61, 髪飾り
「あっ⋯。」
「どうされました?」
横を歩いていたシャルルは、彼の右側の屋台を見て歩みを止めた。
(う~ん、屋台が多すぎてどれを見ているのかわからない⋯。)
「何か気になるのがあるのなら、寄りませんか?」
「良いの?」
「美味しいご飯を食べさせてもらったので!!」
余談だが、ハーディたちは先ほど会った屋台の店主に串焼きをたくさん貰ったからそれをお昼ご飯にした。
シャルルは少し唸ったあと、ハーディを手招きして屋台に近付いていく。
(あれ?これって⋯。)
「いらっしゃい。どんどん見ていきな!!」
「こんにちは。綺麗な髪飾りがいっぱいですね。」
「⋯。」
そこのお店は他のお店みたいに屋台ではなく、地べたにカーペットのようなものを敷いて、その上に商品を広げていた。髪留め、ボタン、ブレスレットにネックレスなどなど。同じ種類のものでも同じ意匠は無く、どれもが一点もののようだ。
年若い店主の女性はシャルルとハーディを順に見ると、快活に笑う。
「彼氏さん、恋人に贈り物かい?熱いねぇ。」
「恋人じゃない。」
「ウソでしょ?」
「本当ですよ〜。私と付き合ってるのはシャルルさんに不名誉でしょうし⋯⋯。」
「絶対にハーディが不名誉なんてことはないよ。逆に俺がハーディの不名誉になってしまう。でも、贈り物をしたいと思ったのは本当。いつものお礼に何かできないかなと思っていただけで。」
「え!?いえいえ、わざわざそんなことをしなくても大丈夫ですよ!?」
「迷惑?」
「全然!!貰えるのはすごく嬉しいですし、何かを私にあげようと思っていただけただけで、充分に嬉しいのですが」
「なら良い。」
(待って待って待って!?自分用のを見ていたわけでは無いんですね!?)
店主は自分からすると随分可愛らしいやりとりをするハーディたちを見ながら一瞬目を瞬かせたが、すぐさま笑みが深くなる。
「そういうことか⋯。すいませんね、間違えてしまって。この女の子に似合うのを選んであげようか?」
「いや、もう決めてるから。さっき偶然目に入って、それで寄ってみたんだけど⋯。」
「その子に合いそうなものが最初に目に入ったなんて、素敵じゃないか。」
「そう?」
シャルルが手に取ったのは、数種類の果物と、その果物を入れる籠を象ったバレッタだった。縁取りの中は赤や黄色といった明るい色の石がはめ込まれており、見ているだけでハーディの心はワクワクした。
(可愛いし、綺麗⋯。)
「それは銀貨3枚だよ。」
「かなり安いね。」
「いや。久しぶりに可愛いものを見たからね。オマケだよ。」
「ありがと。」
シャルルは肩からかけている鞄から貨幣を取り出すと女性に渡した。そしてハーディに近付く。
「動かないでね?」
「はひ⋯。」
(近いなぁ⋯。あ、シャルルさん。やっぱり髪の毛すごく綺麗。⋯ダメだ。無駄に意識してしまう。)
日常的に剣を握っているからか、意外とゴツゴツした彼の手が私の髪に触れる。たまに顔に触れる手の甲から、彼の温かさが伝わってくる。誕生日以外にプレゼントをもらうのも、男性から髪に触れられるのも、全て、全て、ハーディにとっては初めてで⋯。
「うん。よく似合う。」
「⋯ありがとう、ございます。」
やけに誇らしげに微笑んだシャルルが最後の覚えている記憶で、私は次に気づいたら自分の部屋のベットに座っていた。
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