55, 残党
ハーディ視点に戻ります。
「ごめん。ハーディ。苦しくなかった?」
「⋯。」
ハーディは、ゆっくりと腕の力を緩めて自分を解放するシャルルをじっと見つめた。
(シャルルさんが、鈍色の兵士さん?)
ハーディの頭の中は疑問符だらけだ。ずっと見つからなかった恩人が、目の前のシャルルで、でも、記憶の中の彼の髪は鈍色、たいして、シャルルの髪は黒色だ。髪の色を染めるなんて聞いたこと無いし、染めるにしても、なぜ黒髪なのか。
「⋯。」
「どうしたの?」
「どうして⋯⋯⋯。」
聞きたいことは山のようにあるが、ハーディは何故か、今はそれを聞くときではない気がした。
「もう、保護院は見たんですか?」
「保護院?」
「はい。子供たちがいっぱいいるところです。」
ハーディがゆっくりと立ち上がると、補助するようにシャルルも立ち上がった。
(これ、魔法かなぁ。すごい。傷とかが嘘みたいになくなってる。)
腕や脇腹、足。順番に確認するが、目に見えるところの傷はすべてなくなっているようだ。ハーディはシャルルを見上げた。
「傷、ありがとうございます。」
「いや、ハーディが気にしないで。逆に、魔法騎士団のお膝元の王都でこんな事件に巻き込まれてしまって、すまない。」
「いいえ。」
ハーディは瓦礫の上に登って、外に出ようとする。
「あ、待って。」
「?」
パサッと布の音がして、急に視界が真っ暗になった。
「このローブ着てて。その服ボロボロだから。何なら、瓦礫の上は危ないし、足場も不安定だから抱っこしようか?魔法で外傷が治っても、さっきまでの疲れが全部無くなったわけじゃないんだし。」
「瓦礫くらい大丈夫です。」
「そう?」
シャルルが心配そうに覗き込んでくる。
(すごく心配させてしまってる⋯。申し訳ないな。)
「ところで、何で保護院?」
「あそこには、まだ少ないですが、子どもがいるらしいんです。アメリアちゃんがそう言ってた。」
「アメリア?」
「信者だけど、信者じゃない人です。すごくお世話になったし、1番信用していた人。」
(私が折檻室に入ってから、大丈夫だったのかなぁ。)
「最後にあの子が向かったのが保護院だったから。」
「⋯。俺等がここに来られたのは、信者が1人、君の助けを求めたからなんだ。」
「もしかして、それって⋯。」
「なぜだぁぁぁぁぁぁぁっ」
「「!?」」
突然聞こえた叫び声に、2人は、振り返った。そこには、杖をつく男性が1人。彼は周りの騎士にも、瓦礫にも目もくれず、じっとハーディを睨んでいた。
「ハーディ。何故だ。何故!!」
「⋯っ!?」
「貴様、誰だ。教団関係者か。」
シャルルがハーディを庇うように一歩前へ出る。
(なんで、あなたがここに⋯。)
○△○
『良いかいハーディ。君はあんな野蛮な奴等を視線にいれるんじゃないよ。わかったね。あぁ、凱旋なんて煩わしい。』
『⋯、はい、わかりました。』
『ハーディ、教会に敵意を向けてはいけないよ。ここだけが、君を大切にしてくれるのだから。』
『はい。わかりました。』
『ハーディ。』
『ハーディ。』
○△○
記憶より老けてはいるものの、それだけでハーディが彼を分からなくなるはずもなかった。
13年前、助けられるまでずっと、私の教育係として存在していた男。
「教主、さま。」
ここまで読んでいただきありがとうございます。




