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最後尾の荷物持ち ~毎日の日課で最強になる~  作者: 黒銀ネルル


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第6話 黒い扉の向こう

翌朝、目を覚まして真っ先に部屋の奥の壁を見た。

黒い扉は昨日と同じ場所に立っていた。

「……あるよな」

夢じゃなかったらしい。そう思ったら、ほっとしたような、落ち着かないような、妙な気分になった。

【本日の日課】

【黒い扉の先で、魔物を3体倒す】

【難易度:D】

魔物を3体。扉の先に魔物がいると思うと落ち着かない。

触ってみると扉の表面がほんのり温かかった。生き物の肌みたいで、思わず手を引っ込めた。すると、鍵の回る音がして、扉がひとりでに開いた。

扉の向こうは石造りの回廊だった。壁に青白い灯りがともっていて、足音だけがやけに大きく響く。

「……静かだな」

ゲートの中はいつも魔物の気配でうるさかった。ここにはそれがない。俺しか知らない場所に一人で立っていると思うと、少しだけ胸が騒いだ。

十数歩進んだところで足元の影がぐらりと動いた。

奥から石でできた人形が重い足音を響かせて歩いてくる。3体。目の奥の鈍い光がまっすぐ俺を見ていた。

「でかいな」

腰の短剣を抜いて、先頭の1体と斬り結ぶ。刃は弾かれた。腕に骨まで響くような痺れが走る。

「硬っ……! ゴブリンとはわけが違うな」

それでも、肩口へ思い切り叩きつけた2撃目で、乾いた音がした。

短剣が根元から折れていた。

くるくると回った刃が床に落ちる。握っているのは柄だけだった。

「……マジかよ」

護身用に腰へぶら下げていただけの、頼りない短剣。それでも3年間、俺の唯一の武器だった。それが、石像には傷1つつけられずに終わった。

石像兵の足音が迫ってくる。

そのとき、視界に文字が浮かんだ。

【追加クエスト発生】

【回廊の台座から、剣を手に取れ】

【報酬:経験値 +200】

「台座?」

後ずさりしながら、奥へ目を凝らす。回廊の突き当たりに、小さな石の台座が見える。その上に、1本の柄が置かれていた。刀身のない、黒い柄だけの剣。

「…柄だけ?あんなもんで、どうしろって…」

文句を言いながらも、俺は台座へ向かって駆け出した。石像兵が背後で拳を振り下ろす。床が砕けて、破片が背中を叩いた。

「うおっ、危ねえ!」

滑り込むように柄を握った。

冷たい、と思った瞬間、指の間から何かが手のひらを這い上がってきて、柄の先から黒い光がすうっと伸びた。艶のない、細い黒い刃。

【神喰を獲得しました】

【ランク:EX(封印中)】

「……EX?なんだそれ」

見間違いかと思って、目をこすりもう一度画面を見るが文字は変わらなかった。

迫る腕を黒い刃で受けた。弾かれない。石の表面に、刃がわずかに食い込んでいる。

「いける」

そのまま踏み込んで、関節の継ぎ目に一閃。腕が床に落ちて砕けた。

「次!」

残る2体にも同じ要領で刃を通していく。体が軽い。昨日までなら手も足も出なかった相手が順番に瓦礫になっていく。

3体目が崩れ落ちたとき、俺は肩で息をしていた。

【経験値 +480】

【追加クエスト達成】

【経験値 +200】

【日課達成】

【経験値 +400】

【報酬:スキル『鑑定』】

【レベルアップ:Lv.19 → Lv.21】

レベル21。C級に足が掛かった。

「鑑定……?」

【効果:対象の性能を、見ることができる】

説明はそれだけだった。値札みたいなものだろうか。試しに、床で転がっている折れた短剣へ意識を向けてみる。

【鉄の短剣(折損) ランク:E】

【攻撃力:0(元:18)】

「へえ、数字で見えるのか。……18。強いんだか弱いんだか」

比べるものがなかったため何も分からない。

次は手の中の黒い剣だ。

【神喰 ランク:EX(封印中)】

【攻撃力:24】

【封印解除率:1%】

「短剣よりは強いみたいだけど…」

EXランクなんて聞いた事もない。しかし、その下の一行がじわじわと胸に染みてきた。

「1パーセントで、これか」

残りの99は、これから俺が積み上げていく。そう考えると、わくわくした。

「けど…封印ってどうやって解除するんだ?」

それから、ふと思いついて背後の黒い扉にも鑑定を向けてみた。

【黒い扉 所有者:灰原 悠】

【管理者:――】

「所有者は俺になってる。……管理者?」

じゃあ、この扉を作ったのは誰だ。この剣を台座に置いた誰かがどこかにいる。

そのとき、回廊の灯りが奥のほうから1つずつ消え始めた。

ぱち、ぱち、と小さな音を立てて。

闇が少しずつこちらへ近づいてくる。

「……おいおい、次は何だよ」

黒い刃を、握り直した。

最後の灯りが消える直前、回廊の奥に人影が見えた。



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