36, 報告という名目の
「失礼します。」
シャルルはグリエノールを連れてその部屋へ入った。
部屋の中程まで進み、跪く。
「魔法騎士団、只今帰還しました。」
「了解した。」
部屋の中にペンと紙の擦れる音が響く。
(祝福の実のジュース、結局飲めなかったな。)
シャルルは1人頭の中で考えた。
(何であんなに寂しそうな顔をするんだろう。)
思い出すのは、凱旋のとき見たハーディの表情。
今にも泣きそうで、壊れてしまいそうで、気づけば消えてしまいそうだった。
すぐにいつもの笑顔に戻ったが、それでも、その表情がシャルルの頭にこびりついて離れない。
(何かあんな顔させるようなことをしたっけ?)
何もしていないはずだ。
確かに、魔物を討伐して、仲間を放って帰ったり色々やらかしたが、ハーディを困らせるようなことは何もしていない⋯はず、だ。
「魔法騎士団が、最近1つの店を買収したと報告があるのですが?」
「は?あ、失礼しました。」
思わず顔を上げ、部屋の主と目が合ったことで不敬をしたことを悟る。
「いいよ。顔をお上げ。ここは非公式の場だ。そうも、かしこまるで無いぞ。貴殿らもそこに腰掛けてくれ。」
「お心遣い感謝します。」
俺は立ち上がり、指示されたソファーに腰掛けた。
「もう一度問う。店を買収したとの噂は真か?」
「いいえ。身に覚えがありません。」
「じゃろうな。」
ぺンを動かしていた男が立ち上がり、目の前のソファーに座る。
「爵位に興味が無い。金にも興味が無い。肩書にも、勲章にも、昇格にも、領地にも興味が無いお前がそこまで入れ込む店とは、一体何だ?」
「⋯⋯僭越ながら申し上げますと、」
(どうせ調べているのでしょう?)
この問いかけに意味は無い。きっと、団長専属連行係のくだりまで全部調べてある。
「⋯ジュース屋さん、です。」
「⋯どうやら、調べは、偽りではないようだな。」
「主よ、だからそう申し上げておりますでしょう?」
(信じてもらえなかったんだ。)
シャルルとグリエノールは腰掛けている男の後ろで困惑気味にこちらを見る男に心の中でそっと謝罪した。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
何度も更新すみません…。




