王子の失踪
お家に到着。
あれ…… お婆様の姿が見えない。今のうちに急いで入ってしまいましょう。
それにしてもお婆様は一体どこへ?
コソコソ
コソコソ
うんやっぱりどこにも。もうお年ですものね。無理なさると体に障りますから。
では静かに中へ。
「クレーラ! 」
「あらお婆様…… 」
「何をやってるんだいクレーラ! まったく恥ずかしい真似は止しておくれよ。
近所で笑われたらどうするんだい? 」
それはもう遅い。充分近所から笑いものにされている。
お父様が爵位を返納し没落した訳ですからね。
お姉様たちも相手方から離縁され私だって婚約破棄されてるんですもの。
これ以上ないくらいに笑いものにされている。
「ただいま帰りましたお婆様」
「それで収穫は? 」
「タダではありませんでしたので頂けませんでした」
「へえ。いくらだい? 」
「晩爵は一億で…… 」
「舐めたこと抜かすんじゃないよ! そんな金あるかい! 」
うわ怖い。もうだから断ったのに。いちいち報告しろってうるさいんだから。
「あの…… ちなみにおいくらならよろしのでしょうか? 」
いつだってタダな訳じゃない。
今回のように金を取る輩だっているでしょう。
そんな時のために目安として一応は聞いてみる。
「五千までなら出せるかね。でもそれ以上は出すつもりはないよ」
「五千万ですか? それはすごい! 」
「いや…… 五千だ」
「はい? 」
「もうこの子は…… 五千バロンしか出す気ないからね」
そうそう。この国の通貨はバロン。
千バロンは安いチョコが十個買えるぐらい。
高いチョコになると二個も買えない。
うわ…… そこまでケチなの?
「それで何かありましたか? 」
帰り道に町の者が何だかそわそわ噂話をしていたので念のため。
「ああそうだ。どうも王子が失踪したらしい。噂になってるよ」
「何を言ってるんですかお婆様? 王子なら…… 」
まずい。つい口が滑りそうになる。
プレゼーヌが首を振っている。
「ああん? あんた王子の行方知ってるのかい? 」
「いいえまさか。ちなみにお婆様は王子を見つけたらどうします? 」
本人を目の前に恐怖の質問をしてみる。
「ああ見つけたらただじゃ置かない! 恨みは晴らせてもらうよ!
ははは! もちろん冗談だよ」
ちっとも冗談に聞こえないですけどね。
「見つけたらすぐにでも王子には結婚してもらうよ。それまで離さない」
どうやら私と結婚させようとしてるみたい。
その言い方ではお婆様自らのようで恐ろしい。
「分かりました。探してみます」
噂が広がりだしたのは今日の昼頃。
夕方にはほぼ全員に行き渡っただろうと。
どうやら王子が言うように動き出したらしい。
この噂も恐らくその陰謀に加担してる者が流したに違いない。
王子を信じればそう言うことになる。
部屋に戻る。
「プレゼーヌ。さあ今日も一緒に寝ましょうね」
「止めろ! 私は空き部屋で寝る! 」
恥ずかしがる王子。
「ごめんなさい。空き部屋にはお客様がお泊りになってるんです」
さっきメイドから話を。
何でもお父様の昔からのご友人だとかで先ほどから談笑されている。
今朝お姿を見せた時にはショックから立ち直っていたよう。
もうご友人をお呼びになるなんて完全復活を遂げたと言っていいでしょう。
「そうかそれはちょうどいい」
王子の目が煌めく。
「まさか…… 私の体をお求めになるのですか? 」
「それはお前ではないか! 何度もしつこく迫ったくせに」
王子は興奮してる?
やはり妄想して興奮が収まらないのでしょう。
「失礼な王子。王子が嫌がってるから私はあえてやってるのです」
もう王子に隠しごとをする必要はない。
「ははは…… 呆れるわ。調子に乗ってると痛い目にあうぞ」
「まさか強引に王子が? 」
「だからそんなことするものか! 疲れたから寝る! 一時間たったら起こせ!」
まったく人を奴隷か何かと勘違いしてるの?
実際は住処を提供してる恩人のはずですが。
いくら王子と言っても立場を弁えなければいけません。
「王子。我がままは許しませんよ。王子? 王子! 」
反応がない。どうやらもうすでに眠ってしまったらしい。
そうなると揺すっても起きない。もう子供なんだから。
では私も寝る準備をしますか。
シャワーを浴び匂いを纏ってから部屋へ。
続く




