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戦後の統治と常陸の動乱

今回から新章です。よろしくお願いします。

 下野国 祇園城 小山晴長


 那須高資を討伐したことにより、下野の統一を事実上達成することができた。


 また高資の死により、次郎資胤の那須家当主就任が正式に決定。資胤は小山家への従属を表明し、烏山城近辺の下那須を治めることになった。


 高資が支配していた上那須については山本勘助の白旗城、大俵資清の水口城を中心に統治することに決まった。さらに、いざと言う時に備えて上那須と下那須の中間地点にある山田館に宇都宮親綱を入れることにした。


 それまで親綱が治めていた飛山城は長秀叔父上の跡を継いだ九郎秀行に任せることにした。飛山城は高資滅亡によって最前線ではなくなったのでゆっくりと経験を積めるだろう。


 現地で高資の首を供養し、祇園城に帰還したもののやるべきことは山積みだ。まず高資方だった国人衆の処遇だ。彼らは戦後に小山家に服属したが、那須七騎のように独立心が強いので油断はできない。


 那須七騎のうち、大関は滅亡、福原は資胤の弟に家督が譲られたので問題はない。最後まで高資方だった蘆野と伊王野は当主が戦死しており、後継はまだ幼い。そのため監視の意味を込め、その跡継ぎを人質として祇園城に連れて帰ることにした。


 蘆野彦十郎資泰と伊王野惣兵衛資信。ふたりとも元服こそしているが、まだ十一、二ほどの少年だ。反骨心が強そうな瞳をしている。それでも自らの立場を理解しているのか大人しく従っていた。彼らもかつて人質だった高規のように小山に尽くしてくれると良いんだがな。


 小山家が旧那須領の国人から信用を得るには時間はかかりそうだが、勘助や資清の才覚があれば大きな不安はないだろう。


 国人衆の処遇が済めば、次は人材配置だ。すでに勘助・資清・親綱を配属しているが、彼らの下につく者たちの選定も急がなければならない。最低限の人材は託しているが、特に必要なのは文官だ。急激に領土が広がったために文官の数が足りていないのだ。


 すでに各地で経験を積んだ文官たちを選んでいるが、それでも検地が控えていることもあって十分とは言えない。最悪、足利学校から仕官する者をいきなり現場投入することも視野に入れなければならない。



「これが嬉しい悲鳴ということか。とはいえ、人材がそう簡単に育つわけではないからな。現地の人間も活用するしかないか」



 思案を巡らせていると、今度は常陸から報せが入る。どうやら部垂からの救援依頼らしい。


 佐竹は小山が高資討伐に向かったことから小山の救援がないと踏んで部垂城攻略に動き出したという。その数、およそ一〇〇〇。佐竹としては大規模な編成で今回の戦で決着をつけようとしていることがわかる。


 部垂義元も自身を支持する国人衆をかき集めてなんとか四〇〇まで兵を整えたようだが、劣勢を悟り無理を承知で小山に救援を求めてきた。しかも相当切羽詰まっているのか、援軍の対価として下野と常陸の国境付近にある那珂川沿いの常陸野田の割譲を申し出たのだ。


 常陸に拠点を得られる。しかも悪くない立地に俺は援軍を快諾し、事前に予定したとおりに益子と茂木を向かわせることにした。



「しかし驚きましたな。まさか土地の割譲まで申し上げてくるとは」



 三郎太の言葉に重臣の皆が頷く。



「野田自体は広くはありませぬが、立地としては申し分ない場所でございますな」


「城もあるようですが、どうやら砦程度の規模だとか」


「ならば開発するのみよ」



 家臣らも常陸野田が得られることに上機嫌だ。だが、これで義元が負けてしまっては意味がない。もし義元が討ち取られたら全ては水の泡となって消えてしまうので、是が非でも耐え切ってほしいものだ。



「御屋形様、武蔵の動向についてですが──」



 議論がひと段落ついたと見た段蔵が北条と山内上杉の情勢を伝えてくる。


 氏綱の死を受けて、上杉憲政は扇谷上杉朝定とともに北条領への侵攻をおこなっていた。北条の家督を継いだ氏康にとって最初の試練だったが、北条勢は上杉の侵攻を食い止めることに成功する。いくつかの小競り合いには敗れたようだが、最終的に憲政らはひとつも城を落とせずに撤退していった。


 その結果、あまり評判が高くなかった氏康に打撃を与えられる好機をふいにした憲政の評判は更に下落する。一方で氏康は以前の評判を覆すことに成功したが、依然として氏綱より劣るという評価は変わらなかった。



「ふむ、まだ実績が少ないとはいえ、あの新九郎氏康がここまで過小評価されているとはな」



 まあ、それだけ氏綱が偉大だったということでもあるわけだが。未来を知っている身からすると不思議な気持ちだ。


 その数日後、常陸からの伝令が慌ただしく祇園城に駆け込んできた。



「御屋形様、一大事でございます!」


「なんだ?まさか、負けたか?」



 伝令は大きく首を横に振って否定する。



「戦は部垂殿の勝ちでございます!そして、佐竹右馬権頭殿、討死!!!」


「………………なんだと?」



 佐竹義篤が死んだ、だと?

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― 新着の感想 ―
これ読むまで部垂さんと佐竹義篤が兄弟だって知らんかった 史実では兄より優れた弟は居なかったわけだが こっちの時空じゃどうなることやら
更新ありがとうございます。 あっちゃー義篤が。 義元意外にしぶといな。 初登場時はまさかここまで粘るとは思わなかった。 どうなる佐竹家、危急存亡の秋!
ヘタレの義元がまさかの大勝利。 これで義元が佐竹家継いで小山と同盟となれば良いのですがはてさて。
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