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48, ひ弱な聖女

少し痛々しいことになってます。

(あれ⋯?)


ハーディは目を開いた。真っ先に目に入ったのは、壁に立てかけられた黒く光を反射する鞭。


(私、アメリアちゃんと一緒にフルーツごろごろのジュースを作ってたんだよね。それで、何で今折檻室に居るんだろう。あれ、手にも足にも鎖が⋯。)


起き上がり、周りを見回す。幸い誰も居ないが、誰かが来たらこの流れは勿論折檻だろう。


(もしかして教団から脱走してこの教団が残っていたことを憲兵さんとかに報告しようとしていたのがバレた?)


ハーディは色々考えるも 、何も分からなくなって考えることをやめた。


「あら、起きられたのですね。月の聖女様。」

「はい。」


部屋に入って来たのは、月の聖女の世話役筆頭さん。


(⋯、私、自我が死ぬかもなぁ。)


ハーディは彼女の持っていたものを見て悟った。それは、鞭の縄の部分にトゲトゲしたものが生えてるタイプと、何かの薬のようなものだった。


「なぜここに連れ込まれたか分かりますか?」

「いいえ。」

「あなたが貢ぎ物でジュースをつくり、それを保護院⋯、この教団が()()した子どもたちが住んでいる塔にあげたことです。」


(そういえば、余ったジュースをアメリアちゃんに保護院に持っていってもらったんだ。)


「一度あなたに再教育を施すことが決まりました。」

「そうですか。」


女性はその場に薬が入った瓶を置くと、鞭を構えた。


「貴女には、失望しましたよ。ハーディ。」


(するなら勝手に失望してほしいですねぇ。とか言いつつ、本格的に逃げられなくなりそうです。)


鞭がしなって、激しい音を立ててハーディの脇腹に叩きつけられた。


「⋯。」

「純白の月法典、月の聖女編その1。月の聖女は何も思うことなく幸せを享受していなさい。」


彼女は、ストレスを発散するのかのように、微笑みながら鞭をふるい続ける。



「純白の月法典、月の聖女編その⋯。」


「純白の月法典⋯。」


「純白の月法典⋯。」


止まることを知らない鞭はハーディの身体に傷をつけ続けた。ハーディは、心の中で自分を嘲笑した。


(私って、本当に馬鹿ですねぇ。何で逃げられるとか、

ジュースを作るとか、変なことをしようとしたんだろう。その結果、再教育まで始まってしまったのに。)


「月の聖女なんて、何も考えずそこに座っておけば良いのです。衣食住は保証されるんですから、十分幸せでしょう?」


(あ~ぁ。これじゃあ、幼い頃の私のほうがよほど賢かった気がしてきます。反感とか、反抗とか思うことなく受け入れて、望まれるように生きる。)


純白の月というカルト教団の、ペット、人形。


(最初は、わかっていたのに。この教団から逃げられるはずもないって。帰っても周りに迷惑がかかってしまうって。

だから、あっさりついて来たのに。)


街での充実していた日々への未練。大きく選択を間違えてしまった。そんなもの、さっさと手放せば良かった。


(アハハ、痛いなぁ。自分のせいでこんなことになってるなんて、笑えてくる。)


「⋯。」

「何が可笑しいのですか?反省が足りないようですね。仕方ありません。もう少しきつい刑にしましょう。」


彼女は瓶の蓋を開け、中の液体を鞭に振りかけた。


「これは毒です。何のかは、敢えて言いません。言い当てられたら解放してあげますよ。」


(⋯、言い当てたら、考えた罪でまた別の折檻がはじまるのでしょう。)


ハーディは八方ふさがりだなと思いながら自分めがけて空を切る鞭を目で追った。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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