52, 純白の月一掃作戦
15歳の頃、一般兵だった俺が初めて関わった重要な作戦が、純白の月の一掃作戦だった。
「なんか、カルト教団らしいぞ。」
「信者が全員白いらしい。」
「決行は今夜だ。」
(⋯。純白、ね。混じり物の俺とは大違いだな。)
俺は、いつものように特に事件に関心も無く、直前まで武器の手入れをしたり、ジュース屋巡りをしたりしていた。
「おい、シャルル。今から作戦決行なのに何してやがる。」
ちなみに、グリエノールとはその頃に出会った。なんだかんだあって、自然と俺の世話係みたいなポジションに定着していて。
「おら、空間魔法のかかったポーチ。貸してやるから。」
「ありがと。」
そして夜を迎え初めてそこに入ったとき、何もかもが白いその空間に少しの恐怖を感じた。
「なんだこれ。」
「キッショ。」
周りの仲間も大体は似たような感想を抱いたらしく、鳥肌が立っただのと騒いで上官に怒られていた。
教会の修道女や神父のような服を着たのは全員捕縛。子供は保護。それが、俺等下っ端騎士団に課せられた仕事だ。
「あそこの部屋に逃げたぞ!」
「わかった。」
信者を追って扉を開こうとしたが、鍵をかけられたせいで扉が開かなかった。仕方なく魔法で壁をぶち抜いて突入した。
そこに、彼女は居たのだ。
(なんだこの子。)
真っ先に目に入ったのは、サイズの合っていない白いドレス。(後で調べてみたら、ドレスじゃなくてトゥニカって衣装だったらしい。)
頭飾りも、サイズが合っておらず頭を通り越して首飾りになっていた。
ボサボサな、長い長い金髪。小さな鼻を隠すほどに長い前髪の下から見えた、病気を疑うほど白い肌。
「⋯。」
「おい、そこの部屋は月の聖女がいるらしいぞ⋯って、まさかこいつか?」
「⋯君、大丈夫?」
声をかければ、その子の口は弧を描いた。一見、とても元気そうに見えるその仕草が、俺にはやけに痛々しくて、泣いているように見えた。
「おいで。」
自分より遥かに小さなその子は、すぐに自分の足元に歩いてきた。
「これ、飲む?フルーツジュース。ここ来る前に買ってたやつだけど⋯。オレンジジュース。美味しいよ。」
(この子は、今までどんな生活をしていたのだろう。)
グリエノールに仕事を押し付けて、作戦が終了するまでその子のお世話をした。今外に出たら残党の処理の様子とか、色々この子の精神に良くないものまで見せてしまいそうだから。
「もし良ければ、俺と一緒に捜査機関まで来てくれないかい?君が、自由になるために。」
その子を上の騎士団の人達に預けて、俺とその少女との縁は切れた。その後、功績を上げただの何だのと周囲に騒がれて、なぜか魔法騎士団に入団して、時が経つ間に、俺はすっかり彼女のことを忘れていた。
○△○
(あの子が、ハーディだったなんて。)
珍しい巡り合わせがあるものだ。
「純白の月。まだこの国で暗躍していたのか。」
その教団が危険視されている理由は、2つ。
1つ目は、子供の誘拐と暴力、その子供の奴隷売買。
小さな村にふらりと立ち寄り、状態の良い子どもを聖女候補、神父候補と言って連れ出し、国内外の奴隷商に売り飛ばす。その金を使って保護院なる、孤児の養護施設を造り、そこに入れられた子供を使って人体実験を繰り返す。
これは、その教団から家族を奪われた人が証言した内容だ。ただ、証言者があまりにも幼かったため、当時は本当だと思われていなかった。
2つ目は、他宗教への侵害行為。
本当にそのままで、他の宗教の教会を爆破する。他の宗教の信者に近づき自爆する等の残酷なテロ行為を繰り返している。これは、当時国の各地で被害が報告されていた。
一掃作戦以来は被害が見られることはなかったが。
(こんな教団の残党が居たとか、冗談でも笑えない。というか、とにかく面倒くさい。)
13年もの間、国の監視を逃れ続けてきたのだ。拠点などを見つけるのはそう簡単なことではないだろう。
「まだ近くにいるかもしれない。探してくる。」
イヴの話だと、まだ5分程度しか経っていないらしい。
(さっき会った時に、ちゃんとハーディと話していればこんなことにはならなかったかもしれない。)
ひどい後悔が頭を支配した。それと同時に、彼女がもし見つからなかったら、そんな不安が、漠然と湧き上がった。
「⋯⋯。」
(何が何でも、助け出す。)
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