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なんとなくトリップ  作者: 砂町 峰
なんとなく戦う
20/20

闘技大会においての『序盤』とは準決勝決着までの事を示す


長らくお待たせ?してしまい申し訳ないです。

明けましておめでとうございます。



・・・、待っててくれた読者様っていたのかな。





「なあ、シェヴァ・・・」

「なんですかギリム」

「うん、いや・・・わかってたぜ?わかってたけどよ」


試合待ちの控え室。

時刻は既に日暮れ前。


相変わらずな四人組―――ただしリアは覚醒済み―――が、試合の時刻を時計で確認しながらも待っていた。


ついでに空き時間を使ってシェヴァを問い詰める


「・・・お前が動かないまんま準決勝終わっちまっただろうが!」

「・・・・・まさか本当に動かないとは思わなかったがな」


そう、二人・・・主にギリムが喚くのも無理はない。

シェヴァは「序盤は動かない」の宣言通り、ついさっき終わった準決勝においてもリアの寝顔を眺め続け。結局何もしなかったのだ。

安全圏でギリムとトライドが試合をしている金属音やら爆発音などをBGMに、声援どころか視線ひとつ送ることなく、対戦相手が二人しか動かない戦闘員に倒され試合終了の合図が鳴るまで。

要は、試合終了とともに控え室へと退場するための移動まで。その場を微動だにすることはなかったのだから。

まあ普段はシェヴァの規格外を流しているギリムが、珍しく声を荒らげたのもおかしくはない。


「準決勝、終わってたんだ」

「お前もなぁ・・・・・まあいいかリアは、うん。よく寝れたか?」

「まあ、寝れた」

「あの騒音の中でよく寝れていたな」

「騒音?」


リアはリアで、準決勝が終わった事すら感知していなかったらしい。

いつも通りに無気力な発言をかます少女を、今日ばかりは咎めたいがそれをするとどっかの規格外が恐い。

半ば諦め、半ば慣れ、哀れなギリムである。


「ああ、防音の結界を張っていましたから」

「お前よぉ・・・、なんか疲れたからもういいか」


試合中は魔術を行使、もしくは剣戟の音が絶えず騒がしいものだ。

それなのに朝から延々この時間まで寝続けたリア、まあ眠り続けた理由については言及しないのがお約束だが。

眠り姫ですら飛び起きそうな爆音の中、すよすよと安らかだった理由はやはり過保護な規格外が元凶だった。


ああもうコイツらどうにもならん。

魔術使うんだったら戦闘に使えよ。


ギリムとトライドは内心の声を合わせて息を吐いた。

双子もかくやのタイミングだが、別に彼らは血縁者であったりはしない。

唯単に、目の前の主従に振り回された期間故である。


「おや、流石に準決勝まではきつかったですか」


今まで立って話していたのだが、もう疲労困憊と待合室の椅子に腰掛け始めた二人を観。

ここにきてようやっとシェヴァが、「ふむ」と二人を白々しく気遣った。

あくまで体裁、そんな気遣いの微量に含まれた台詞に再び苦労人達の口から息が漏れる。

ここでその胡散臭さを指摘しないのも、経験からの哀しき性である。

ギリムは本能的に、トライドは身に刻まれた経験から。


どうせこの不敵な青年は、指摘しようがしまいが反応を改めることも影響されることすらないのだ。

そんな無駄な体力は使いたくない、というのが本音である。


絵になる様子で顎に手をあて、苦労人二人を検分するシェヴァの腕の中で、珍しく、本当に珍しくリアが彼らに視線をあてていたのだが。

俯くか、瞼を閉じて頭の中を休める二人は気づかなかった。


「・・・次の相手、今までとはケタ違いって話だからな。体力温存しとかねえと・・・」

「私も流石に、な。時間まで少し休ませてもらおう」


次の相手は学内でも「規格外」と知れ渡る、言わば「元祖・規格外」。

目の前の二人に敵うかどうかはさておき、ギリムとトライドからしたら強敵そのものだった。

準決勝までさんざん使い走りにされ、それでも言われていたとおりに敵に備えようとする二人は律儀なものだ。

だからシェヴァに遣われるのだが。


そして、そんな二人を哀れんだのかどうかはわからないが。


「なら、疲労回復やってあげようか」

「「・・・は?」」


リアが口を開いて、そこから出た言葉に揃って目を瞬いた。

「空耳か?」と何とも失礼な反応をする正直者達に眉を顰めることもせず、さも当然のことのようにリアは台詞を継いだ。


「シェヴァが無理させてたんでしょ、やってあげるよ。魔力充填くらいだけど」

「・・・り、リアがか?」

「テアドアからポーションもらったからこれも飲んでみて」


いつもその小柄な体躯を包んでいる外套にしまっていたのか、それとも影から取り出したのか。

取りあえず懐から取り出された、いかにもなポーションの入った試験管二つにギリムは驚愕、トライドは耳の調子を確かめるように耳殻を叩いた。

しかし差し出された試験管が幻ではないとわかると、首を傾げ傾げて現実を受け止め、おずおずとこぶりなガラスの容器を受け取る。


因みにテアドアのポーションの効果は折り紙付きであり、それを知っている二人はさして躊躇いもなく半透明の液体を煽った。

ギリムはともかく、トライドは毒殺を視野に入れない無鉄砲さだった。

まあそれだけ、この四人が理解はしあっているということだ。


速効性なのか、ポーションの効果を感じつつ、リアの魔術でその効果をさらに倍加されながらまごまごと視線を交わす二人に、彼女は今度こそ怪訝そうに眉を寄せた。


「何」

「・・・いや、なあ?」

「普段のあれを思うとな・・・」


違和感があり過ぎて、後に何かあるのではないか、とか。

実はリアは調子が悪いのか風邪でもひいているのではないか、だとか考えてしまう二人。

その考えを、シェヴァの感に触れないように遠まわしに遠まわしに遠まわしを重ねて彼女に伝えると。


「だってさ」


「ああそんな事」と理解したリア様(鬼畜主人)のお言葉。


「あんたらが頑張ったら私何もしなくていいし」


・・・、淡い期待を抱いた己が間違っていた。

二人はそれを深く自覚し、魔力消費、肉体疲労は完全に癒された筈が・・・、今度は別種の疲労に襲われた。


「・・・うん、そうだよな」

「こういう奴だと忘れていた・・・」


帝国の名門貴族と皇国の皇帝の弟殿下に「あんたら」というのも、無意識に馬車馬の如く遣っておきながらまた再利用するのも。

ある意味でリアらしい、シェヴァ(元祖鬼畜)の主たる思考回路だった。


しかし―――


回復はしたが、とある少女リアからの精神的ダメージにより再び腰をおろす二人に思い出したような追撃は止まなかった。

ああそうでした、とさも言い忘れていたかのように。


「決勝は私もやりますから」


にっこり、と男でも赤面するような晴れ晴れとした。女殺しの笑みを浮かべたシェヴァの宣言。

ギリムはその今更に過ぎる発言に、実に、実に理性的に。

しかし如何ばかりか、何かしらの鬱憤が漏れ出してしまうことを避けられずに。


心からの指摘を見舞った。

恐らくはトライドも心の中で思ったことだろうが。


「・・・お前の序盤は準決勝までなのかよ!」

「決勝が本番、当たり前です」


目の前の青年の美貌が爽やかに笑んで言えば、大抵の女性はそれを真理だと思うだろう。

だが忘れるなかれ、ギリムは男だった。

というより、順応性が高すぎるせいで色々と苦労を抱え込み、ついでにシェヴァの綺羅綺羅しい容姿にも慣れたのだが。

――「決勝が本番、準決勝までが序盤」

生憎とギリムの脳内にはそんな常識が植えつけられることはなく、反博の意志を見せる彼に、シェヴァの止め。


「二人で倒せた相手ですよ?私が動いたら、開始と終了の合図が同時になります」


それではつまらないでしょう?


少女を何よりも溺愛する、常識から外れるどころか界を隔てているシェヴァ(過保護変態異常識)の言葉にギリム敗退、ついでに沈没。


「・・・・・何も言えないところが。ああそうだこういう奴なんだよ!」

「ギリム、諦めろ」


あわや男泣きの体に入るギリムの肩を、この室内での唯一の同士であるトライドの手が、慰めるように叩いた。



果たして、別の意味で戦意喪失の憂き目に遭いかけている二人の決勝やいかに。

そして、「未知数規格外」であるリアとシェヴァの主従のやる気やいかに。


それはきっともしかしたら恐らく、運命の女神すら知りえない未知の領域である。





次回、やっと決勝戦。


書き始めてはいるものの、戦闘描写に往生。

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