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ローナはお姫様?2

 こ、これは不味いんじゃないか…?

 俺が、安易にしてしまったローナとの指切り。あれは別に、プロポーズとかそういうつもりなんて無かった。でも、どうやらこの世界の人にとっては当然の事らしいし、向こうはそう受け取っている可能性が高い。

 そして、今ローナは、あれほどのイケメンからの誘いを、先約があるからと断ってしまった。

 もしこの先約が、本当に俺の事だったら…?

 まずいまずいマズイ。

 幸い、先程のイケメンさんは、まだローナにアタックを続けると言っていた。ならば、元々あの指切りについては、そういうつもりじゃ無かったと謝る予定だったんだ。迅速に実行して、ローナにはちゃんと、あの人と向き合って貰わないといけない。

 キープしておいて、そんなつもりじゃ無かったから、みたいに女性を捨てるような、最低男みたいな事はしたくない!

「ロ、ロロロローナ!?」

 俺は、つんどめりながら、陰から飛び出してローナのもとへと走った。

「翔様ぁ。どうしたのー?」

「あ、あのー突然ごめん。あの俺たちが出会った時の…」

 自分で言い出しておいてなんだが、一瞬、いや本当に突然すぎないかと自制がかかる。

 ショックを与えてしまうかもしれないし、もう少し落ち着いてから…そう考えてしまう。でも、これは考えて作戦を練ってという事でも無い気もする。

 …いやいや、ここは先延ばししても仕方ない!

「ごめん、ローナ! 俺、実はつい最近まで、指切りの意味を知らなかったんだ!」

「…? うん」

 伝わっていないのか?

 ローナはきょとんとしたままだ。

「あの、だから…俺たちは指切りをしてしまったけど、その時俺は、あれがそういう意味だなんて知らなかったんだ。だから、それを気にする必要は無いというか…ほら、さっきの人にさ」

「…うん。知ってるよぉ? それで?」

「いやそれでって…知ってる…? それ、俺が指切りの意味を知らないって、それを知ってたって事…?」

「そうだよー。ふふ、やぁっと知ったんだねえ」

「え、ええ?」

 な、なんだ?

 ローナが知ってた事については、マリー達が説明してたのかもしれないし、おかしくは無いけど…。それなら、なんでさっきは、あんな断り方をしたんだ?

「え、もしかして、ローナって、本当に彼氏さんが居たりするの?」

「いないよぉ。ひどいなあ翔様はぁ」

「もう本当にわからないんだけど…」

「んー…確かに、あれが間違いだったって知った時は、しょっくだったけどねぇ」

「う…」

「でも、うちにとって、初めてなのに変わりは無いからね」

 そ、それは…。

「すみません」

「それにね」

 ここでローナは、いつものふわりとした笑顔を浮かべた。こんな時だけど、これが本当に魅力的なんだよな。

「うちだって、もう翔様とは、そこそこ一緒に居るんだよー? いつか、本当の指切りをしてくれるかもしれないでしょぉ?」

「…はい?」

 え、どういう意味だこれは。

 指切りって、プロポーズの事でいいんだよな。それを、待ってる的な事だよな。今言ったのって?

 …なんで!?

 確かにもう、出会ってから1年くらいは経つけど…そもそもローナほとんど寝てたじゃん!

 そんなプロポーズ待ちされるような…自分で考えるのすら恥ずかしいけど、惚れられるような要素がどこにあった?

「翔よ。お主は本当に、そういう所じゃぞ」

 頭の上から、そんな声が掛かる。そういえば、メルも居た。すごく恥ずかしい…。

「ねえ翔様ー?」

「な、なにですか?」

「とっても頑張ってるけどねぇ。もっと、いつも皆に言ってるみたいに、翔様も楽しくすればいいと思うよ」

「…」

「だからね、うちはちゃーんとわかってるから、気にしなくて大丈夫だよぉ」

「そ、それなら、良いんだけど…。そういえば、さっきの人って誰だったの?」

「なんかねー、お隣の国の王子様なんだってぇ」

「ええ!?」

 それって、ローナが望んでいた通りの事が、さっき起こっていたんじゃないのか? 王子様が迎えに来たって言う、まさにそのままの出来事だったんじゃ…。

 わ、わからない…。


 ローナは驚愕している俺を置いて、ふわふわとどこかへ行ってしまった。

 またどこかで、昼寝でもするのかもしれない。

 まさに憧れていたお姫様になれるチャンスだったのに、ちゃんとわかっているのだろうか。いや、ローナはあんな風だけど、実はしっかりしてるしな。多分、わかってるんだろう。

 つまり、俺のアクション待ち…? あなたに告白する事はありません、みたいな事を、改めて言わないといけないのか?

 なんだそれは…。

 どうしてこんな、意味の分からない状況になってるのか。

 俺にはもう訳が分からなかった。そこで、ローナが指切りについて誤解はしていないと言う事で、この日はひとまず良しとした。


 この時の俺は、全く意識していなかったが、実はおかしな事があった。

 俺はこんなに美人な女性と、結婚できるかもという状況なんだ。実質、告白を待ってるよと言われたんだ。

 それなのに、俺の脳内では、謝り方ばかりが浮かんでいた。告白して、ローナとお付き合いを始めると言う選択が、全く浮かんでいなかったんだ。

 ローナの事は普通に好きだし、俺にはもったいない女性だと思っているくらいなのに。

 この世界へ来た当初は、美人の奥さんをゲットしたいと、妄想までしていたはずなのに。

 一体…どうしてなのだろう…?

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