写導戦隊カゲレンジャー1
『写導戦隊カゲレンジャー』1
第一忍法「さらば、忍びの里」
日本の山の奥地、忍びの里『影の里』。そこではいつか訪れるであろう魔王軍団『闇光師団』の復活の為に何代も忍者の戦隊を継がせてきた。そして影の里では様々な術の師範代がこの度、新たに戦隊のチームを組ませる事になった。影の里の族長『影野ミコト』は任命式を行った。
「第千代目、カゲレッド。剣術師範、艦鎖カイト(かんさかいと)」
「はい!」
「同代、カゲピンク。弓術師範、羽銅ミトリ(ばどうみとり)」
「はい」
「同代、カゲイエロー手裏剣術師範、穂楠コン(ほくすこん)」
「はーい」
「同代、カゲブルー。棒術師範、神山ホエル」
「はい」
「同代、カゲグリーン。合気術師範。取田無一郎」
「はっ」
「君達を新たな写導戦隊カゲレンジャーとして任命する」
一同は頭を下げた。そこにイライラした様子で遠くから見ている少年がいた。
「何で親父なんだ……?俺だって、もう立派な忍者なのに……!」
その少年の下へ一人の女性が現れた。
「腕太郎?お父さんがカゲブルーになるの、そんなに嫌?」
「お袋!だってそうだろ!?俺の方が若いし、技術だって親父よりは上手い!俺が成るべきだった!違うか!?」
「……その驕りがあるところが、選ばれなかった理由よ」
「あ?」
「さ、お祝いのご飯の支度をしましょう?手伝って?」
「嫌だね」
「あっそ。じゃあ今日はご飯は抜きね」
「えぇ!?」
「こんなおめでたい事を素直に喜べない子にはご飯はありませーん」
「……分ぁったよ!手伝えば良いんだろ!?手伝えば!」
「最初からそう言いなさい」
「五月蠅ぇババァ!」
そしてブツブツと文句を言いつつ準備を手伝った腕太郎。里の者達と一緒に腕太郎は料理を広間に並べ終え、宴が始まった。里の者達が酒を皆の盃に注いでいき、ミコトが乾杯の音頭を取った。皆は大いに酒を飲み、飯を喰らった。
「おーい、腕太郎!」
「何だよ?カイト兄ちゃん」
「お前、いじけてんじゃないだろうな~?」
「はっ!?べ、別にいじけてなんかねぇし!」
「嘘仰い。顔に出てるぞ~?」
「頬を突くなよ!ミトリ姉ちゃん!」
「分かるぞー、少年ー。女の子に撫でられたら照れちゃうもんなー?」
「んな訳あるかい!コンの兄貴こそミトリ姉ちゃんにホの字だろ!」
「お前は本当に昔からすぐ顔に出るなぁ」
「止めてくれよ無一郎のオッチャン!これでももう大人だい!」
「……そういう所だぞ。お前がブルーに選ばれなかった理由は」
「あ?何だよ。親父?」
「お前はすぐ感情的になる。忍者たる者、常に冷静でなければならない」
「じゃあ兄ちゃんや姉ちゃん、オッチャンはどうなんだよ!?こんなに酒に溺れちゃって、ダル絡みしてきてさぁ!」
「本当に酔ってると思うか?」
「あ?そうだろ?」
「よし。じゃあ皆、外に出てくれ」
一同はゾロゾロと外に出て、ホエルはいくつか巻き藁を準備した。
「よし。カイト。切ってみてくれ」
「?あぁ、分かった」
カイトはさっきまでのほろ酔い気分だったのが一気に顔色が変わり、目付きが鋭くなり、日本刀を構えた。かと思ったその瞬間「チン……」と刀は音を立てた。その後、カイトはクルリと回り「これで良いか?」と言った。「あぁ」とホエルが答えると、意味が分からず腕太郎は首を傾げた。するとホエルは「フッ」とカイトの前にあった藁に息を吹き掛けると巻き藁は斜めに切られた状態で崩れ落ちた。
「なっ……!?いつ切ったんだ!?」
「次、ミトリちゃん」
「はい」
ミトリの目の前には木に結ばれた五体のユラユラと動く巻き藁があった。
「射貫いてくれ」
「分かりました」
ミトリは一気に五本の矢を取り、ユラユラと動く巻き藁を見極め、一斉放射した。すると五本の矢はそれぞれ五体の巻き藁を射抜いた。
「す、凄ぇ……!」
「次、コン」
「もうやったよ」
コンは欠伸を掻きながら酒を飲み続けていた。「えっ?」とまた首を傾げる腕太郎はホエルに指差され、ミトリが射抜いた巻き藁を見ると、ミトリの矢のすぐ隣に手裏剣が刺さっていた。
「い、いつの間に……!?」
「次、無一郎さん」
「あぁ」
無一郎は巻き藁五体の前に立った。ホエルが「右!左、後ろ!下!上!全体!」と叫ぶと、無一郎は全て正面から掌底を巻き藁に当てた。するとホエルが言った通りの場所がそれぞれ破壊された。
「何……だと……!?」
「最後は俺がやろう」
「だー!もう良い!もう良いから!分かったよ!俺はまだまだ弱い!これで良いか!?」
「分かったなら良い。これが本当の忍者だ。お前も強くなれ」
「……分かったよ」
いじけて里の端にある川に向かい、石をポチャン、ポチャンと投げている腕太郎。するとそこへ母親がやってきた。
「ご飯、食べないの?」
「いらない……」
「お前は若い頃のお父さんによく似てるねぇ」
「似てる?」
「そう。すぐ感情的になって、いじける。よく似てるわぁ」
「親父が、感情的でいじける……?あの、親父が……?」
「うん。とってもよく似てる。きっと貴方も、お父さんみたいな立派な忍者に成れるわ」
「……頑張る」
「そういう頑張り屋なところもお父さんによく似てる」
「何でもかんでも親父に似てる、親父に似てるって言うな!」
「腕太郎……」
「俺は親父じゃねぇ!俺は俺だ!俺らしく、強くなる!」
「そうよ、腕太郎。頑張りなさい!」
「言われなくても!」
そうして宴会場に戻り、母親と腕太郎は食事を楽しんだ。
一方その頃、影の里の山の奥深くに存在する祠の中、運命が来た。魔王軍団『闇光師団』が封印された岩が、長年の水の滴りで壊れ掛けていたのだった。この水は只の水ではない。聖水で、常に掛け続けていなければ封印が解かれてしまう。だから封印はもうリミットを迎えていたのだ。
「やっとこの時が来た……!」
「三千年、閉じ込められてきた我々が、遂に目覚める時が来たのだ……!」
「行こう、友たち……!今こそ、闇という光で、世界を包み込むのだ!」
「応っ!」
祠の岩は壊れ、地震が起こった。影の里はすぐに異変に気付き、カイト、ミトリ、コン、無一郎、ホエルは馬に飛び乗り祠に向かった。腕太郎も馬に飛び乗り、皆を追った。
遂に封印は解かれ、二十体の闇光師団の魔王と多くの下っ端が背伸びをしていた。
「やっと出てこれたわぁ……!」
「もう暫く寝るのは良いかな~」
「また闇を迎えようぜぇ!」
「あぁ!」
そこへ六人が着いた。
「待て!」
闇光師団が振り返ると、カイト、ミトリ、コン、ホエル、無一郎がそこに居た。
「悪逆非道の魔王軍団『闇光師団』!俺達がお前らを成敗する!」
「何を小癪な!テメェら!やっちまうぞ!」
闇光師団は「おーっ!」と武器を振り上げた。
「皆、行くぞ!」
カイトがそう言うと「応っ!」と四人が答えた。一同は崖を降り、日本刀を構えて戦った。雑魚を倒していく中、ホエルは親玉の『オドゥン・クリムジャ』に向かって行った。しかし軽く流されてしまい、吹き飛ばされた。
「ぐわっ!?」
「何だ?この程度か?つまらん!」
クリムジャが刃をホエルに振り翳すと、そこへ「待てー!」と叫びながら六尺棒を構えて腕太郎が上から振ってきた。クリムジャは頭を殴られ、仰け反った。
「腕太郎!?」
「親父!俺も戦う!」
「逃げろ!お前じゃ無理だ!」
「そんなのやってみなきゃ分からない!でやぁー!」
腕太郎が再び向かって行くと、クリムジャはいとも容易く腕太郎を吹き飛ばした。
「雑魚が出しゃばるな!死ね!」
クリムジャは刃を輝かせ、ビームを腕太郎に放った。
「腕太郎!」
ホエルは腕太郎を庇い、攻撃を諸に喰らい、その場に倒れた。
「親父!?」
「腕太郎……!大丈夫か……!?」
「俺なんかより、親父が!」
「ホエル兄さん!」
「ホエルさん!」
「ホエルの兄貴!」
「ホエル君!」
四人はホエルの所に駆け寄った。
「腕太郎……!今日から、カゲブルーは、お前だ……!」
「何言ってんだよ!?親父!?」
「何となく分かってたんだ……!俺は、主人公には成れない……!カゲレンジャーという物語は、お前が主人公だ!」
「親父!」
「母さんを、宜しく頼む……!」
ホエルは倒れた。
「親父!?親父ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」
泣き叫ぶ腕太郎。それを見て闇光師団の一同は六人を見て嘲笑っていた。
「何だ。大した事無ぇ奴らだぜ」
「拍子抜け~」
「私達を封印した初代忍者はもっと手強かったんだけどねぇ」
腕太郎はゆっくりと立ち上がった。
「貴様ら……許さねぇ……!」
「腕太郎!感情的になるな!」
「いいや、カイト兄ちゃん……俺は今、最高にクールだぜ!」
そう言うと、突如祠から光の球がやって来て闇光師団の連中を吹き飛ばし、それが五筋の光に分かれて五人の下に突き刺さり、五本の日本刀の姿に変わった。
「これは……!?」
「これは、伝説の刃『カゲマル』!」
「これがあれば、アイツらと同等に戦えるわ!」
「よし!行くぜ皆!」
腕太郎がそう言うと、一同は「よっしゃ!」とカゲマルに触れた。
「ラーイト!アーップ!」
するとカゲマルから眩い光が放たれた。そして五人の背後に何処からともなく垂れ幕が現れた。五人は
「シャドウ変化!」
と叫び、光に向かって影絵を手で作り、写した。カイトは蟹、ミトリは鳥、コンは狐、腕太郎は犬、無一郎は亀。するとその影が飛び出て、それぞれの動物がそれぞれの服の上に被さり、スーツが着用された。五人はカゲマルを抜いて背中に刺し、ホエルを抱えて跳んで崖の上に立った。ホエルをそっと地面に置き、振り返った。
「何だ!?」
「カゲブルー!ドッグ!」
「カゲレッド!キャンサー!」
「カゲピンク!バード!」
「カゲイエロー!フォックス!」
「カゲグリーン!タートル!」
「人々を惑わす悪鬼妖魔!俺達が成敗致す!」
「何だと!?」
「写し、導く……ライトアップ!」
再び光が五人を包んだ。
「写導戦隊!カゲレンジャー!登場!」
「しゃ、写導戦隊……?」
「カゲレンジャー!?」
「あの時我々を封印した!?」
「出陣!」
カゲレンジャーは闇光師団に向かって行った。レッド、ピンク、イエロー、グリーンは雑魚と幹部と思われる敵を相手に取り、ブルーはクリムジャに向かい、カゲマルで一閃を書いた。
「シャドウ流剣術!満月殺法!光一閃!」
眠りから覚めたばかりだからか、闇光師団の連中は本調子ではなかった様子。
「今日のところはここまでだ!皆の者、食事の時間だ!都に向かうぞ!」
「待て!逃げるな!」
「腕太郎と言ったな……覚えたぞ。その名前!次に会う時は都だ。都で会おう!」
「待てー!」
闇光師団は逃亡した。変身を解いた五人はホエルの下に駆け付けた。同時にミコトと母親がやってきた。
「皆!」
「長老様!」
「お袋!」
「お父さんは!?」
「……死んだ」
「そんな……!?」
「その代わり、俺がカゲレンジャーに選ばれたよ」
「腕太郎が!?」
「俺、親父の代わりに頑張るよ!」
「……分かったわ。お父さんの無念を晴らしなさい!」
「あぁ!」
「奴らは何処に行ったんじゃ?」
「都って言ってたな」
「って事は東京か?」
「そうに違いないわ」
「じゃあ行こう!東京へ!」
「ワシの伝手で東京に住む場所を用意しておく。すぐに東京へ向かうんじゃ!」
「はい!」
一同は東京に向かった。




