マリーと文通を
ひとまず俺は、この城での新しい仕事を続けていた。
そんな中、俺は与えられている自室で一人、手紙を書いていた。忘れる訳も無い、俺が気にしなければならないもう一つの職場…そこで頑張っているマリーへの手紙だ。
今日は、騎竜便がこの王都へと帰ってくる予定の日である。そこで俺は、おじさんにお願いして、手紙を届けて貰う予定だ。
おじさんは、王都側はともかく、村では荷卸しをして、すぐに取って返してしまう。その為、読んだ手紙の返事を、すぐに返す事は出来ないだろう。よって手紙のやり取りが出来るのは、騎竜便が2往復する毎と言う事になる。実にひと月間隔だ。
連絡のやり取りにここまで時間がかかるというのは、はっきり言って不便である事この上ない。でもこの世界で、この距離での連絡手段としては、これでもかなり早い方だ。
魔術によるテレパシーみたいなのは、無いみたいなんだよなこの世界。イエローが乗っていた飛竜も、今は出払ってしまっていて、戻っても安易に使えるものでは無いらしい。
つまり俺を呼ぶのは、貴重な飛龍と言うリソースを使ってでも、必要と思われたと言う事だ。期待に応えられるよう、可能な限りやるしかない。
それで、手紙だ。
長々と書いてもいいが、ひと月ペースと言う事は、このやり取りは予定上、数往復しか行われない。それに、こちらの状況をすべて書いて送っても、次に返事が来る頃には、また書く事が溜まってしまうだろう。
ならば、ここへしばらく留まる事になったという事実を一つ。それから、その間店を任せる事になるから、いくつかの作業を、無理せず誰かに宛がってもらって…。俺のやっていた事を一年も続けていたら、マリーが倒れてしまいそうだからな。
あと、アンシア、ローナ、メルも元気だと言うのも伝えておかないと。こうして書いていくと、結局すごい量になるな。
それから…何かあれば、必ず返事に書いて、こちらに伝える事。これは書いておかないといけない。状況によっては、こちらの作業を切り上げてでも、マリーの所へ戻らないといけない。
こんな事を伝えると、マリーの性格上、返って俺に伝えず、踏ん張ってしまう気もするが…。書かなくても、それは変わらない気がする。それなら、ちゃんと素直に頼ってくれる事を願って、書いておいた方が良い。
ちゃんと任せるべき所は、誰かに任せると決めた。じゃあ、この世界で誰を一番信頼できるかと言えば…やっぱりマリーだと思う。
こういう長期的に帰れなかった場合の事も、最初に王都へ向けて出発する前に、きちんと話をしておいた。マリーにとっては、元々可能性があった状況の一つだ。
だからきっと、彼女なら大丈夫。
マリー達には、あの店の2年目を、無理なく続けてさえくれれば良い。
それさえしてくれれば、その間の記録を元に、問題を洗い出すことが出来る。俺が無意識にカバーしてしまっていた点が、出てくるかもしれない。店舗を増やしていく為に、よりマニュアルを洗練する必要がある。俺の手の届かないところでも、決まった対応が出来るように。
元の世界で覚えたマニュアルが元なのだから、すでにしっかりしたものではある。でもこの世界だからこその、不具合はあるはずだからな。
俺はこの日改めて、しばらく帰らないのだと言う事を実感した。
マリーは、どういう反応をするだろうか。とにかく、元気だとわかる返事が来るといいな。




