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ローナはお姫様?

 今日は、朝から久しぶりに良い事があった。

 いつもの夢に、一つ変化があったのだ。カインの表情が、あの切羽詰まったものから、元に戻っていた。周りからの光も、また繋がっていたんだ。

 俺からすると、特にこれと言って、何かを成した訳では無いので驚いた。おそらく、カインの方で何かがあったのだろう。変化からして、良い何かが…。

 俺はほんの少しだが、安心する事が出来た。これからも、道を間違えないように、お互い頑張っていきたいところだ。


 そんな俺は今、メルを頭に乗せ、城内の廊下を歩いていたのだが、そこで見知った顔が目に入った。ローナだ。

「ロー………?」

 俺は声を掛けようと思ったが、それを一時取りやめる。どうやらローナは、誰かと話しているようだった。相手の方は知らない人だ。やけに高級そうな服を着ている。

 一体何者だろうか?

 疑問に思い、俺は何となく聞き耳を立てた。特に遮るものがある訳でも無く、話の内容が聞こえてくる。

「ああ…ローナさん、あなたは美しい。いや、美しいなどと言う言葉には当てはまらない。この魅力は一体…」

「どうもぉ」

 俺はこの時、何とも言えない表情をしていたと思う。

「どうした翔よ。信じられない物でも見たような顔をして。あやつは確かに整った顔立ちをしておるし、こういう事があってもおかしくなかろう」

「い、いやそうなんだけどね…。ちょっとファンタジーでしか、聞いた事のないセリフを聞いてしまったというかね…」

 この世界も、確かにファンタジーっぽいけど、俺にとっては現実なわけで。人を口説く場面に遭遇して、あんなセリフを耳にする日が来るとは、想像していなかった。

 でも、驚きこそしたが、様にはなってるんだよな。あの人、高貴な感じでイケメンだし…。

 今も、イケメンさんは歯の浮きそうなセリフで、ローナへの愛を囁いている…が。

「うーん…でも、ごめんねぇ。うち、あなたより先に、話をしてる人がいるのでー」

 …は?

 え、嘘!? ローナにそんな人がいたの!!?

「なんとっ! …いや、確かに、あなたほどの女性を、世の男が放っておくはずはない。まだ婚姻は、結ばれていないのですか?」

「うん…? まだ、かなあ?」

 なのになぜ疑問形?

 結局イケメンさんは、それならば、今後もあなたに会いに来ますと、さわやかに去って行った。諦めないって事か。押せ押せなのに、行き過ぎず去る時は去る。なんともかっこいいな…。

 あ、それよりも。

「ね、ねえ。メルは知ってた? ローナにそんな浮いた話があるって」

「は? お主は何を言うて…あー……。そういえば、知らんのだったか…。うむ、我も知らんな」

 なんだその意味深な反応は。

 知らないって何の………いや、ちょっと待て。何か肝心な事を忘れていないか?

 ここのところ予想外の展開になって、慌ただしかったけど、本当なら、何か他にしようとしていた事があったような…。

 俺は、再びローナの方を覗き見た。まだその場にいたローナは、自分の手を見てぼーっと立っている。

 自分の…手を…手?

「お、おお、おおおおい翔、なぜ震えるのじゃ」

 俺は思い出していた。最近の騒動の間にあった会話を。唐突な出会いをしたカインの事を。

 庶民の間で、指切りはプロポーズの代わりに使われたりする。

 ローナの言ってるお相手って、まさかの俺だ!!?

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