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王都でのお仕事3

 俺の仕事は、ロア君たちとの作業だけじゃ無い。

「どうですか? 作れそうですかね」

「あ、ああ…翔様…ローナ様もー。だ、大丈夫ですよ。もう…はい…」

 うーん…大丈夫じゃなさそうだ。


 ここは、国営の魔術研究所。その一室だ。現在ここでは、俺が出した条件である、とあるものを開発して貰っている。

 そのあるものとは、元の世界で言うEANコード…一般的には、バーコードと呼ばれている物だ。実は、本来違う意味なのだが、同じものと思われている…と言うより、そもそもEANコードという言葉を知らない人も多い。JANコードの方なら、知っている人も少しは増えるだろうか。

 これの開発を、俺はここで働く事の対価として要求した。

 なぜなら、このシステムが存在しない事には、チェーンストアの展開は始まらないと言っても、過言ではないからだ。これと、レジシステム、両方が揃ってこそ、すべての支店で共通のサービスを提供する事が出来る。

 簡単に説明すると、EANコードと言うのは、要するに分別コードだ。対象の物品に対して、世界全体で共通のルールを使い、特定の番号を割り振る。地方による特殊な呼び方や、似ている別の商品など、そういう要素に振り回されずに管理が出来るようにしているんだな。

 重要なのは仕組みの方なので、全く同じにする必要は無い。

 見ただけで誰もが分かり、知識を持つ人が見れば、さらに深い情報を読み取れる。そうなっていればいいんだ。

 例えば俺は、元の世界であの数字を見れば、どの国の物か程度ならすぐにわかる。似た数字の並びが多いのは、同じ国や工場を指しているからなんだ。


 俺は、目の前の女性を気遣いつつ、不明点が無いかなど、改めて話をしていく。

「そんな感じで、誰でも、どこでも、共通の何かを作って、それを読み取れば、何を示すかが分かればいいんです。俺の知っている物だと、決まった法則の絵を使うんですけど、そこは魔術的にやりやすいように、どういう形でも平気です」

「は、はい…何とか…やっていきますので…」

 本当に大丈夫だろうか…。

「すごいねぇ。うちなんて、よくある魔術を使うのすら苦手なのにー」

「やっぱり、開発するとなると、難しい物なのかな」

「うちにはー、ちんぷんかんぷんだよぉ」

「な、何とか…その、取っ掛かりさえ掴めれば…一応何年か掛ければ…」

「あーそのー…出来れば2年……いや、本当は1年くらいで作っていただけたらなー…ってああああああ待って下さい! そんな絶望に落ちたような顔をしないで下さい追い詰めようとした訳では!」

 今この瞬間、死ぬんじゃないかって顔してたぞ。つまりはそれほどの難易度と言う事か…。俺だって、どいう仕組みなのかは知っていても、元の世界でその機械を作れと言われたら、絶対無理だしな。似たような状態かもしれない。

 けど、それでもやってもらわないと困る。だからって、安易に人を増やしてとも言い辛い。おそらくこの人も、無理やり捻出してくれた魔術師のはずだしな。

 いくら交換条件だと言っても、こっちを優先して貰ったせいで、栄えさせるはずの国が、別の方向から崩壊したら元も子もない。

 手詰まり感を感じていた時だった。

「じゃあ翔様ぁ。ナンちゃんもここに呼んじゃえばいいよぉ」

「え」

 そんなのんびりとした提案が、ローナから発せられた。

「ど、どなたですかそれは」

「うちの暮らしてた町のね、お友達なんだぁ」

「…そ、それで、えと、その方はこういうの…得意なんでしょうか?」

「うん、多分!」

「ええ…」

「あー…多分得意ではあると思います。俺もいくつか、魔術を使った道具を依頼したことがあって…。でもナンさんって、あの店から出たくないって言ってたけど…」

「大丈夫だよぉ。そんなの気分だからー」

「そ、そうなの…? まあ人手が増やせるなら、こっちも助かるし、女王様に呼んでもいいか聞いてみるけど…」

「いやいやいやいやいやお願いしますよ! そんな当てがあるなら確認とかいいんで呼んでぐだざぁあああ」

「そ、そういう訳にもいかないですよね…?」

 部外者を城内に呼ぶんだし。

 あ…でも、自由すぎて何するかわからないって意味では、失礼ながらローナも…。まあ、害を成すような何かをするとは思わないし、いいか…な? いや、確認はするけどね。

「まあまあ、ナンちゃんを呼ぶなら、うちの名前を出せばいいよー。後はー…」

 こうして、この日の研究所視察は進んでいった。


 後日、この城にやってきたナンさんが、それはもう多大な影響力を発揮するのは、また別のお話。

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