだった。
ブラックは最初、家庭菜園程度に果物を栽培していた。コンとミトリが様子を見に来ると、果物を振舞った。これがまた美味しく、すぐに商品化しようという流れになった。
「そんなに美味いか?」
「美味いぞー?」
「甘いだけじゃなくて、酸っぱい物もあるのはかなり利点だと思う」
「酸っぱいのは失敗だと思ってたんだが……」
「酸っぱい林檎はアップルパイとアップルティーに最適よ?」
「そうなのか」
「そうだぞー?この世に失敗なんて無い。失敗は発明の母とも言うしなー」
コンとミトリの言葉を真に受けて、いざ販売してみるとこれがとても良く売れた。コンとミトリは自分達が言い出した事だから、と農業を手伝う事になった。
「悪いな。手伝ってもらっちゃって」
「良いんだよー。どうせ今、俺達はニートだしー」
「忍者でなくなったらそれは辛いな……」
「まぁ良いのよ。今が楽しければ」
「後、元々、影の里では農作業してたしなー。それは任せろー」
「それに今はフルーツジュースが欲しいのよね」
「ん?何でだ?」
「そろそろお腹の子がね……」
「……あっ!そういう事か!何で早く言わないんだ!?」
「え?何で?」
「安静にしてろ!赤ちゃんがいるんだろう!?」
「でも少しは運動した方がってお医者さんが……」
「馬鹿っ!それは散歩とかその程度の話だ!そこに座ってろ!」
「だけどタダで居させてもらってるし……」
「そんな細かい事はどうでも良い!今は自分と子供の事を考えろ!」
「わ、分かったわよ……」
十月十日後、ミトリは子を産んだ。男の子だった。名前は影人と命名した。育児をしつつ農作業をするコンとミトリ、ブラックの所へ、ダークとダルクがやって来た。
「やぁ。ブラック」
「おう。ダークにダルク」
「あれ?コン君にミトリ君?いたんだ?」
「えぇ。ここでお手伝いさせてもらってるわ」
「そうかい」
「お前達、元気そうで何よりだ。景気はどうだ?」
「まぁそこそこだな。何か用か?」
「いや、先週出た雑誌に君の農園の記事が出てたんでね。お祝いにウチで育成したお肉と」
「俺の所で作ったイナゴの佃煮と蜂蜜をお祝いに持ってきた」
「おう。すまんな」
「わー。蜂蜜だー」
「美味しそうね」
「でもコン、ミトリ、赤ちゃんには蜂蜜は厳禁だからな?」
「分かってるわよ。それくらい」
「良かった……」
「あー、何かごめんな?ややこしい物持ってきちゃって……」
「良いよー。別にー。そもそも居るって知らなかったんだろー?」
「まぁそうなんだが……」
「ささ、お茶でもどうぞ?」
「あ、悪いねー」
一同は作業を一旦止め、お茶をした。ダークは影人に夢中で遊んであげていた。
「あ~!可愛いでちゅね~!」
「アイツー、あんなキャラだったのかー」
「割と緩いぞ?アイツは」
「それで?貴方達の景気はどう?」
「お陰様で上々だな。なぁ?ダーク?」
「あら~!ちいちゃいお手てでちゅね~!」
「おーい?聞いてるのか?」
「え?何?」
「お前んとこの景気はどうだ?って話」
「あぁ、大分良いよー。んまぁ~!ぷっくりほっぺ~!」
四人をそっちのけで影人と遊ぶダークを他所に、一同は楽しい時間を過ごした。
無一郎は次にまた闇光師団のような輩が現れた時の為に、自分の武術を警察や自衛隊、各国の軍隊に享受していた。
「よし!今日はここまで!」
「押忍っ!」
門下生一同が掃除を始める中、修二がタオルとスポーツドリンクを持って無一郎の下へやって来た。
「お疲れ様です。先生」
「おう。修二か」
「良かったら、これ……」
「おっ、悪いな」
無一郎はスポーツドリンクを一口飲んだ。
「先生。お体は大丈夫ですか?」
「何でだ?」
「だってもう今年で還暦でしょう?体力的に大丈夫なのかなって心配で……」
「何を言ってる。これくらい屁でもない。ほれ」
無一郎はその場でバク宙をした。修二はそれを見て驚いた。
「うわっ!?」
「あれだけ動いてもこれだけ体が動く。俺は普通の鍛え方をしてないんだよ」
「だからってそんな体に鞭打つような事は止めて下さい!こっちの心臓が持ちません!」
「え?あぁ、悪かった」
「全く……相変わらず先生は凄いですね」
「はっはっは!生涯現役だ!」
普段ポーカーフェイスな無一郎が初めて門下生の前で笑顔を見せた。それを見て門下生達はワラワラと無一郎の下へと集まって来た。
「な、何だ何だ?」
「先生。今、笑いましたよね?」
「え?あ、そう、だった、かな……?」
「写真撮りましょう!写真!」
「え?何でだ?」
「先生、いつもムッとした顔でしか写真に写らないじゃないですか。たまには笑顔の一つくらい撮っておきましょうよ!」
「え、いいよ。そんなの……」
「良いから良いから!ホラ!修二!三脚!」
「おう!」
修二は三脚を用意し、カメラをセットして皆は無一郎を囲んだ。
「何だよ……?止めろよ……?」
「とか何とか言っちゃって~!先生、口角が上がってますよ?」
「ムッ……!常に気を引き締めておかないと戦士として、忍者としては半人前……!」
「良いじゃないですか!この瞬間くらい!」
「……フフッ。そうだな」
「じゃあ撮りますよー!」
一同は写真を撮った。その写真には、笑顔の門下生に囲まれた、笑顔の無一郎が写っていた。
一方、腕太郎とホエルは一冊の本を出版した。「写導戦隊カゲレンジャー伝説」というタイトルの本を。闇光師団が火星と金星の滅亡を招き、地球にも手を伸ばした時、太陽神と月神が人間にカゲレンジャーの力を授け、影の里を作った。封印された闇光師団が三千年の時を経て蘇り。怪事件を起こした事を綴った物で、今は闇光師団と仲良く暮らしているという締め括りで終わる自伝だった。これが世界で大ヒットし、二人は様々な所に呼ばれて講演会をした。
今日もまた、講演会を終えて腕太郎は控え室でネクタイを緩めてソファにドッカリと座った。
「ふぅ~……」
「どうした?腕太郎」
「いや~……いつまで経っても慣れないからさぁ~……」
「あの戦いからもう七年だぞ?お前も二十歳なんだ。これくらいやれる体力を付けておけ」
「いや、体力というか精神力がね……?」
「大勢の人に賞賛されてるんだ。少なくとも嬉しいだろう?」
「賞賛……うーん……」
「何だ?賞賛される事は苦手か?」
「いや、嬉しいけど……その為に戦ってきた訳じゃないし……と、思って」
「……お前は立派な忍者だな。それで良い。決して驕るんじゃないぞ?」
「その意識は無かったけど……ありがとう、父さん」
「おう。今日は折角だし、一杯やってくか?」
「そうだね。母さんも呼ぼう」
「そうしよう」
ホエルはスマートフォンを取り出すと、腕太郎の母親と連絡を取り、三人で近所の居酒屋で夜を明かした。
クリムジャはクリムジャでカウンセリングの仕事をして「ここで全て吐き出せばスッキリする!」と毎日来る患者を相手に、その概念の闇を食べて生きていた。しかし完全に心の闇を吸い取る訳ではなく、一部を食べるだけに留めていた。そこへカイトがやって来た。
「失礼しまーす」
「悪いが、今は休憩時間……あ、何だ。カイトか」
「よう。クリムジャ」
「お前も我に悩みごとの相談か?」
「いや、どうしてるかなー?と思って。順調そうだな」
「お陰様でな」
「ここの口コミ良いぞ?スッキリするって」
「そうか。それは良かった」
「でもスッキリするって言ってる割にはリピーターが多いみたいだが……?」
「あぁ、その事か」
「まさか、まだ地球制服を企んで……?」
「違う違う。そうじゃない。あまり人から悪い部分を吸い取ってしまうと、我の食事が出来なくなるからな」
「そうか。まぁ、それは仕方ないか。お前も生きる為だからな」
「それに人間というのは我が闇を作らなくても勝手に病んでいく生き物だからな。勝手に食料が増えていくんだ」
「世知辛い世の中だなぁ」
「後、人間は危険な生き物だ」
「どういう事だ?」
「最初の数年で気付いたが、完全に闇を吸い取ってしまうと、人間は暴走する。自分のやってる事だけが正義で、悪が何なのか分からなくなってしまうみたいだからな。一生病まずに、後悔も反省もしない邪念の無い善意と言う名の悪意だけが残る。それはそれで困る」
「人間に悪は多少必要という事か……」
「そういう事だ」
クリムジャはそれからも微量の心の闇のエネルギーを摂取しつつ生き続けた。
それから数十年後、無一郎は誕生日の翌日に亡くなった。丁度百歳だった。無一郎の死に対し、国は盛大に葬式を行おうとしたが、生前の無一郎の希望で、質素な家族葬的な感じで葬式をやってほしいとの事だったので、影の里の一同と闇光師団のメンバーで葬式は行われた。ホエルは八十前半、カイト、コン、ミトリも還暦を越え、腕太郎ももうすっかりオジサンになっていた。通夜の席でカイトは涙を流し、コンとミトリが慰めていた。一方腕太郎は逆に冷静に無一郎の顔を撫でた。喪主はホエルとなった。そして弔辞を読んだのは腕太郎だった。一番お世話になった人物という事で自ら進んで名乗り出た。
「取田無一郎様。貴方の突然の悲報に接し、驚いております。残されたご家族の皆様の……いや、らしくないな。止め止め!こんな暗い葬式をオッチャンは望んでないだろう!無一郎のオッチャン!長い間世話になったな!今じゃあ俺ももうすぐ、あの頃のオッチャンと同じ歳になる。オッチャンには滅茶滅茶世話になったな!色々迷惑を掛けたけど、最後まで俺の事を孫のように扱ってくれてありがとな!俺達もいずれはそっちに行く!向こうで、俺達が大好きだったオッチャンのカレー作って待っててくれよな!じゃあな!無一郎のオッチャン!犬神腕太郎より!」
腕太郎は笑いながら自然と涙が溢れ、最後まで噛まずにアドリブで弔辞を読んだ。その後、火葬をし、無一郎は骨になった。墓に埋葬された無一郎。何となくだが、腕太郎には「いつまでも元気でな」という無一郎の声が聞こえてきたような気がした。影の里の者は先祖代々、全員が同じ墓に入るので、いずれは自分達も、と五人は思った。
それから更に数十年後、今度はホエルが、続いてカイト、コン、ミトリも亡くなった。連続して亡くなった彼らも、無一郎の時と同様に影の里と闇光師団のメンバーのみの葬儀を行った。その頃には腕太郎はもうお爺ちゃんの歳になっており、体力的に限界だった。そこに闇光師団のメンバーが手伝いに来て、何とか弔辞を読む事が出来た。
やがて、腕太郎の番になった。喪主は影人で、何かと世話になった腕太郎に感謝の言葉を掛け、こうしてカゲレンジャーの六人は一緒の墓に入る事となった。
カゲレンジャーが全員天国に旅立った後、カゲマルはある時消滅した。そして数百年後、クリムジャ、ノワール、ブラック、ダーク、ダルクの下へカゲマルが現れた。クリムジャ達は待ち合わせをして集まった。
「これは一体何だ……?」
「カゲマル……カゲレンジャーになる為の武器、ですね……」
「そんなのは見れば分かる。何で我らの手に……?」
そう話していると、突如目の前が真っ白になった。目を開けると、そこには死んだ筈のカゲレンジャーの一同がいた。
「か、カゲレンジャー!?」
カゲレンジャー達はクリムジャ達に語り掛けた。
「クリムジャ」
「ノワール」
「ブラックー」
「ダーク」
「ダルク」
「お前達、死んだ筈じゃ……!?」
「俺達の魂は、そのカゲマルの中にある」
「アタシ達は一つ、貴方達に頼みたい事があって現れたの」
「頼みたい事って?」
「もうすぐ、かつてのお前らみたいな、この星を乗っ取ろうとする奴らがやって来るー」
「それを止める為に、カゲレンジャーになってほしいんだ」
「わ、我らが……!?」
「そうだ。お前達がカゲレンジャーになるんだ」
「そんな……!?だ、だって私達は闇光師団なのよ!?悪い奴なのよ!?」
「今は違うだろう?今はもう立派な、地球に生きる唯一無二の生き物だ」
「……で、でも……!」
「何。殺せと言ってる訳じゃない。また俺達やお前達みたいに和解してくれと思ってるんだ」
「……出来るかな……?」
「出来るさ!自信を持て!」
「……分かった!お前達の意思は、我らが受け継ぐ!」
「頼んだぞ!皆!」
闇光師団は「応っ」と答えた。カゲレンジャー達は変身を解いて最後にクリムジャ達に微笑みながらカゲマルの中に吸い込まれた。
クリムジャ達はカゲマルを手に都庁の屋上に立った。そこへ遥か宇宙の彼方からクリムジャ達と似たような連中が現れた。
「はーはっはっは!これからは我らダークブラックシャドー団がこの星を闇に包む!」
そしてクリムジャ、ノワール、ブラック、ダーク、ダルクはカゲマルを手に取り、立ち向かっていった。
「皆、行くぞ!シャドウ変化!」
今ここに、新たなる伝説の一ページが刻まれる事となったが、それはまた別の物語である……




